〜魚返一真の自伝的小説〜
それから一ヶ月後、僕たちが二日間にわたって渋谷の街頭でスカウトした女の子たちが誌面を飾った雑誌が発売された。表紙は飛ぶ鳥を落とす人気アイドルユニットのC.C.ガールズ。いつものように、僕はコンビニの店頭で立ち読みすることにした。パラパラとページをめくっていくとメイン特集はあの女の子特集で、その中間に街頭でスカウトした女の子たちのポートレートが載っている。女の子の数が多いせいかとても豪華なページに仕上がっていた。写真のサイズが思ったより大きめだったせいで、それぞれの写真のクオリティがはっきりわかった。ページを開いた時、パッと華やかな印象を与えるためには、一枚一枚の写真の質が大事なことがわかる。ちょっとでも画質の落ちる写真を掲載するとそのページの印象が悪いのには驚いた。どうせちっちゃい写真だから、と手を抜いてはいけないことがわかった。この経験が僕のその後の撮影にとても役にたった。
僕は特集を見ながらちょっと驚いていた。僕が撮った女の子のほとんどが掲載されていたからだ。ライターの清家さんが、こんなにたくさんスカウトしても掲載されるのは半分もないと言っていたのを思い出した。自分の撮った写真が多数掲載されたことは写真の良さが少しは評価されたんだと嬉しかった。もちろん、スカウトした女の子たちのクオリティが編集部の求めるテイストに沿っていたこともあるだろう。しかしちょっと待てよ、僕が選んだ地味系だけど写真ではきらきら光る女の子もみんな掲載されているではないか。僕はそのことがとても嬉しかった。
女の子特集を掲載した号は、雑誌創刊以来最高の売上部数を記録し、すべて店頭から消えたのだった。直後、編集部を訪れると、僕を女の子班に紹介した編集者に声を掛けられた。
「魚返さん、女の子の写真とても良かったですよ」
「はあ、初めてだったもので・・・」
「そんな謙遜して、冗談でしょう。紹介した編集者も喜んでいましたよ」
「あ、そうですか、それは良かったです」
「また、お願いします」
僕はぽっかーんとしてしまった。何であの程度の写真で評価してもらえたんだろうという疑問が湧いて来た。僕は編集部にあったC.C.ガールズ表紙の女の子特集の載った号を1冊もらって帰って、家でじっくり見てみた。確かに、僕が撮った写真は他のカメラマンが撮ったものに比べて違いがある。原因は、僕が女の子を撮るのが初めてで、他のカメラマンと違う撮り方をしていたからだろうと思った。こまめなロケハンが生きていた。それから僕が50mmの標準レンズで撮ったことも大きい。他のカメラマンがみんな85mm程度の中望遠を使っていたが、やはり僕の想定どおり苦戦したのかもしれない。フィルム選びも重要だと思った。僕はエクタクローム(EPP)を使っていた。このフィルムは落ち着きがあって扱いやすいことをプロラボの受付のお姉さんに聞いて知っていたのだ。
それから二ヶ月後、ギャラが僕の口座に降り込まれた。その額を見てびっくりした。二日間の日当にしては多過ぎるのだ。カメラマンのギャラは日当と掲載カットによって支払われるケースがある。今回はどうなんだろうと思っていた矢先、ライターの清家さんから電話が来た。
「清家です。先日はどうも。。」
「やあ、清家さん、ちょっと聞きたいんだけど、3ヶ月ぐらい前に渋谷で女の子をスカウトして写真撮ったよね」
「はいっ、あの時はおつかれさまでした」
「あの時のギャラだけど、どういう計算で支払われているの?」
「あれはですね、出来高払いですぅ。魚返さんはたぶんギャラいっぱいだけどぉ、少ないカメラマンさんもいます。日当にもならない人もいるし、中にはギャラなしってカメラマンも何人かいたんですよ」
「あっ、そうなんだ。ありがとう」
「で、用件ですね・・・」
「・・・」
僕はびっくりした。僕がもらった額は◯十万円。さらにボーナスが十万円。驚きを通り越してしまった。売れている雑誌というのはこんなにギャラが高いのか、と思いきや、ボーナスは良しとしても、そもそもカメラマンに支払われる総額が決まっていて、それを多くのカメラマンが奪い合ったのか、、甘くないなと思った。その逆もあるだろうと想像したからだ。つまり、次ぎは僕が辛酸をなめるようなギャラになるかもしれない。それ以後そういう仕事をしたことがないのは幸いだったかもしれない。あの二日間の僕の撮影には多くの幸運があったと思う。僕は所詮ド素人のカメラマン。もう一回やったら、結果は逆かもしれないと素直に思い、それからの撮影にはそれまで以上に熱意をもってやれたことは、この経験があるからだ。
この二日間の撮影は、僕の写真家としての活動に大きな道しるべを与えてくれたし、振り返れば、女の子や人物撮影のスペシャリストとしての第一歩だった。何はともあれ神様に感謝したい。
(つづく)
□書き方として前後することもあります。今後も僕の経験を書いていきます。皆さんの参考になると嬉しいです。拍手をお願いします。
それから一ヶ月後、僕たちが二日間にわたって渋谷の街頭でスカウトした女の子たちが誌面を飾った雑誌が発売された。表紙は飛ぶ鳥を落とす人気アイドルユニットのC.C.ガールズ。いつものように、僕はコンビニの店頭で立ち読みすることにした。パラパラとページをめくっていくとメイン特集はあの女の子特集で、その中間に街頭でスカウトした女の子たちのポートレートが載っている。女の子の数が多いせいかとても豪華なページに仕上がっていた。写真のサイズが思ったより大きめだったせいで、それぞれの写真のクオリティがはっきりわかった。ページを開いた時、パッと華やかな印象を与えるためには、一枚一枚の写真の質が大事なことがわかる。ちょっとでも画質の落ちる写真を掲載するとそのページの印象が悪いのには驚いた。どうせちっちゃい写真だから、と手を抜いてはいけないことがわかった。この経験が僕のその後の撮影にとても役にたった。
僕は特集を見ながらちょっと驚いていた。僕が撮った女の子のほとんどが掲載されていたからだ。ライターの清家さんが、こんなにたくさんスカウトしても掲載されるのは半分もないと言っていたのを思い出した。自分の撮った写真が多数掲載されたことは写真の良さが少しは評価されたんだと嬉しかった。もちろん、スカウトした女の子たちのクオリティが編集部の求めるテイストに沿っていたこともあるだろう。しかしちょっと待てよ、僕が選んだ地味系だけど写真ではきらきら光る女の子もみんな掲載されているではないか。僕はそのことがとても嬉しかった。
女の子特集を掲載した号は、雑誌創刊以来最高の売上部数を記録し、すべて店頭から消えたのだった。直後、編集部を訪れると、僕を女の子班に紹介した編集者に声を掛けられた。
「魚返さん、女の子の写真とても良かったですよ」
「はあ、初めてだったもので・・・」
「そんな謙遜して、冗談でしょう。紹介した編集者も喜んでいましたよ」
「あ、そうですか、それは良かったです」
「また、お願いします」
僕はぽっかーんとしてしまった。何であの程度の写真で評価してもらえたんだろうという疑問が湧いて来た。僕は編集部にあったC.C.ガールズ表紙の女の子特集の載った号を1冊もらって帰って、家でじっくり見てみた。確かに、僕が撮った写真は他のカメラマンが撮ったものに比べて違いがある。原因は、僕が女の子を撮るのが初めてで、他のカメラマンと違う撮り方をしていたからだろうと思った。こまめなロケハンが生きていた。それから僕が50mmの標準レンズで撮ったことも大きい。他のカメラマンがみんな85mm程度の中望遠を使っていたが、やはり僕の想定どおり苦戦したのかもしれない。フィルム選びも重要だと思った。僕はエクタクローム(EPP)を使っていた。このフィルムは落ち着きがあって扱いやすいことをプロラボの受付のお姉さんに聞いて知っていたのだ。
それから二ヶ月後、ギャラが僕の口座に降り込まれた。その額を見てびっくりした。二日間の日当にしては多過ぎるのだ。カメラマンのギャラは日当と掲載カットによって支払われるケースがある。今回はどうなんだろうと思っていた矢先、ライターの清家さんから電話が来た。
「清家です。先日はどうも。。」
「やあ、清家さん、ちょっと聞きたいんだけど、3ヶ月ぐらい前に渋谷で女の子をスカウトして写真撮ったよね」
「はいっ、あの時はおつかれさまでした」
「あの時のギャラだけど、どういう計算で支払われているの?」
「あれはですね、出来高払いですぅ。魚返さんはたぶんギャラいっぱいだけどぉ、少ないカメラマンさんもいます。日当にもならない人もいるし、中にはギャラなしってカメラマンも何人かいたんですよ」
「あっ、そうなんだ。ありがとう」
「で、用件ですね・・・」
「・・・」
僕はびっくりした。僕がもらった額は◯十万円。さらにボーナスが十万円。驚きを通り越してしまった。売れている雑誌というのはこんなにギャラが高いのか、と思いきや、ボーナスは良しとしても、そもそもカメラマンに支払われる総額が決まっていて、それを多くのカメラマンが奪い合ったのか、、甘くないなと思った。その逆もあるだろうと想像したからだ。つまり、次ぎは僕が辛酸をなめるようなギャラになるかもしれない。それ以後そういう仕事をしたことがないのは幸いだったかもしれない。あの二日間の僕の撮影には多くの幸運があったと思う。僕は所詮ド素人のカメラマン。もう一回やったら、結果は逆かもしれないと素直に思い、それからの撮影にはそれまで以上に熱意をもってやれたことは、この経験があるからだ。
この二日間の撮影は、僕の写真家としての活動に大きな道しるべを与えてくれたし、振り返れば、女の子や人物撮影のスペシャリストとしての第一歩だった。何はともあれ神様に感謝したい。
(つづく)
□書き方として前後することもあります。今後も僕の経験を書いていきます。皆さんの参考になると嬉しいです。拍手をお願いします。
〜魚返一真の自伝的小説〜
カメラ屋へ走った。買いたいものはわかっているが商品名がわからなかった。僕は店に入るなり店員に尋ねた。
「すいません。あのぉ〜、白くて折りたたみ式で、光を反射させる・・・」
「ああ、レフ板ですね」
「あ、そのレフ版をください」
レフ板とは、光を反射させるもので、特に人物撮影の場合効果が顕著で顔などに当てると美しい。
僕はそれまでレフ板を使ったことがなかった。それも当然のこと、僕は女の子を撮ったことがないのだから。80センチ×100センチの大きさで、周囲の枠が金属の棒で出来ている折りたたみレフ版セットを買って、公園通りで待っているライターの清家さんとバイトの中嶋君のところへ走って戻った。
ビニールに入った新品のレフを出して歩道で組み立てると、表は銀、裏は白だった。どう使うのかさっぱりわからない。他のカメラマンはどうしているのか見たかったがみんなあちこち散ってしまって周囲にはいない。まあ、光の問題だからスカウトが成功して、いざ撮影というときに女の子の顔に光をあてて判断しようと決めた。
それからレンズに不安があった。集まったカメラマンはほとんど85mmなど中望遠をカメラに付けていたのだが、僕はその日50mm一本で行こうと思っていたから、他のレンズを持っていなかった。僕は、まあ何とかなるだろう、と思ったし、そもそも僕は応援だから期待されていないからダメでも問題ないだろうとも考えて、気楽にいくことにした。
「清家さん、いったいどんな女の子をスカウトするの?」
「うちの雑誌の読者が好む女の子です」
「可愛ければいいんじゃないの?」
「もちろん、そうですけどぉ、それほど可愛くなくても、うちの読者の好みに合ってれば、、、ちなみに編集から、フレアミニスカートの女の子は多めにチェックして欲しいと言われました」
「でも、さっき僕が撮るように指示されたのは、バストショットよりちょい広めってことだから、スカートは写らないけどね」
「そうですね、、でも、フレアミニの子は読者の好みもばっちりなんで、、、」
僕はしゃくぜんとしなかったけど、清家さんがきっぱりと答えたので、きっと何かあるんだろうと思って、しばらく成りゆきを見守った。「あっ、あの子、ほらフレアミニだ」と言うと清家さんは女の子にアプローチした。話がまとまったらしく、清家さんが女の子を連れて僕たちの方へ来た。
女の子をあらかじめ決めておいた場所に立たせた。逆光で髪が金色のシルエットになってきれいだった。中嶋君に正面からレフを当てさせた。右を向かせたり左を向かせたりさせながらシャッターを切った。女の子は緊張していて、笑顔は引きつりっぱなしだった。僕は「無理して笑わなくてもいいよ」と女の子に言った。わざとらしい表情は極力捨てて、自然な表情を撮ることにした。たまにギャグを入れて笑ってもらったりもしたが、基本は素顔を撮ることに徹した。こうして最初の女の子はすんなり撮れたのだが、その後はそううまくは行かなかった。
休日の公園通り、、可愛い子なんていくらでもいそうなものだが、じっくり見るとそれほどいない。みんな上手に化けているのだ。やっと見つけても、スカウトできる確率は非常に低い。僕はスカウトが難しいことがとても意外だった。僕たちは昼食抜きで、午後4時ぐらいまでスカウトをし続け、やっと10人ほど撮影にこぎつけたのだった。
二日目。僕は昨日と同じ場所では撮りたくないなと思ったので、ロケハンをしてちょとした場所をいくつか探しておいた。さらに,同じ場所では二人以上撮らないと決めた。それから昨日と同じ50mmで勝負することにした。街頭での撮影では、モデルとの距離を取りにくいのと、雑踏ではちょっとでも離れるとモデルとコミニュケーションも取りにくいので、中望遠より標準の方が良いなと、前日の撮影でちょっと学んでいた。しかも、今日は曇りで午後からは雨の予報たったから、ビルの谷間はかなり暗くなる。したがって露出の心配もあったから、50mmで解放での撮影を心にとめておけばちょっと安心でもあった。
一日目よりスカウトは順調だったので、時々僕も口をはさんだ。
「清家さん、あの子、だめなの?」
「魚返さん、地味すぎますよ」
「そうかな、あの子、きっと写真ではキラキラするよ」
「じゃあ、ちょっとやってみますか」
清家さんはしぶしぶ声をかけた。女の子は案外すんなりと撮影を了承してくれた。カメラを向けると、何だか恥ずかしそうに微笑んだ。僕はその瞬間連写した。
「魚返さん、あの子、なかなか良かったですねぇ。ウチの雑誌っぽくはないけど、可愛かったですぅ」
「そうでしょう。ああいう子って街に埋没しているんだよ」
「なるほど、じゃあ、またああいう地味で何とかなりそうな女の子がいたら教えてください。行きますから!」
結局、二日で20人撮った。その中に僕が薦めた地味系の女の子が五六人いた。雨が降り出したし、そろそろやめようかと相談していると、他のチームの女の子のライターが僕たちの様子をうかがいにやってきた。
「清家さん、どう?女の子捕まったの」
「まあまあ、かな」
「こっちは二日で10人だけど、清家さんとこは何人?」
「二十人だよ」
「えっ、そんなに撮れたの?」
「二十人でも少ないと思っていたけど、、これって多いの?」
「多いよ、他のチームにも聞いたけど、最高で15人で、ひどいところは二日で五人とかだよ」
僕と清家さんと中嶋君の応援チームは、案外好成績を上げていたようだが、はたして本当にそうだったのだろうか。つまり、雑誌に掲載される女の子の数が問題なのだった。
(つづく)
□まだまだつづきます。どんどん佳境に入ってい行きます。拍手をお願いします!
カメラ屋へ走った。買いたいものはわかっているが商品名がわからなかった。僕は店に入るなり店員に尋ねた。
「すいません。あのぉ〜、白くて折りたたみ式で、光を反射させる・・・」
「ああ、レフ板ですね」
「あ、そのレフ版をください」
レフ板とは、光を反射させるもので、特に人物撮影の場合効果が顕著で顔などに当てると美しい。
僕はそれまでレフ板を使ったことがなかった。それも当然のこと、僕は女の子を撮ったことがないのだから。80センチ×100センチの大きさで、周囲の枠が金属の棒で出来ている折りたたみレフ版セットを買って、公園通りで待っているライターの清家さんとバイトの中嶋君のところへ走って戻った。
ビニールに入った新品のレフを出して歩道で組み立てると、表は銀、裏は白だった。どう使うのかさっぱりわからない。他のカメラマンはどうしているのか見たかったがみんなあちこち散ってしまって周囲にはいない。まあ、光の問題だからスカウトが成功して、いざ撮影というときに女の子の顔に光をあてて判断しようと決めた。
それからレンズに不安があった。集まったカメラマンはほとんど85mmなど中望遠をカメラに付けていたのだが、僕はその日50mm一本で行こうと思っていたから、他のレンズを持っていなかった。僕は、まあ何とかなるだろう、と思ったし、そもそも僕は応援だから期待されていないからダメでも問題ないだろうとも考えて、気楽にいくことにした。
「清家さん、いったいどんな女の子をスカウトするの?」
「うちの雑誌の読者が好む女の子です」
「可愛ければいいんじゃないの?」
「もちろん、そうですけどぉ、それほど可愛くなくても、うちの読者の好みに合ってれば、、、ちなみに編集から、フレアミニスカートの女の子は多めにチェックして欲しいと言われました」
「でも、さっき僕が撮るように指示されたのは、バストショットよりちょい広めってことだから、スカートは写らないけどね」
「そうですね、、でも、フレアミニの子は読者の好みもばっちりなんで、、、」
僕はしゃくぜんとしなかったけど、清家さんがきっぱりと答えたので、きっと何かあるんだろうと思って、しばらく成りゆきを見守った。「あっ、あの子、ほらフレアミニだ」と言うと清家さんは女の子にアプローチした。話がまとまったらしく、清家さんが女の子を連れて僕たちの方へ来た。
女の子をあらかじめ決めておいた場所に立たせた。逆光で髪が金色のシルエットになってきれいだった。中嶋君に正面からレフを当てさせた。右を向かせたり左を向かせたりさせながらシャッターを切った。女の子は緊張していて、笑顔は引きつりっぱなしだった。僕は「無理して笑わなくてもいいよ」と女の子に言った。わざとらしい表情は極力捨てて、自然な表情を撮ることにした。たまにギャグを入れて笑ってもらったりもしたが、基本は素顔を撮ることに徹した。こうして最初の女の子はすんなり撮れたのだが、その後はそううまくは行かなかった。
休日の公園通り、、可愛い子なんていくらでもいそうなものだが、じっくり見るとそれほどいない。みんな上手に化けているのだ。やっと見つけても、スカウトできる確率は非常に低い。僕はスカウトが難しいことがとても意外だった。僕たちは昼食抜きで、午後4時ぐらいまでスカウトをし続け、やっと10人ほど撮影にこぎつけたのだった。
二日目。僕は昨日と同じ場所では撮りたくないなと思ったので、ロケハンをしてちょとした場所をいくつか探しておいた。さらに,同じ場所では二人以上撮らないと決めた。それから昨日と同じ50mmで勝負することにした。街頭での撮影では、モデルとの距離を取りにくいのと、雑踏ではちょっとでも離れるとモデルとコミニュケーションも取りにくいので、中望遠より標準の方が良いなと、前日の撮影でちょっと学んでいた。しかも、今日は曇りで午後からは雨の予報たったから、ビルの谷間はかなり暗くなる。したがって露出の心配もあったから、50mmで解放での撮影を心にとめておけばちょっと安心でもあった。
一日目よりスカウトは順調だったので、時々僕も口をはさんだ。
「清家さん、あの子、だめなの?」
「魚返さん、地味すぎますよ」
「そうかな、あの子、きっと写真ではキラキラするよ」
「じゃあ、ちょっとやってみますか」
清家さんはしぶしぶ声をかけた。女の子は案外すんなりと撮影を了承してくれた。カメラを向けると、何だか恥ずかしそうに微笑んだ。僕はその瞬間連写した。
「魚返さん、あの子、なかなか良かったですねぇ。ウチの雑誌っぽくはないけど、可愛かったですぅ」
「そうでしょう。ああいう子って街に埋没しているんだよ」
「なるほど、じゃあ、またああいう地味で何とかなりそうな女の子がいたら教えてください。行きますから!」
結局、二日で20人撮った。その中に僕が薦めた地味系の女の子が五六人いた。雨が降り出したし、そろそろやめようかと相談していると、他のチームの女の子のライターが僕たちの様子をうかがいにやってきた。
「清家さん、どう?女の子捕まったの」
「まあまあ、かな」
「こっちは二日で10人だけど、清家さんとこは何人?」
「二十人だよ」
「えっ、そんなに撮れたの?」
「二十人でも少ないと思っていたけど、、これって多いの?」
「多いよ、他のチームにも聞いたけど、最高で15人で、ひどいところは二日で五人とかだよ」
僕と清家さんと中嶋君の応援チームは、案外好成績を上げていたようだが、はたして本当にそうだったのだろうか。つまり、雑誌に掲載される女の子の数が問題なのだった。
(つづく)
□まだまだつづきます。どんどん佳境に入ってい行きます。拍手をお願いします!
〜魚返一真の自伝的小説〜
ホットドッグプレスの営業は無事に成功(?)。なぜなら間もなく仕事の依頼があったからだ。それで、いったいどんな営業をしたのかというと、やはりどん底雑誌時代と同じだった。だから、結局は良い仕事などあるはずはない。大手出版社での初めての仕事にちょっと浮かれたのもつかの間、やはり仕事は店取材ばかり、つまり店外観、店内、品物(料理)だった。ただ、ちょっとだけ違うのは、ホットッグプレスという雑誌の中には、インタビューやファッションなど魅力的なページが多くあたことだ。いずれそんな仕事をするためにも、ここは下積みと割り切ってがんばることにした。
取材先は若者が集まる渋谷と原宿が中心。この手の若者雑誌は、若いライター(writer)たちがたくさん働いていて、僕に仕事の電話をくれるのもほとんどが彼らだ。僕は清家、片岡、栗山という名前の3人の女の子のライターと交互に仕事をした。彼女たちは大学生で、僕との年齢差は15歳ほどもあり話が合うはずもない。めんどうだから僕は実年齢を適当に偽って仕事をしていた。遊び盛りのお嬢さんたちと機材をかついで原宿を歩き回るのはつらかった。しかし、業界を全く知らない僕にとってこの頃の経験はとても貴重だった。半ば強引に若い女の子たちと行動することで、少し気持が若返った気がしたのだった。いずれ書くけど、カメラマンになる前の僕の仕事はファミレスの店員だった。バイトではなく正社員。僕は副店長の辞令が降りた時、退社したのだった。話相手が、ファミレスのパートの主婦から若い大学生になったわけだからその差は強烈だ。つまり、若いライターとの取材はリハビリのようなものだった。
それから数週間が経ったころ、僕を面接した編集者とは別の編集者から仕事の依頼がきた。と言っても、ライターの◯◯が電話すると思いますから、よろしく、、という簡単なもので、間もなく男のライターから電話が来て、清家という女性のライターを紹介された。そう、清家さんはいっしょに原宿のショップ周りをしたライターだった。なんだ、、またショップかあ、、と落胆した。
清家さんから電話が来た。
「魚返さん、またまたご一緒、よろしくお願いしま〜すぅ」
「了解しました。また裏原宿?」
「いえいえ、今度はちょっと違うんですよぉ。実は私も応援にかり出された口なんですよぉ」
「応援ねえ、、つまり僕とセットで応援に行くんだね。それで何を撮るの?」
「女の子です。今度の連休、二日間渋谷の街頭でスカウトします。女の子なら何でも良いってわけではなくて、ホットドックの読者が好むカワイイ女の子をスカウトして、撮影するんですぅ」
「なるほど・・・」
当時、ポパイもホットドッグもこの街角スカウトにかなり力を入れていたらしく、カワイイ女の子がたくさん載っていれば売れ行きも良いという安易さで、両誌は街頭スカウトにしのぎを削っていた。僕はカワイイ子さえ載っていれば売れるという単純さがとてもが新鮮だった。
撮影当日の朝、渋谷の喫茶店に集合すると、何とカメラマンがいっぱいいた。この喫茶店はB班の集合場所で、A班は別の場所に集合しているという。A班のカメラマンだけで10人近くいた。集まったカメラマンはまちまちで、みんなそれぞれ面識がないから、ただ黙っていた。中には、かなりの初心者もいた。彼はカメラバッグひとつでやって来ている。あれっ?オレって、もしかして、その初心者よりさらに下っ端かもしれないと思った。この時ばかりは、オレは結構年齢がいってるだぜ、みたいな顔をした。慣れたヤツもいる。専属のアシスタントを連れていて何やら偉そう。ヤツはカメラの手入れなどアシスタントに指示して自分はタバコをぷかぷかさえせていた。僕は何が何だかわからず、ボーっとしてB班を仕切っている男のライターの指示に待った。
僕たちは1チーム3人で動くことになった。3人はカメラマンとライターとアシスタント。僕にも大学生のバイトの中嶋君がアシスタントとして着いた。だけど、中嶋君、、いったい僕にくっついて何をするの?僕はしばらくのあいだ考えた。あっ!そうだったか、僕はとても大事なものを忘れていたのだ。だって、僕はこの時まで一度も女の子のポートレートを撮ったことがないんだからね。
僕はライターの清家さんに「ちょっとフイルムを買って来ます!」と言ってカメラ屋まで走ったのだった。
□決意後3ヶ月半経過
(つづく)
ホットドッグプレスの営業は無事に成功(?)。なぜなら間もなく仕事の依頼があったからだ。それで、いったいどんな営業をしたのかというと、やはりどん底雑誌時代と同じだった。だから、結局は良い仕事などあるはずはない。大手出版社での初めての仕事にちょっと浮かれたのもつかの間、やはり仕事は店取材ばかり、つまり店外観、店内、品物(料理)だった。ただ、ちょっとだけ違うのは、ホットッグプレスという雑誌の中には、インタビューやファッションなど魅力的なページが多くあたことだ。いずれそんな仕事をするためにも、ここは下積みと割り切ってがんばることにした。
取材先は若者が集まる渋谷と原宿が中心。この手の若者雑誌は、若いライター(writer)たちがたくさん働いていて、僕に仕事の電話をくれるのもほとんどが彼らだ。僕は清家、片岡、栗山という名前の3人の女の子のライターと交互に仕事をした。彼女たちは大学生で、僕との年齢差は15歳ほどもあり話が合うはずもない。めんどうだから僕は実年齢を適当に偽って仕事をしていた。遊び盛りのお嬢さんたちと機材をかついで原宿を歩き回るのはつらかった。しかし、業界を全く知らない僕にとってこの頃の経験はとても貴重だった。半ば強引に若い女の子たちと行動することで、少し気持が若返った気がしたのだった。いずれ書くけど、カメラマンになる前の僕の仕事はファミレスの店員だった。バイトではなく正社員。僕は副店長の辞令が降りた時、退社したのだった。話相手が、ファミレスのパートの主婦から若い大学生になったわけだからその差は強烈だ。つまり、若いライターとの取材はリハビリのようなものだった。
それから数週間が経ったころ、僕を面接した編集者とは別の編集者から仕事の依頼がきた。と言っても、ライターの◯◯が電話すると思いますから、よろしく、、という簡単なもので、間もなく男のライターから電話が来て、清家という女性のライターを紹介された。そう、清家さんはいっしょに原宿のショップ周りをしたライターだった。なんだ、、またショップかあ、、と落胆した。
清家さんから電話が来た。
「魚返さん、またまたご一緒、よろしくお願いしま〜すぅ」
「了解しました。また裏原宿?」
「いえいえ、今度はちょっと違うんですよぉ。実は私も応援にかり出された口なんですよぉ」
「応援ねえ、、つまり僕とセットで応援に行くんだね。それで何を撮るの?」
「女の子です。今度の連休、二日間渋谷の街頭でスカウトします。女の子なら何でも良いってわけではなくて、ホットドックの読者が好むカワイイ女の子をスカウトして、撮影するんですぅ」
「なるほど・・・」
当時、ポパイもホットドッグもこの街角スカウトにかなり力を入れていたらしく、カワイイ女の子がたくさん載っていれば売れ行きも良いという安易さで、両誌は街頭スカウトにしのぎを削っていた。僕はカワイイ子さえ載っていれば売れるという単純さがとてもが新鮮だった。
撮影当日の朝、渋谷の喫茶店に集合すると、何とカメラマンがいっぱいいた。この喫茶店はB班の集合場所で、A班は別の場所に集合しているという。A班のカメラマンだけで10人近くいた。集まったカメラマンはまちまちで、みんなそれぞれ面識がないから、ただ黙っていた。中には、かなりの初心者もいた。彼はカメラバッグひとつでやって来ている。あれっ?オレって、もしかして、その初心者よりさらに下っ端かもしれないと思った。この時ばかりは、オレは結構年齢がいってるだぜ、みたいな顔をした。慣れたヤツもいる。専属のアシスタントを連れていて何やら偉そう。ヤツはカメラの手入れなどアシスタントに指示して自分はタバコをぷかぷかさえせていた。僕は何が何だかわからず、ボーっとしてB班を仕切っている男のライターの指示に待った。
僕たちは1チーム3人で動くことになった。3人はカメラマンとライターとアシスタント。僕にも大学生のバイトの中嶋君がアシスタントとして着いた。だけど、中嶋君、、いったい僕にくっついて何をするの?僕はしばらくのあいだ考えた。あっ!そうだったか、僕はとても大事なものを忘れていたのだ。だって、僕はこの時まで一度も女の子のポートレートを撮ったことがないんだからね。
僕はライターの清家さんに「ちょっとフイルムを買って来ます!」と言ってカメラ屋まで走ったのだった。
□決意後3ヶ月半経過
(つづく)
〜魚返一真の自伝的小説〜
「あの、何度も申し訳ないんですが、ポパイ編集部の金本さんをお願いします。2時にお会いする予定になっているんです」
「お客様、大変申し訳ございませんが、当社にはそのような雑誌はございません」
「はあ?でもね、実際に電話で金本さんとお話して・・・」
「先ほどから何度も申し上げておりますが、当社にはそのような雑誌はございません」
すでに五分も、大理石造りの大手出版社の入口で警備員に見守られながら受付嬢とこんな問答を繰り返していた。僕は少し腹を立てていたが、大事な営業だからここは心を鎮めて粘った。
「あのですね、僕はポパイ編集部へ行きたいんです」
「はい、ですから、その、、当社にはポパイという雑誌はございません」
僕はあきらめて大理石造りの威圧的なビルを出て、公衆電話からポパイ編集部へ電話した。(実際は携帯電話だったかも)
「はい。ホットドッグプレス編集部で〜す」とぶっきらぼうに若い男が電話に出た。
「あ、ホットドッグですか、あれれ、、電話番号を間違えました」と言って僕は電話を切った。僕はしばらくその場で考え込んだ。何でホットドッグなんだ?もしかして、僕が電話番号を間違えたか、、、。そんなはずはない。しかし、ポパイ編集部へ電話したつもりがホットドッグ編集部へ繋がった、、頭がこんがらがった。
ちょっと整理しよう。まず、ポパイはマガジンハウス、ホットドッグプレスは講談社が出版しているというのは業界の常識に等しいらしいことを前置きする。もちろん僕はそんなことを全く知らない。まず僕は、新たな営業先を探すために、立ち読みでいろいろな雑誌の電話番号を控えた。そのリストにポパイもホットドッグプレスも含まれている。そもそも、僕はポパイとホットドックプレスを編集している出版社がどこなのかを知らないばかりか、二つの雑誌の違いさえわからない。ホットドッグプレス編集部にアポを取りながら、僕はポパイ編集部へ電話したと勘違いしたことは十分考えられるのだが・・・。たぶんそういうことだろう。
しかし、受付の女性も、ポパイはマガジンハウスさんですよ、、ぐらい言ってくれれば良かったのにと思う。しかし、すぐにポパイ編集部へ電話して「金本さんをお願いします」と言ったとしたら・・・。たぶん「そのような者は当編集部にはおりません」と言われるだろう。どっちにしてもダメだ。
業界は複雑だ。競合雑誌が多過ぎる。ポパイにホットドッグプレスなら良い方だ。ananにnon-no、JJにcancamにvivi、などその他にもたくさんある。むしろ競合誌のないものなどないと言って良い。僕のような初心者が間違っても仕方がないのだが、そんな悠長な事を言っている余裕はない。一刻も早くどん底雑誌を卒業しなくてはならないからだ。僕は出版社ごとの雑誌リストを作った。
えっと〜、、マガジンハウスは、ポパイにオリーブ、anan、ガリバー、ブルータス、hanako、自由時間、などなど。講談社は・・・。小学館は・・・。集英社は・・・。光文社は・・・。調べるうちに、講談社と光文社、小学館と集英社はそれぞれ系列で、これにマガジンハウスを加えた三大グループが雑誌業界の大手らしいとわかった。もちろん、他にも婦人画報社、主婦の友社、などなどあるのだが。
プロカメラマンは写真を撮ることの他に知っておく必要があることだらけ。僕は頭がおかしくなりそうだった。
(つづく)
□1991年9月。決意後3ヶ月経過
□大手出版社への営業が始まりましたが、いきなりこんな失敗を、、。でも僕はめげませんでした。その後の奮闘をお読みになりたい方は拍手をお願いします!
「あの、何度も申し訳ないんですが、ポパイ編集部の金本さんをお願いします。2時にお会いする予定になっているんです」
「お客様、大変申し訳ございませんが、当社にはそのような雑誌はございません」
「はあ?でもね、実際に電話で金本さんとお話して・・・」
「先ほどから何度も申し上げておりますが、当社にはそのような雑誌はございません」
すでに五分も、大理石造りの大手出版社の入口で警備員に見守られながら受付嬢とこんな問答を繰り返していた。僕は少し腹を立てていたが、大事な営業だからここは心を鎮めて粘った。
「あのですね、僕はポパイ編集部へ行きたいんです」
「はい、ですから、その、、当社にはポパイという雑誌はございません」
僕はあきらめて大理石造りの威圧的なビルを出て、公衆電話からポパイ編集部へ電話した。(実際は携帯電話だったかも)
「はい。ホットドッグプレス編集部で〜す」とぶっきらぼうに若い男が電話に出た。
「あ、ホットドッグですか、あれれ、、電話番号を間違えました」と言って僕は電話を切った。僕はしばらくその場で考え込んだ。何でホットドッグなんだ?もしかして、僕が電話番号を間違えたか、、、。そんなはずはない。しかし、ポパイ編集部へ電話したつもりがホットドッグ編集部へ繋がった、、頭がこんがらがった。
ちょっと整理しよう。まず、ポパイはマガジンハウス、ホットドッグプレスは講談社が出版しているというのは業界の常識に等しいらしいことを前置きする。もちろん僕はそんなことを全く知らない。まず僕は、新たな営業先を探すために、立ち読みでいろいろな雑誌の電話番号を控えた。そのリストにポパイもホットドッグプレスも含まれている。そもそも、僕はポパイとホットドックプレスを編集している出版社がどこなのかを知らないばかりか、二つの雑誌の違いさえわからない。ホットドッグプレス編集部にアポを取りながら、僕はポパイ編集部へ電話したと勘違いしたことは十分考えられるのだが・・・。たぶんそういうことだろう。
しかし、受付の女性も、ポパイはマガジンハウスさんですよ、、ぐらい言ってくれれば良かったのにと思う。しかし、すぐにポパイ編集部へ電話して「金本さんをお願いします」と言ったとしたら・・・。たぶん「そのような者は当編集部にはおりません」と言われるだろう。どっちにしてもダメだ。
業界は複雑だ。競合雑誌が多過ぎる。ポパイにホットドッグプレスなら良い方だ。ananにnon-no、JJにcancamにvivi、などその他にもたくさんある。むしろ競合誌のないものなどないと言って良い。僕のような初心者が間違っても仕方がないのだが、そんな悠長な事を言っている余裕はない。一刻も早くどん底雑誌を卒業しなくてはならないからだ。僕は出版社ごとの雑誌リストを作った。
えっと〜、、マガジンハウスは、ポパイにオリーブ、anan、ガリバー、ブルータス、hanako、自由時間、などなど。講談社は・・・。小学館は・・・。集英社は・・・。光文社は・・・。調べるうちに、講談社と光文社、小学館と集英社はそれぞれ系列で、これにマガジンハウスを加えた三大グループが雑誌業界の大手らしいとわかった。もちろん、他にも婦人画報社、主婦の友社、などなどあるのだが。
プロカメラマンは写真を撮ることの他に知っておく必要があることだらけ。僕は頭がおかしくなりそうだった。
(つづく)
□1991年9月。決意後3ヶ月経過
□大手出版社への営業が始まりましたが、いきなりこんな失敗を、、。でも僕はめげませんでした。その後の奮闘をお読みになりたい方は拍手をお願いします!
東京は一日雨。カーペンターズの「雨の日と月曜日は・Rainy Days And Mondays」を聞く。だれもが尖った自分を少しだけ丸くすることができる。雨は人に安らぎをもたらしてくれる。ちょっと振り返って自分の失敗などを思い出してひとり笑いする。今年の春のことだから、懐古編にはふさわしくないけれど、もしかしたらみんなを微笑ませるかもしれないこのエピソードを紹介しよう。
春の吉祥寺は、なんとなくゆるい午後を楽しんでいる暇な女子高生と女子大生と主婦で街はいっぱいで、特に駅ビルのロンロンはこれ以上人が入る余地がないほどだった。男性?あなたはここへ何しに来たのですか、と言わんばかり。そんな駅ビルの洒落たエリアに僕はいた。なぜ?それはある女の子に惹かれてついて来たから。ほとんどストーカー。その子は22才ぐらい、丸顔でショートカットで髪はとても良く手入れされていた。友達と二人連れ。友達の方はロングでキュートでスタイルもいい今風の女の子、18才ぐらいかな。連れの子の方が可愛かったけど、僕の作品にはショートの子が合っている。そもそも、この子はどこかで見た事のある顔をしている。僕の好みだからそう思うに違いない。以前にもそんなことがあったしなあ、などと考えながら彼女を追う。二人はロンロンの中のショップを数件覗いたあと、外へ。
「あの、すいません」
「はい、何か?」
と振り返った彼女の顔を60センチの距離で見た時、僕は凍った。あちゃ、どうしよう。どぎまぎする僕に彼女は、、
「あのォ、、何か?」と繰り返す。
僕が凍った理由を話そう。その日の朝か、その前の日の朝か、僕は彼女に会っていた。ある音楽系バラエティテ番組の中で、、そう彼女は女優。朝ドラにも出ていたから僕は良く知っていた。さらに僕の中でワースト映画ランキング最上位の『◯◯ナデ』にも出演している。では、なぜ彼女を女優だと気づかなかったか、、、それが不思議。僕はこの際、いつもの自分のスタイルを貫いてみることにした。
「あの、僕の写真のモデルになっていただけませんか」
「えッ、、?それは、、、」
「あ、、ダメですか」
この時、何故か連れは5メートルほど離れたところから様子を伺っている。きっと連れもタレントか女優なんだろうなと思った。街でファンに声を掛けられた時、女優同士ならお互いの領域を意識してこんな態度をとることは考えられる。
「あなた、どこかで見た事がありますよ、え〜っと、、、確かタレントの、、、」
「私、タレント??」
「いや違う、女優さんの、、、」
僕は彼女の名前をど忘れ。さてさっきの疑問、なぜ僕は彼女を女優と気づかなかったか。それって、おばあさんが街でたまたまドラマの出演者に会って。「苦労なさって、、」とか、「あの人をいじめないでください」などと、俳優が演じた役で話かけるようなものか。それは違う。だって僕はそのあとちゃんと女優だと気づいたからね。ちなみに、仕事柄タレントを撮る機会があるが、比較して彼女のそんなに芸能人面していないところが僕に見誤らせたのかもしれない。僕の話にも真面目に対処していたところは人柄だろう。翌朝、彼女の出演している番組を見ながら、僕はひとりクスクス笑った。
さて、この女優は誰でしょう?
17年もスカウトしているといろんなことがある。これからも僕の失敗を笑って和んでください。
□ちょっと書き直すかもしれません。とりあえずアップします。
春の吉祥寺は、なんとなくゆるい午後を楽しんでいる暇な女子高生と女子大生と主婦で街はいっぱいで、特に駅ビルのロンロンはこれ以上人が入る余地がないほどだった。男性?あなたはここへ何しに来たのですか、と言わんばかり。そんな駅ビルの洒落たエリアに僕はいた。なぜ?それはある女の子に惹かれてついて来たから。ほとんどストーカー。その子は22才ぐらい、丸顔でショートカットで髪はとても良く手入れされていた。友達と二人連れ。友達の方はロングでキュートでスタイルもいい今風の女の子、18才ぐらいかな。連れの子の方が可愛かったけど、僕の作品にはショートの子が合っている。そもそも、この子はどこかで見た事のある顔をしている。僕の好みだからそう思うに違いない。以前にもそんなことがあったしなあ、などと考えながら彼女を追う。二人はロンロンの中のショップを数件覗いたあと、外へ。
「あの、すいません」
「はい、何か?」
と振り返った彼女の顔を60センチの距離で見た時、僕は凍った。あちゃ、どうしよう。どぎまぎする僕に彼女は、、
「あのォ、、何か?」と繰り返す。
僕が凍った理由を話そう。その日の朝か、その前の日の朝か、僕は彼女に会っていた。ある音楽系バラエティテ番組の中で、、そう彼女は女優。朝ドラにも出ていたから僕は良く知っていた。さらに僕の中でワースト映画ランキング最上位の『◯◯ナデ』にも出演している。では、なぜ彼女を女優だと気づかなかったか、、、それが不思議。僕はこの際、いつもの自分のスタイルを貫いてみることにした。
「あの、僕の写真のモデルになっていただけませんか」
「えッ、、?それは、、、」
「あ、、ダメですか」
この時、何故か連れは5メートルほど離れたところから様子を伺っている。きっと連れもタレントか女優なんだろうなと思った。街でファンに声を掛けられた時、女優同士ならお互いの領域を意識してこんな態度をとることは考えられる。
「あなた、どこかで見た事がありますよ、え〜っと、、、確かタレントの、、、」
「私、タレント??」
「いや違う、女優さんの、、、」
僕は彼女の名前をど忘れ。さてさっきの疑問、なぜ僕は彼女を女優と気づかなかったか。それって、おばあさんが街でたまたまドラマの出演者に会って。「苦労なさって、、」とか、「あの人をいじめないでください」などと、俳優が演じた役で話かけるようなものか。それは違う。だって僕はそのあとちゃんと女優だと気づいたからね。ちなみに、仕事柄タレントを撮る機会があるが、比較して彼女のそんなに芸能人面していないところが僕に見誤らせたのかもしれない。僕の話にも真面目に対処していたところは人柄だろう。翌朝、彼女の出演している番組を見ながら、僕はひとりクスクス笑った。
さて、この女優は誰でしょう?
17年もスカウトしているといろんなことがある。これからも僕の失敗を笑って和んでください。
□ちょっと書き直すかもしれません。とりあえずアップします。
懐古編『フルーツスカウト』(3)教訓
〜スカウトの仕方おしえます〜
1993年頃。プランタン銀座の前。店の前に置いてあるワゴンの中に入っているバーゲン品をあれこれ探している女の子。ロングヘア。今思うと観月ありさに少し似ていた。
「すいません。僕の写真のモデルになっていただけませんか」
「私ですか?」
彼女の眼は、モデルはできません、という感じだった。ただ、とても感じの良い女の子だったので、撮影ができないにしても一応電話番号を聞いた。彼女もすんなりと番号を僕の手帖に書いてくれた。本当に嫌だったら電話番号を教えてくれるはずはないのに、当時の僕はダメなんだと決めつけてしまった。彼女の名前は、秋山しずく。その時18歳だったと思う。
それから二年後。古い手帖をめくっているとき、秋山しずくという名前と電話番号のメモを見つけた。僕はすくに彼女に電話した。
「あの、以前に銀座でスカウトした魚返です。憶えていらっしゃいますか」
「はい。憶えています」
「もし可能なら、僕の作品のモデルになっていただけないかと思って。。」
「はい。私でよければ」
「本当ですか。でも僕が今撮りたいのはエッチな写真なんですよ。。」
「・・・、いいですよ」
「えっ、ヌードでも大丈夫なんですか」
「はい」
と彼女は小さな声で言った。僕は耳を疑った。その後、彼女をモデルにいくつかの傑作を撮った。スカウトした時のモデルの表情で決めつけてはいけないという教訓を得た。女の子が典型的な清純派であっても、自分の撮りたいものがエロスなら、それを相手に伝えてみるべきだ。

1998.7*秋山しずく
このカットは二度目に彼女を撮ったときのもの。1995年のカットが見つかったらアップします。
〜スカウトの仕方おしえます〜
1993年頃。プランタン銀座の前。店の前に置いてあるワゴンの中に入っているバーゲン品をあれこれ探している女の子。ロングヘア。今思うと観月ありさに少し似ていた。
「すいません。僕の写真のモデルになっていただけませんか」
「私ですか?」
彼女の眼は、モデルはできません、という感じだった。ただ、とても感じの良い女の子だったので、撮影ができないにしても一応電話番号を聞いた。彼女もすんなりと番号を僕の手帖に書いてくれた。本当に嫌だったら電話番号を教えてくれるはずはないのに、当時の僕はダメなんだと決めつけてしまった。彼女の名前は、秋山しずく。その時18歳だったと思う。
それから二年後。古い手帖をめくっているとき、秋山しずくという名前と電話番号のメモを見つけた。僕はすくに彼女に電話した。
「あの、以前に銀座でスカウトした魚返です。憶えていらっしゃいますか」
「はい。憶えています」
「もし可能なら、僕の作品のモデルになっていただけないかと思って。。」
「はい。私でよければ」
「本当ですか。でも僕が今撮りたいのはエッチな写真なんですよ。。」
「・・・、いいですよ」
「えっ、ヌードでも大丈夫なんですか」
「はい」
と彼女は小さな声で言った。僕は耳を疑った。その後、彼女をモデルにいくつかの傑作を撮った。スカウトした時のモデルの表情で決めつけてはいけないという教訓を得た。女の子が典型的な清純派であっても、自分の撮りたいものがエロスなら、それを相手に伝えてみるべきだ。

1998.7*秋山しずく
このカットは二度目に彼女を撮ったときのもの。1995年のカットが見つかったらアップします。
あなたはどんなカメラを使っていますか。カメラに愛着を持っていますか。僕ははたしてカメラに愛着を持っていると言えるのだろうか。自信がない。半年使わないカメラは手放してしまっている。カメラを落とす。キズだらけになる。ローライとライカとT2はボロボロ。近々、ペンタ645を手放すかもしれない。便利だからだ。645を使うと何故か良い作品に出会えない。儀式的な部分が薄れるからだろうか。もちろん、ローライのレンズと比較するとあまりにもシャープだからかもしれない。DMの『クリスマス・イブ』という作品、、古いローライでなくては撮れない。ほら良く見て、、この日の撮影が儀式だったことがわかるでしょう?
おじいちゃんのかたみのローライを使ってるアメちゃんのような人もいる。そういう愛着は僕の言うそれとは違うから。アメちゃんはそれをずっと使うといい。何かがのカメラにはあると信じる気持は大事。はっきり言って、神の手を借りようとしないカメラマンは傑作を残せないと思う。おじいちゃんの力を借りるといい。
僕はデジカメ否定派と考えられているけど、誤解です。前述のペンタ645だって僕には新しく便利過ぎるんです。つまりそれ以後のカメラについて僕の中に違和感があるから、当然のことデジカメなどはペンタ645を否定するのと同じ理由がある。まあ、もっともっとあるけど、それはさておき。
トイカメラが流行している。トイカメラは女の子のテイストにぴったり。僕はトイカメラから写真に入って来た女の子たちはいずれ古い銀塩カメラにたどり着くと思っている。心強い。ではデジ一眼で入った男性はどこへ行く?それもさておき、、、
便利だなって思ったら、それでいいのか?って、立ち止まって考えてみる。塾でいつも語っていたことだけど、自分の感性を信じきってしまったら、その先はない。もっと別の何かを追いかけなきゃ傑作は生まれない。自分の感性の及ぶ範囲内で写真を考えたら、やはり自分の表現を自在に写真にできるような、とても便利なカメラが良いことになる。天才なら感性で勝負できるのかも。でもね、天才は写真をやらないよ。少なくても、写真だけでは満足できないと思う。
やっぱりトイカメラをむやみに撮る女の子たちは天才肌だね。彼女たちが天才なら、そのうちにトイカメラの流行は去る。なぜなら、天才は写真だけでは満足できないからね。
おじいちゃんのかたみのローライを使ってるアメちゃんのような人もいる。そういう愛着は僕の言うそれとは違うから。アメちゃんはそれをずっと使うといい。何かがのカメラにはあると信じる気持は大事。はっきり言って、神の手を借りようとしないカメラマンは傑作を残せないと思う。おじいちゃんの力を借りるといい。
僕はデジカメ否定派と考えられているけど、誤解です。前述のペンタ645だって僕には新しく便利過ぎるんです。つまりそれ以後のカメラについて僕の中に違和感があるから、当然のことデジカメなどはペンタ645を否定するのと同じ理由がある。まあ、もっともっとあるけど、それはさておき。
トイカメラが流行している。トイカメラは女の子のテイストにぴったり。僕はトイカメラから写真に入って来た女の子たちはいずれ古い銀塩カメラにたどり着くと思っている。心強い。ではデジ一眼で入った男性はどこへ行く?それもさておき、、、
便利だなって思ったら、それでいいのか?って、立ち止まって考えてみる。塾でいつも語っていたことだけど、自分の感性を信じきってしまったら、その先はない。もっと別の何かを追いかけなきゃ傑作は生まれない。自分の感性の及ぶ範囲内で写真を考えたら、やはり自分の表現を自在に写真にできるような、とても便利なカメラが良いことになる。天才なら感性で勝負できるのかも。でもね、天才は写真をやらないよ。少なくても、写真だけでは満足できないと思う。
やっぱりトイカメラをむやみに撮る女の子たちは天才肌だね。彼女たちが天才なら、そのうちにトイカメラの流行は去る。なぜなら、天才は写真だけでは満足できないからね。

来週中にDMを発送します。いつもよりシックなデザインにしました。写真を生かした方がいいなと思ったのです。この写真はローライフレックスです。フィルムはフジのpro400(ネガ)。右手に窓があり太陽光が窓越しに差しています。背景のグリーンは蛍光灯のかぶりです。色温度などに神経質な人もいますが、僕は無視した方が臨場感があると思っています。このあまりにも立派なリンゴは友人からの頂きもの。自分で絶対に買わない気がします。やがて裸になる彼女の序盤の1枚。下着を付けていない事が大切な1枚。今週の水曜日に再び彼女の家を訪ねました。彼女はセーラー服を着ていました。股間にリンゴを置いたところまではこの作品に似ています。ただ、僕は今度は左から撮りました。そして、その写真で大切なことは下着をつけたまま撮ったことです。人の心は変わって行きます。お互いの関係も少しずつ変化して行くものです。モデルとカメラマンだって同じです。毎回、違う作品です。少しずつお互いが変化しているからです。個展で是非、二枚を比較してみてください。
秋の午後の街をあてもなく歩く。何かこの街角から去りがたい微妙な気分。少年時代の夕暮れ時に同じような気持になったことがある。放課後、部活を終えた帰り道、無性に誰かに会いたいと思った。それに似ている。
10代の女の子をターゲットにした店の前を通る。柔らかい雰囲気の女の子に眼が止まる。何故か彼女に惹かれる。彼女のかもし出す柔らかい愛のようなもの、、それが何なのか知りたいと思った。つまり、君はいつもそんなに優し気に、人を癒すように生きているのですか、僕のようにダメなところはないのですか、誰にその愛の発し方を教わったのですか。。。
「あの、、写真を撮らせてもらえませんか」
「あの、わ・た・し、、をですか? 」
「そうです、その柔らかいあなたを撮りたいのです」
「友達と待ち合わせしているので・・・」
「五分で終ります」
「じゃあ、、」
「ありがとう」
「あなたはいつも柔らかい雰囲気なんですか」
「えっ、、」
「つまり、ほんわかした愛のようなものが滲み出て・・」
「???」
僕は彼女を連れて交差点の横断歩道の前に、、数枚撮ったが、とても落ちつかない感じ。すぐにそばの路地へ。そこから交差点をバックに彼女を撮る。お互いに緊張気味で、彼女からさっきの柔らかさが消えた。僕は申し訳ない気持でいっぱいになった。そしたら、優しい彼女はそんな僕の動揺を察したのか、またさっきの柔らかくて穏やかな女の子に戻った。青春時代、、彼女のような優しげな女の子に出会えていたらどんなに素敵な秋の放課後を過ごせただろう。
僕は予感があたったことが嬉しかったけど、反動がありはしないかとちょっとブルーになった。でも本当は、今日は二人の素敵な女の子に出会えたけれど、すぐに別れてしまう、僕の刹那的作品の運命というものをひしひしと感じたからなんだと思う。

□作品は23rd個展で公開します
10代の女の子をターゲットにした店の前を通る。柔らかい雰囲気の女の子に眼が止まる。何故か彼女に惹かれる。彼女のかもし出す柔らかい愛のようなもの、、それが何なのか知りたいと思った。つまり、君はいつもそんなに優し気に、人を癒すように生きているのですか、僕のようにダメなところはないのですか、誰にその愛の発し方を教わったのですか。。。
「あの、、写真を撮らせてもらえませんか」
「あの、わ・た・し、、をですか? 」
「そうです、その柔らかいあなたを撮りたいのです」
「友達と待ち合わせしているので・・・」
「五分で終ります」
「じゃあ、、」
「ありがとう」
「あなたはいつも柔らかい雰囲気なんですか」
「えっ、、」
「つまり、ほんわかした愛のようなものが滲み出て・・」
「???」
僕は彼女を連れて交差点の横断歩道の前に、、数枚撮ったが、とても落ちつかない感じ。すぐにそばの路地へ。そこから交差点をバックに彼女を撮る。お互いに緊張気味で、彼女からさっきの柔らかさが消えた。僕は申し訳ない気持でいっぱいになった。そしたら、優しい彼女はそんな僕の動揺を察したのか、またさっきの柔らかくて穏やかな女の子に戻った。青春時代、、彼女のような優しげな女の子に出会えていたらどんなに素敵な秋の放課後を過ごせただろう。
僕は予感があたったことが嬉しかったけど、反動がありはしないかとちょっとブルーになった。でも本当は、今日は二人の素敵な女の子に出会えたけれど、すぐに別れてしまう、僕の刹那的作品の運命というものをひしひしと感じたからなんだと思う。

□作品は23rd個展で公開します
昨日から僕は17年前を振り返って初めてスカウトした時のことを書いている。どうもそのことが僕の心を少なからず揺さぶっているようだ。個展展示用の紙を買いに出た。本当は誰かと出会える予感がしたからかもしれない。出掛ける時にそっと手を合わせて祈った。僕の予感が当たりますように・・・。
店の前でマフラーを手にして鏡に映った自分の姿を見ている女の子。最初は茶色をあてがって、次ぎに白を手にした。僕は店の前を通り過ぎるときに鏡に映った彼女の顔をほんの一瞬だけ見た。彼女も僕の方を見たような気がして、振り返ったけれど、彼女は鏡の中の自分を見ているだけのようだった。キュートなだけかと思ったけれど、ラフでかっこいい。やがて彼女は店内に消えた。どっちの色のマフラーを買ったんだろう。聞いてみたい。
「あの、写真を撮らせていただけませんか」
「わたしを?」
「時間は五分で大丈夫です。お願いできませんか」
「う〜、、じゃあ」
外に出てタクシー乗り場の脇の地下道への入口で撮ることにした。いつものように場所決めは行き当たりばったりだ。その場所が撮影に適しているのかなど、考えている余裕がない。
「なぜ、君をスカウトしたかわかる?」
「いいえ、わかりません」
「カッコいいからだよ。もちろんその上カワイイ」
「ありがとうございます」
「来年の個展の作品のモデルもお願いしたいな」
僕はとても良い気分だった。予感が当たったからね。しまった、何色のマフラーを買ったか聞き忘れた!

□作品は23rd個展で公開します
店の前でマフラーを手にして鏡に映った自分の姿を見ている女の子。最初は茶色をあてがって、次ぎに白を手にした。僕は店の前を通り過ぎるときに鏡に映った彼女の顔をほんの一瞬だけ見た。彼女も僕の方を見たような気がして、振り返ったけれど、彼女は鏡の中の自分を見ているだけのようだった。キュートなだけかと思ったけれど、ラフでかっこいい。やがて彼女は店内に消えた。どっちの色のマフラーを買ったんだろう。聞いてみたい。
「あの、写真を撮らせていただけませんか」
「わたしを?」
「時間は五分で大丈夫です。お願いできませんか」
「う〜、、じゃあ」
外に出てタクシー乗り場の脇の地下道への入口で撮ることにした。いつものように場所決めは行き当たりばったりだ。その場所が撮影に適しているのかなど、考えている余裕がない。
「なぜ、君をスカウトしたかわかる?」
「いいえ、わかりません」
「カッコいいからだよ。もちろんその上カワイイ」
「ありがとうございます」
「来年の個展の作品のモデルもお願いしたいな」
僕はとても良い気分だった。予感が当たったからね。しまった、何色のマフラーを買ったか聞き忘れた!

□作品は23rd個展で公開します



























