女の子を見た瞬間、無意識に一歩彼女の方へ足を踏み出していしまっていることがある。そう頻繁にあることではないけれど。その時、彼女に何を感じたのか、それが作品に反映されていると信じる。つまり、初めて会った時に感じた彼女の魅力が写真に現れていれば嬉しい。
ビルの階段の踊り場に差し掛かった時、その子は壁の掲示板を見ていた。すぐに僕は彼女に近づいて声をかけていた。もちろんモデルになって欲しいと言った。彼女と意外に長く話したけれど、撮影させてくれる雰囲気は全くなかった。彼女は僕が熱心に頼んだことをじゃ毛に扱えず、その場を立ち去ることが出来なかったのかも知れない。
「無理でしょうか。モデルになっていただくのは」
「ええ、お話は嬉しいのですが、顔が出るのは・・・、それに私は東京の者ではありません。遠くから来ました」
「そう、じゃあ今すぐ駅で撮らせていただけませんか」
「・・・」
「最後に1枚だけ写真を、携帯で撮らせて頂けますか?」
「ええ、でも顔が分からないように」
「じゃあ・・・、君の傘を撮らせて」
「傘??」
「そう、さっき最初に君の何を見たのか思い出してみると、顔、そして傘の順だったから」
彼女の持っていた青いビニール傘、最近見ないけど、何か懐かしさがこみ上げた。細身で長身、エプロンスカートの似合う清楚で笑顔の素敵な女の子の持つ青いビニール傘が僕に妄想させたのは<女のアパートに泊まった翌朝の突然の雨。優しい彼女が持たせてくれた青い傘>みたいな典型的ストーリー。彼女はある種、男にとって理想の女を連想させる人だった。

*ケータイ