銀座の女・・・2010.10.3




 銀座へ。仕事を終えて銀座通り面したビルから歩道に転がり出たところで彼女とばったり会った。彼女は僕がその日連れていたアシスタントの女の子の知人だ。

「あれ!こんなところで会うなんて偶然だね」と二人は声を揃える。僕は彼女とは赤の他人のくせに「本当に偶然だね」と続ける。彼女はそれを受けて猛烈なスピードで頭を回転させたあとここは軽く受け流してしまいましょう、という結論に達し、「あ、はい」と言った。こんな芸当はそんじょそこらの女の子にはできない。次に、二人の会話の途中に割り込んで「素敵な女性ですね」と言うと「ふふっ、、」と否定も肯定もせずに軽いハニカミ笑顔を僕に返した。この女、出来るな、と僕は関心した。何が出来るかと言うと、それは処世だ。多くの女性がこの子のように自然に振る舞いたいと思っているができない。何故ならとっさの処世は学んでできるものではなく天性のものだからである。イイ女である。

「今度僕の作品のモデルになってくれませんか?」
「ええ、もちろん私でよろしければ」
「セーラー服を着てもらいたいんですが」
「・・・」

 彼女は無言で顔を15度左に倒して微妙な笑顔を返した。その笑顔の意味を「ええ、もちろんセーラーでも何でも着て差し上げますわ。なんなりとおっしゃってください。きっとお役にたってご覧にいれます」と僕はめちゃくちゃ身勝手な解釈をしたのだった。僕は急いでバッグからT2を出してシャッターを押した。
2010-10-18 : 2010新作 : コメント : 0 :

『再会・ASAMI』・・・2010.8.26(渋谷)

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 ASAMIと酷暑の渋谷で再会した。再会場所に渋谷を選んだのは、ASAMIと出会ったのが渋谷だったからだ。最初は2日ほど前に銀座で会う約束をしたけれど、僕はやはり渋谷にこだわることにした。どこかアジアを感じさせるASAMIには渋谷の雑踏が似合っている。

「久しぶり。暑いね」
「はい、今年は夏バテをしました」
「へえ~、夏がお似合いの君が夏バテを・・・」
「でも、今は大丈夫です」
「渋谷を歩いてくれないかな。スクランブルとか適当でいいから。それを僕はやみくもに撮る。つまり、君とすれ違うだけの他人として」
「はい。わかりました」

 現像が上がるとASAMIらしい写真が数枚あった。それらの写真には何となくアジアの熱風が吹いている。やっぱりASAMIはアジアンテイストなんだな。
2010-08-28 : 2010新作 : コメント : 2 :

「白いカナリヤ」・・・2010.6.21



□「白いカナリヤ」はシンガーソングライターの三村京子さんの新作CDジャケット用に撮影した作品を使わせて頂きました。彼女の新作が楽しみですが、まだ聞いたことのない方は旧作を聞いてみてください。
2010-07-01 : 2010新作 : コメント : 0 :

「白いカナリヤ」・・・2010.6.21

 白いカナリヤを撮った。そのカナリヤのさえずりは今までに聞いたことがなくて、最初僕は少し戸惑った。僕がその白いカナリヤにカメラを向けると、太ももを見せながら不思議な歌をさえずった。歌の意味は僕にはかなり難解で、カナリヤに向かって「どんな意味?」と問いかけたとしても、きっと僕が期待するような答えは返ってこないに違いない。それに、そもそも僕はカナリヤ語がわからない。だけど、何かが僕の心の奥にまで届いているのは確かのようだった。

「ねえ、その歌だけど、僕も憶えてどこかで歌ってみようと思うんだ」
「それは良い考えだと思うわ」
「じゃあ、どこへ行って歌えば良いだろう?」
「そうね、、団地」
「・・・」

 いつのまにか僕は白いカナリヤのことが気に入ってしまった。もしかしてそれは白いカナリヤのさえずる不思議な歌のせい?それとも白いカナリヤの艶かしい白い肌のせい?君たちも白いカナリヤの歌を聞いてみたいと思わないか。一度聞いたら僕と同じように白いカナリアを気に入ってしまうよ。ただ、相変わらずの問題は、君たちにしたって僕と同じでカナリヤ語がわからないことに違いないけどね。

□2010.6.21*モデル~三村京子
□この作品を見たい方は拍手をお願いします。。。
2010-06-25 : 2010新作 : コメント : 0 :

「雨の日と月曜日は」・・・2010.6.14


雨のベンチでトモミは髪や身体や服を濡らした。。。
2010-06-20 : 2010新作 : コメント : 0 :

「雨の日と月曜日は」トモミ・・・2010.6.14



 『雨の日と月曜日は』を車で聞きながらトモミの来るのを待っていた。恐らく今夕あたり胸の大きいお天気キャスターが梅雨入りしたと言うに違いない。雨はうっとうしいけれど、僕の心を鎮めてくれるから好きだ。知り合いにとんでもない雨女がいるけれど、彼女もそういえば僕の中では癒し系のメンバーに入っている。

 雨の中をトモミがこちらへ歩いて来た。僕たちは、たくさんのメールのやり取りの後のぎこちない挨拶を雨に濡れながらした。トモミの手足の何と白いことだろう。それが僕の第一印象で、とても驚きだった。僕は車の中でトモミにリクエストした。

「あの、雨の中で撮影させてくれませんか」
「え、、」
「ずぶ濡れになってくれませんか」
「だって、、」
「ちゃんとした雨だし、、梅雨入り初日の記念すべき雨を君に受け止めて欲しい」
「でも、、」

 トモミの「え、、」「だって、、」「でも、、」の後には僕の言葉よりずっと長い否定の言葉が続いている。それでも僕はどうしてもずぶ濡れのトモミを撮りたかった。さわやかな五月の風が吹いたあの日、僕の大好きなベンチは初夏の木漏れ日の下でキラキラ輝いていた。今日はそのベンチには水が貯まりずぶ濡れに違いない。そこへ薄いコットンの夏のワンピースを着たトモミを座らせて下着を濡らしてしまうのを見て、五月晴れの日々を忘れ去ろうと思う。

「ねえ君、、何て長く美しい手足をしているんだ。身長はいくつある?」
「166センチ」
「素晴らしい。その長い手足が雨に濡れるのを見ていたいんだ」
「それだけ?」

 トモミは僕の提案を拒否し続けていたが、割り箸を割りそこなった時のような、空虚な諦めが彼女の眼に浮かんだあとこう言った。

「私、、やります」
「いいの?」
「いいも何も、魚返さんはそれ以外を撮ろうとしない」
「ごめん、でもそのかわり、どこかで君の飛び切りのポートレートを撮るよ。約束する」
「約束よ」

 トモミは気っぷの良いなかなかイイ女だと思った。

2010-06-14 : 2010新作 : コメント : 0 :

「いまさらのリトルファンタジー」・・・りこ

 りこは2006年に渋谷で開催した個展「リトルファンタジー」に来ていた女の子だった。ひとりでやって来てそっと作品を見て帰ろうとした時、僕は彼女にモデルを頼んだと記憶している。四年も経った今になって、りこから突然メールが来たのだ。しかも今日はメールが送られて来た日からすでに三ヶ月が経っている。りこと僕とはこれまでも、さらにこの先もずっと行き違いの関係なんだろう。
 さっき駅で再会した時、ふっと懐かしい気分になったことがとても意外だった。お互いにこわばった空気を感じていたけれど、電車に乗って二つ目の大久保駅で降りたころには、りこの控えめな笑顔について少し語り合えるぐらいには関係がほぐれていた。
 ホームでりこの写真を撮った。りこの表情の奥に暖かいものが流れるのを見つけた。その瞬間のりこが素敵だった。ただし、その顔は僕が彼女にカメラを向けていない時にだけに現れるようだ。なぜだ?
 りことの会話は、お互いの言葉を自動翻訳ソフトで訳されたかのようにぎこちなくて、意味すら取り違えている可能性があった。お互いにちゃんとした言葉で話しているのだけど、通じ合えない。そんなもどかしさの中で会話を続けた結果、僕たちは互いに写真を撮ることにだけ集中せざるを得ないことに気づいたのだった。

「君、、とても不思議な子だね。それにいい人」
「そうかしら、、でも私ってしたたかなのよ」
「どんなところが?」
「それは写真家である、あなたならわかるはず」
「・・・」
「制服を着てみない?」
「私が?無理だと思う」
「ありがちな女子高生ができ上がるさ」
「ありがち?」
「そこらへんにいそうな女の子になる」
「なぜわかるの?」
「それは僕が写真家だからだよ」
「あはは、あなたもしたたかね」

 結局、僕はりこのスキャンダラスな写真を撮った後、制服姿も撮った。りこが制服を着ると、やっぱりありがちな女子高生になって、ありがちな笑顔を僕に向けた。その瞬間をしたたかに写真に納めた時、僕ははっとした。りこは初対面の時と比べてとてもイイ女になっていたのだった。
 
■スキャンダラス~これは綾嶺からいただいたフレーズ。。綾嶺に感謝。
2010-04-18 : 2010新作 : コメント : 0 :

「ダンス・ダンス・ナナセ」・・・2010.3.3

「私、その頃はまだ中学生でした」と僕にぐっと顔を近づけて言った。
「ああ、僕にメールをくれた時、君は14歳だった。危ない子だった」
「次に、高校生の頃、たぶん17歳になったばかりの頃、私は東京へ来て、魚返さんに写真を撮ってもらいました」と懐かしそうに微笑む。
「ああ、君は突然九州から出て来てしまったね。どうしようもない子」
「それから、高校を卒業して、ダンサーになるために東京に来て、1年が経って、私はまた魚返さんと会った」少し遠くを見るような眼をして言う。
「ああ、君はだいぶ大人になっていたけど、まだまだ幼稚なところがあったね」

 よどみなく昔を語るnanase。とても生き生きしていて、、ああ何て素敵になったんだろう。

「私、もっともっとダンスに打ち込みたくて、、」
「それで?」
「ひとりで旅立ちたいと思うの」
「そう、、、」
「私にはダンスしかないんです」
「本当に素敵な女になったね。君といると元気が出るよ」
「本当ですか?そう言われるの、とても嬉しい」
「本物の女の入口に立ったんだと思うよ、、、」
「ああ~、、嬉しいなあ。嘘でも・・・」

 恋よりダンスを選んだ女の輝きを前にして、僕は嬉しさもあったけど、何だか恥ずかしい気持だった。何故なら、こんなに健康的に輝いている女を前にしても、僕の考えることは同じ。

「君、胸が大きいね」
「母親譲り・・・」
「ねえ、やらしい写真撮らせてよ」
「ああ、やっぱりそうなのね」
「それを僕から奪ったら、それは僕の抜け殻」
「ああ、それはそれで素敵なことかもしれないけれど、、」
「ねえ、ませた女子高生になってくれないかな」
「私が?高校生になれるの?」
「ああ、なれるとも・・・」
「いいけど、、」
「その女子高生は、ダンス部の部活のあと顧問の先生と寝てしまうんだ」
「ああ、やっぱりそうなのね」
「・・・」
「それで、ダンス部の顧問は誰かしら?」
「それは、、、」
「それは、魚返さん、あなたね・・・」
「・・・」

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携帯**nanase*4月第2(土または日)WSに登場。



2010-03-03 : 2010新作 : コメント : 0 :

『あわよくば』・・・2010.2.14


詠子という女*年齢不祥、、歳をとるということは、女の場合、若さとというベールで隠すことから解放され、若さというジャンルで他の女と競うことをやめて、本性を現すっていうことかもしれない。詠子の場合は可愛い性を見せている。これが詠子の本性ならば、、、そう思ってこの1枚を選ぶ事にした。いつものような、そう、"エイコ"の時代のエロスはフリッカーで紹介する。しかし、米のID必須。ハードル高し。
2010-03-02 : 2010新作 : コメント : 0 :

『あわよくば』・・・2010.2.14

 久しぶりに会ったエイコは着物姿だった。中野駅のホームのうどん屋の前に立たせたら、汁の匂いと相まってあたりはまるで昭和になった。装いは四季の草花を散りばめた柄の布でこしらえた黒色系の着物と金色系の博多織の帯だった。僕は着物のことはわからないけど、それが古いものだということはわかった。
「母の物です」とエイコが言った。
 着物は久しぶりに顔をのぞかせた冬の太陽にきらきら輝いていてエイコをしっとりと美しく見せている。
「この着物の柄って、四季の草花の模様で出来ているでしょう?これはきっと一年中着られるように母が工夫したのだと思います」
 僕はエイコの説明に少し関心した。そしてローライで数枚撮った。

 ここは和風旅館。彼女は座って裁縫を始めた。

「これは刺繍です」
「そのようですね。申し訳ありませんが、着物の裾を乱してください」

 エイコが裾を開いたのを確認して数枚撮った。彼女はハート型の小箱を持って来ていて、その中に刺繍の道具が入っている。その箱がとても可愛い。

「これはマーブルチョコレート」と言ってエイコはハートの箱の中から二つのチョコの筒を出して僕に見せた。
「へえ、、その中身はチョコレート?」
「ひとつはそうだけど、もう一つには編み棒が入っています」
「もっと着物を乱してくれませんか。あわよくば・・・」

 エイコは布団の上に移動し、たくさんの刺繍と刺繍の道具を散りばめたあと正座した。

「もう一回、裾を乱してくれませんか」
「はい。これで良い?」
「もっとです。あわよくば・・・」
「着物姿はキレイでも、脱ぐと和装は美しくありませんよ。いろいろなものが仕組まれているので」
「そう、、でも。もっと乱して欲しいのです」
「着物を脱ぐと肌に布で締め付けた跡がたくさん刻まれているのでキレイではないのです」
「いいんです。脱いでください。何事も、あわよくばですから」
「では脱ぎましょう。あわよくば良い作品が撮れることを祈りましょう」

 エイコは上半身をさらけ出した。若くてみずみずしく美しい裸だった。

「その編み棒を乳房に刺してみてはどうでしょう?それに意味があるわけではないけれど・・」
「ええ、あわよくば・・・ですね」

 僕は最近読んでいる古い小説の一場面に迷い込んだような錯覚をした。そして少し気分が悪くなってくらくらした。

「終わりにしましょう」
「もう?」
「そうです。少し疲れました」
「それで、さっきからあなたが言っている、あわよくば、はどうなります?」
「実はもう、あわよくばを通り過ぎてしまったらしいのです」

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■この作品は後日公開します。
2010-02-15 : 2010新作 : コメント : 0 :

「Paris,Tokyo」・・・2010.2.1



彼女の中に流れる彼女だけの何か。それを持っているゆきは素敵だ。
□ゆきさんが第一回ワークショップに登場します。
2010-02-09 : 2010新作 : コメント : 0 :

『レッドコート』・・・2010.1.30



赤いコートを着てホームに現われた派手ないい女が実はしおらしく愛らしい女だとしたら、、男なら惚れます。
2010-02-08 : 2010新作 : コメント : 0 :

『東京ガールズブラボー』・・・2010.1.24

2010-02-04 : 2010新作 : コメント : 0 :

「Paris,Tokyo」・・・2010.2.1

 電車から降りてきたゆきを見つけた時、感動と勘違いするぐらい大きめの懐かしさが込み上げて来たのがとても意外だった。一年数ヶ月ぶりに会ったというだけの理由ではない。ゆきがその間、遠い外国へ行っていたから、その距離感も彼女への郷愁を強くしていたと思う。まだあるなら、ゆきの魅力のなせる技かもしれない。

「やあ久し振り」
「はい、お久し振りです!」
「パリはどうだった?」
「ええ、やっぱ日本がいいです」

 まるでゆきらしくない言葉が返って来た。僕はてっきり、二度と日本には戻りたくなかったけれど、、、などと言うと思っていたからだ。と言っても、ゆきがくしゃくしゃに凹んでいるわけでもなさそうだった。ゆきの眼を覗き込んだ。やっぱり昔の勝ち気でロマンチストのゆきがそこにあった。
 
 いきなり古風な旅館へやってきた。理由は、最近の僕は少しだけ和風がお好みだからで、それほどの意味はない。ゆきに浴衣を着せた。浴衣姿のゆきは目つきが艶かしいところ以外はまるで日本人形のようだった。それは、パリへ行く前のゆきの定番的な表情であり、彼女がちっとも変わっていないことの証明だった。シャッターを押せばすなわち作品になる。そんなモデルを被写体にしたとき僕は場の成り行きに従うことにしている。つまり今日はそうすべき日なのだと強く思った。
 
「君に惚れたよ」
「本気で言っているのかなあ?」
「もちろん本気だよ。でき上がった写真を見ればわかるよ」
「また、そんな、、、」
 
 フィルム一本撮り終えた。

「これに着替えて欲しい」
「それは、、、??」
「高校生が着るシャツとスカート」
「あら、セーラーではないんですね。少し残念です」
「いいんだよ。これで。きっと君に似合うから着てごらん」
「でも、私で高校生になれる?」
「ああ、なれるとも。気持の問題だよ。君がもし17歳の頃の気持を思い出せるなら大丈夫だよ」
 
 数分して別室で着替えたゆきが戻って来た。

「いいじゃない!」
「ええ、案外不思議な格好ではないみたい」
「ただし、これから僕が撮る写真には何か別の要素が入り込んでしまう」
「それは?」
「そんなこと、言葉になんかならない」
「・・・」
「つまり、17歳の気分になった君がいて、ある世界観を持った僕がそれを撮る。もうそうれは作品なんだ」
「そうかなあ」
「ただし、多くの人たちに理解されないかもしれない。だけど、きっといる僅かな理解者のためにこれを撮って発信する義務が僕たちにはあるんだ」
「なるほど」

2010-02-02 : 2010新作 : コメント : 1 :

『レッドコート』・・・2010.1.30

 眼を刺すような刺激的な色が僕の視界に入り込んで来た。七(ナナ)が真っ赤なコートを着て約束の秋葉原2番線ホームに現れたのだ。その時、一斉に僕の周りの男たちの視線が七に釘付けになっているのが、何となく気配でわかった。そんな派手な人形が僕の方へ駆け寄って来たとき、ちょっと恥ずかしかったし、嬉しくもあった。
「お待たせしてしまって、、」と丁寧にお辞儀をした。しかし、待ち合わせ時間に遅れてしまったわけでもない。ジャストタイムに七はやって来たのだ。
「私の都合で秋葉原まで来て頂いて、、」と言葉を続けた。七はそんな心遣いのできる女なのだ。七の容姿は一緒に歩くの恥ずかしくなるほど派手で、そのうえ豊満な身体をしている。恥ずかしくなるというのは、目立つことが苦手な僕の印象で、実は多くの男はそんな七を連れていることを誇りに感じるだろう。
 人目をひくルックスと行きとどいた心遣いとの組み合わせが、七を色気のある日本女性のある種類の定番にしていた。その時僕は、この女の本性を撮りたいと思い始めていた。
「ちょっとそこに立ってみて、、」
「はい先生。こちらでよろしいでしょうか?」
「そう、そこでいいよ。でも先生と呼ぶのはやめてくれないかなあ」

 それから、僕たちは電車に乗り三つ先の駅で降りて、駅の近くに乱立するホテルのひとつへ無造作に入った。その部屋は雰囲気がいかがわしく、失礼かもしれないがそれが七に合っているように思えた。七は真っ赤なコートを脱ぐと、濃紺の半袖のミニのワンピース姿だった。その姿はとても色気があった。七を小さなソファーに座らせると、太ももにそっと両手を置いてかしこまって座った。僕はもうこれでいい、とカメラを構えてシャッターを押した。七の色気は今がピークだろうと直感したのだ。つまり、これから何が始まるのだろうという緊張感の中で七は渾身の清楚さで僕の妄想を跳ね除けようとしているのだった。僕は妄想し、またシャッターを押した。
 実は今日は七の浴衣姿を撮りたかったのだということを思い出した。しかし、僕はもうこれ以上魅力的な七は撮れないだろうと感じていた。ちょっと迷ったあと、、結局、、
「そろそろ浴衣に着替えていただきましょうか」と言った。
「はい。わかりました」と言って、七は洗面所へ消えて行った。

 やがて浴衣姿の七が僕の前に戻った。七に対して淡々とシャッターを押している自分が嫌になってきた。そういう時ほどたくさん撮る。それが僕の癖かもしれない。乗れない自分を悟られないように、、、。撮りながら、浴衣を着る前と後の写真について考えていた。いったい僕はどっちの写真が好きなんだろうか。七と僕の激しい感性のつぶし合いか、それとも浴衣というアイテムを得てある種の日本的説得力を持った写真の方なのか・・・。

「ありがとう。さようなら」
「先生、本当に今日は楽しかったです」
 七は最後まで僕を先生と呼んだ。僕たちは駅でそれぞれ逆方向の電車に乗り別れたのだった。

 僕は駒込で降りて『西尾中華そば』というラーメン店へ行った。見た目、味ともに繊細なラーメンを食べながら七のことを思い出していた。そのせいでもあるまいが、このラーメンの何と楚々とて色気のある味だろう。まるで日本女性のようだと思った。食べ終わって店を出る時、「またおいで下さい」と言った若い主人の清潔な顔を見て、はっと妄想から我に返り、「久しぶりにこんな美味いラーメンを食べたよ」と心の中で言ったのだった。


■作品は近日公開?
2010-01-31 : 2010新作 : コメント : 0 :

『東京ガールズブラボー』・・・2010.1.24

 外は真冬でも窓ガラスに差している陽射しは春のような暖かさを部屋の中へ運んでいる。かすみはベッドの上で本を読んでいる。それは『東京ガールズブラボー』という1994年のマンガだった。

「君はそのマンガが好きなんだね」
「はい。昔よく読みました」
「どうしてそのマンガを持って来たの?」
「何となく、このマンガといっしょに写りたかったからかな」
「それだけ?」
「ほら、この本の表紙、ちょっとカラフルで良いでしょう」
「そうだね。。」
「どんなストーリー?」
「札幌から東京へやって来たサカエというオシャレでおバカな女の子と彼女を取り巻く少女たちの話です」
「そう、、、」

 きっとかすみは登場人物と自分をダブらせて読んでいるのだろうと僕は思った。
 僕はカメラを覗いた。全裸のかすみの白く美しい肌が冬の光にゆれている。僕はかすみの胸の真ん中にピントを合せシャッターを押した。

□作品は後日公開?
 
2010-01-24 : 2010新作 : コメント : 0 :

『凛子』・・・2010.1.10


凛子(ネコ)もmidoriの真似をして、前足で胸を隠しているように見える。
2010-01-22 : 2010新作 : コメント : 0 :

折鶴1・・・2010.1.12


去年の個展以降、新作を撮るにあたって僕が思っていることは原点に帰りたいということだった。それがどれだけ実現できたかはわからないが、この作品には僕の心を揺さぶる何かがあることは確かだ。
2010-01-20 : 2010新作 : コメント : 2 :

折り鶴・・・2010.1.12

 カホリと僕はちゃぶ台に向かい合って座った。畳の部屋は古い民家の趣きがあった。襖は大胆な色使いで、普通ではない使われ方のために造られたことがわかる。カホリをファインダーの中に納めてみた。なるほど、と僕は思った。まだカホリの表情に女の正体が現われていないのだ。僕はちょっと考える振りをした。その思わせぶりにすぐに食いつくところがカホリらしい。

「どうかしましたか?」
「別に、、」
「お着替えしましょうか?」

 そう言うとカホリはバッグから黒と肌色の二枚のスリップを出してちゃぶ台の上に置いた。僕は迷わず肌色を選んだ。カホリはすっと立って隣の部屋で着替え始めた。隣の部屋は寝室で、そこには一組の大きな布団が敷いてあり、一方の壁には造り付けの大きな鏡があった。僕のいる和室との境の襖は開けたままだったから、着替えているカホリの姿が鏡に映っているのが見えている。僕はカメラにフィルムを詰めながら一部始終を見た。カホリはわざと襖を開けっ放しにして自分が着替えているところを見せたのかもしれなかった。

「お待たせしました」
 と言ってスリップ姿のカホリがまたちゃぶ台の前に座った。僕はとりあえず1枚撮った。間を繋ぐためだ。
「私、どうすれば良いのでしょうか」
「そうだね、適当にしていてくれればいい。折り紙を折るのもいいね」
「はい。わかりました
 カホリは何だか物足りなそうだった。僕は二枚目を撮った。
「先生、あとはどうしたら良いのでしょう」
 またカホリが言った。
「そうだね、自慰でもしてもらおうか」
「ふふ・・・」
「君の本性には男っぽいところがあるね」
「えっ?どうしてですか?」
「僕にはわかる」
「・・・」
「そろそろ裸を撮らせてもらおうか」
「はい」

 大きな布団の上にうつ伏せに横になったカホリの尻の上に折り鶴をそっと載せてみた。
「私、どうしたら良いでしょうか」
「そうだね、自慰でもしてもらおうか」
「・・・」

□後日公開?


2010-01-14 : 2010新作 : コメント : 0 :

凛子・・・2010.1.10

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□携帯カメラ

 midoriの部屋を訪ねた。そのマンションは僕が二十歳の時に住んでいたアパートからひと駅のところにあった。アップダウンの多い住宅街を歩く。風は冷たいが陽射しの暖かさと混じり合って心地よい。僕は昔のことを思い出していた。とにかく僕の部屋は寒かった。室内なのに流しの水が凍ったこともああった。

「こんにちは。おじゃまします」
「ネコがいます。大丈夫ですか?」
「あ、まあ、何とか」
 どうやらmidoriは僕がネコ嫌いだということを知っているようだ。
「このネコの名前、何て言うの?」
「凛子です」
「そうですか、凛子ねえ」
「菊池凛子に似ているでしょう」

 凛子は撮影機材に興味を持ったらしかった。僕は凛子抜きに撮影をすることを諦めなければならなかった。結局、撮った写真のすべてに凛子が入ってしまった。でも、なんだかそれが自然なような気がして。案外でき上がったら、midoroより凛子の方がメインの作品になっているかもしれない。

□作品は後日公開します。
2010-01-10 : 2010新作 : コメント : 0 :
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プロフィール

ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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