温もりをください

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ながい冬のあいだに凍った身体は
遅すぎた春にはとても解かすことができなかった
永遠につづくかのような夏ですら
ただ忍耐を培ったにすぎなかった
瞬く間に終わった秋を悲しむ間もなく
いままた忌まわしい冬がきてしまった
せめてあなたの脚の温もりをください

良いお年を。

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平成24年12月31日
妄想写真家・魚返一真
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2012-12-31 : 短編 : コメント : 0 :

『ルージュの誘惑』・・・作品




2012.12.26 model*つぐみ

            ∬

 容赦ない北風。かさかさと地を這う枯葉は昆虫を空き箱に閉じ込めた時のもがきのような生命の音がする。角度の低い逆光の陽射しを浴びて景色の南側半分がベージュ色に光っている。そこへ、白い翼が無造作に落ちている。少女を天使にするたくらみに失敗した翼である。
 少女は枯葉の上にひざまずいた。太腿をさっと風が通り過ぎた。冷たい土の感触が少女の膝に伝わっているだろう。土の中で寒さに耐えている生命に少女の新鮮な体温をあげよう。雑木林を吹き抜ける冷たい風は、少女のポニーテールを掻き乱し頬はみるみるピンク色に染まった。
 少女は赤いルージュを左手にもっている。母親の寝室からこっそり持ち出したものだ。塗ってごらん、と言うと、左手に持ったルージュを上唇の右側にあてる。手つきはぎこちない。少女だからだ。さあ、塗ってごらん、ともう一度言う。
 鮮やかな赤色だった。少女のうぶな唇の上に大人の女が使ったルージュが塗られた。ふいに手元がくるってその赤色は少し唇の輪郭からはみ出してしまった。その美しさたるものは、彼女が少女であるが故だった。
 少女は一言も語らなかった。僕も言葉がなかった。あったとしても、少女に伝えるべき言葉ではなかった。

 14才は完全変態が始まった蝶の蛹のように限りなくピュアだった。

            ∬




            ∬




2012-12-30 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :

『純喫茶の女』・・・2012.12.23

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            †

 秋葉原から山手線の内回りに乗り戸袋の脇に立っていた。パイプの手すりを隔ててすぐ右下の座席に座っている若い女が僕を見ている。女の髪は茶のロング、身なりは良く顔はややエキゾチックだった。かなりイイ女である。御徒町で降りると女も僕の後を追うように降りてきた。立ち止まり、何か僕に用があるのか尋ねると、女は僕を知っていると言う。まさか、念のため過去に関わった女を思い出してみた。むかし関係があった女にしては若すぎる。それに美人すぎる。
 北口改札を出た。女も僕について出た。振り切らなかったのは女に少し興味があったからだ。改めて女の全身を見れば、足は細くスタイルも良い。連れて歩けば鼻高々であろう。僕が御徒町に来たのは、喜久屋カメラというレトロなカメラ店へ行き取り置きしてもらっているローライフレックスのパーツを受取るためだった。女にそれを告げると喜久屋カメラへ僕と行くと言う。この時の僕は、女を面倒な存在ではなく歓迎する方向に向かっていた。女に御徒町に来た理由を尋ねると、好きな喫茶店があるからと答えた。つづいて、僕の用が終わったらその喫茶店へ行こうと言った。
 僕が歩き出すと女もついて来た。北口を離れて横断歩道を渡ってすぐ右手に喜久屋カメラがあった。店は折からの銀塩不況のせいか展示スペースが狭くなっていた。以前は、階段を降りると地下いっぱいに広がる空間におびただしい数のドイツ製カメラが展示してあった。そこは愛好者の楽園さながらだった。いつもならカメラの夢を見ながら楽しい時間を過ごすところだが、女の処遇が気になって、速やかに買い物を済ませて店を出た。
 今度は僕が女の後をついて御徒町の商店街を歩いた。すぐにお目当ての店に着く。何のことはない古い純喫茶だった。そして、当然のように純喫茶と看板が出ている。看板はかなり古かった。メニューを飾るショーウィンドーも古い。何もかもが時代遅れだった。おそらく1970年代のものだろう。1974年に東京に出て来た僕も今では完全に時代遅れだという確信が頭の真上で停止した。淋しさに襲われた。この気持ちを女に悟られないように、レトロな喫茶店をそこかしことなく褒めて女の先手を打った。
 店に入った。地下一階に降りるとさらに階段があって地下二階もある。僕たちは階段を降りて地下二階の席についた。複雑な照明、造花、ステンドグラス、天使の裸像、意味不明な構造の天井部分、それを、柱を覆うように貼られた薄汚れた巨大な鏡が映し、この場所をさらに複雑に見せていた。
 僕たちは飲み物を注文したあと長い沈黙に浸るよりなかった。


            †

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□僕は僕かもしれないし僕ではないのかもしれない。事実に基づいているが、そうでもない部分もあるかもしれない。この話には続きがあるのだが・・・




2012-12-25 : 短編 : コメント : 0 :

『カメラマンの色』



 カメラマンになって苦労したのは自分のスタイルを持つことでした。それはモノクロでもカラーでも同じす。どうやって自分の色を出すかを早急に見つけなくてはなりませんでした。そうでないとプロの世界でコンスタントに仕事を得ることはできませんでした。

 ここではカラーに絞ってみます。それこそ様々なことを試しました。今思い返しても良くそんなことをやったと思うほどです。遠回りしましたが、最終的には、フィルムの選択、レンズの選択、フィルターの選択という三つの組合せから自分の色ができて来ると知りました。王道ですね。

 とりわけ雑誌のグラビアなどではポジ(スライド)フィルムでの撮影が有利な時代でした。ポジは露出のラチュードが狭くて非常にシビアです。露出決定にとても苦労したおかげでラチュードが広いネガばかり使っている現在は露出計をまったく使う必要がありません。

 さて本題の色です。レンズとフィルムの種類が決まればあとはフィルターです。フィルターは薄いシート状のもので種類も濃さも様々あって自由な色作りができます。これらのフィルターは総称しゼラチンと呼ばれていましたが、コダックのラッテンフィルターとフジのCCフィルターの2種類があります。

 このフィルターを常に持ち歩き、状況によって使い分けるのです。常に50枚は持ち歩いていたと思います。僕の場合は数枚同時に使用して複雑な色味を楽しんでいました。当然、ピントにはやや不利ですが、色調を優先するため常用していました。

 このように色調にとても苦労した経験のせいか、レタッチする時に昔僕が多様していたフィルターの色を再現できます。僕の作品の色味は複雑だと言われています。それは様々なゼラチンフィルターの組合せの再現なのです。

 僕はデジカメ派のカメラマンが撮った写真の色の悪さを見て半ば同情しています。プロもアマも同様です。しかし、それが現在の時代の色ということでしょうから、現在のデジイチ愛好者からは、余計なお世話にすぎないことかもしれません。

 掲示板『web写真塾』に投稿してくれた直樹さんの写真ですが、この方はネガかポジで撮っていらっしゃると思いますので、問題はレタッチにあると考えられます。付加えれば、スキャン時の色調決定でも何らかの問題があるかもしれません。昔のカメラマンのように弱いゼラチンフィルターで薄めに色づけするような、そんなレタッチがと良いと思います。

 
□僕の掲示板『web写真塾』では一般の方の作品もご指導します。よろしければご投稿ください。待っています。





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2012-12-21 : 写真塾 : コメント : 0 :

『12が三つ並ぶ日に』・・・作品



2012.12.12 model*ジェマ

            †

 昨夜はバッハを聴きました、とジェマが言った。几帳面で精神性を重んじるジェマらしい選曲だった。偶然だが僕も昨夜はバッハを聴きながら休んだ。撮影を前に二人ともバッハを選んだということになる。

            †

 公園にやって来た。僕たちの足下はイチョウの落葉が黄色く敷き詰められていた。葉は落ちてから少なくとも数日は経っていて、しかもこのところの乾燥でカラカラになっていた。そこへ柱時計を置いた。針は7時49分を指している。この時間は彼女に割当てられたもので、それがジェマ時間なのだ。

 ジェマは黒いミニのワンピースを着て黒いパンプスを履いていてシックだった。そのせいか、いつもより大人の女に見えたし、この先どんどん美しくなりそうな、そんな片鱗を見せていた。僕は嬉しくもあったが、その美しさに対する漠然とした焦燥感もあった。

 僕がジェマの美しさについて何度説明しても、ジェマは首を横に振るだけだった。なるほどジェマはそういう女の子だ。その様子を見て僕は安堵し、ジェマという女の将来がとても楽しみに思えた。いつかまたジェマと何処かでジェマ時間に柱時計と写真が撮れたら嬉しい。

           †††

 今日は2012年12月12日、几帳面に12が三つ並んだ。柱時計の針は7時49分を指している。今から263分後、つまり12時12分には、ついに12が五つ並ぶ事になる。加えて12秒には六つの12が並ぶのである。僕はこんな日に写真が撮れる幸運と、この時を選んだジェマの几帳面さに感謝している。

            †
           †††
            †


□この作品は2012.4.6に撮影した『柱時計の思い出』の続編である。




2012-12-18 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :

『カメラマンの世界』

 掲示板では書ききれないからここに書く。

            ★

 写真は誰のものになっているか。実は、それはとても問題だ。いずれ重大な問題になっていくと言った方が良いかもしれない。上達していくと、女の子をモデルにしたポートレートを自分の作品であると断言できるかという危機的場面に直面するということだ。

 そもそも、うっきーが持って来た写真についての語らいが発端。何人かのモデルの組写真を見せてもらったが、上手かったのが他の撮影会で撮ったキュートな女の子の写真だった。つまり、うっきーはそういう写真ではすでに名手なのだとわかった。たぶん僕より上手い。しかし僕はこの写真をうっきーの作品だと言わなかった。つまり、『モデルの世界』だと言った。※他の撮影会のことを書くのは嫌だから詳細は省く。

 僕の塾では、写真家になることを教えている。僕とて写真家として未熟だから、写真家になって欲しいと願って指導させて頂いている、というのが正しいかもしれない。写真の上達も大事だが、撮った写真が『カメラマンの世界』であるかどうかの方がもっと重大であると言っている。塾生の写真を観ると、カメラマンの世界を撮ろうともがいている人は数人いるが『カメラマンの世界』を撮っている人はいない。

 僕は写真に僕の心の中にある邪悪な世界が忍び込み半ば僕の分身になりつつあるものしか作品だと認めたくない。

            ★


□質問などありましたらコメントしてね。





2012-12-18 : 写真塾 : コメント : 0 :

『冬のレイ』・・・作品




2012.12.7 model*かおり

             ⁑

 角度の低い陽射しがイチョウ林の奥まで入り込み、一面の黄色い落葉を美しく照らしている。故郷の小学校の校庭のイチョウの大木はまだあるだろうか、と思った。

             ⁑

 僕はかおりの乙女的な容姿と乙女的な心に興味がある。ごく小声で話すかおりだが芯はとてもつよい。今時の乙女は頑固でなければ務まらないのだ。かおりは歯の矯正をしていた。微笑んだときに矯正器具がきらりと光った。僕は歯の矯正器具を着けている女の子に興味がある。それは、束縛された女の子に関心があるのであって、その器具は矯正以外の目的にすり替えて考えている。

 かおりはフラダンスを習い始めた。清楚なワンピースを着たかおりはイチョウの落葉の上に少女のように座り、フラ用の花飾りのレイポウを頭に置き首にレイを下げポーズした。かおりは約束どおり白い下着を着けていた。

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             ⁑
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2012-12-15 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :

『赤いカーネーション』・・・作品




2012.11.28 model*たま子

            ‡

 「明日は白い下着でお願いします」と昨夜のメールに書いた。待ち合せ場所に来たたま子に、何色の花がいい?と尋ねると、たま子は赤い花を選んだ。迷わず「赤」と言ったたま子の言葉を聞いたとき僕は内心はっとした。つまり、身に着けて来た白への対比をしたのではないかと想像したのだ。それとも、たま子は赤いカーネーションの花言葉がおおよそ「愛」であることを知っていて、愛を持て余す今の自分の気持ちを素直に表現したにすぎないのかもしれない。

 寒い公園。とても寒い。たま子は赤いカーネーションをそっと自分の脇に置いた。赤いカーネーションは、たま子の血のようだった。

「さあ、始めましょう。僕のためにスカートを持ち上げてください」
「はい。わかりました」

 たま子は少し躊躇したあと静かにチェックのロングスカートを上げた。薄日さえない白昼。仄暗いスカートの奥に白いものが確かにあり、その白とたま子の脇に置かれたカーネーションの赤とが互いを引き合っているようだった。たま子は少しキレイになった。しかし、その理由はわからない。

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           ‡ ‡
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■モデルを募集しています。


2012-12-06 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :

『12時7分前』 ・・・作品




2012.11.27 model*華奈


            ⌘

 華奈に会うのは八ヶ月ぶり。前回会ったのは寒い春の日だった。目覚まし時計を早春の雑木林に埋める華奈を撮った。今日も華奈はあの時と同じ目覚まし時計を持っている。しかも、時計はあの日と同じ時間を指している。すなわち時計は止まっている。

「その時計の時間を読んでみてくれない」
「12時7分前かな」

  華奈の第一印象は、ボーイッシュで美しい瞳を持った妖精のような女の子というものだった。華奈を見つけた時、宝物を見つけたような気分だった。今日の撮影は妖精のパンチラということになる。最初は、もっとスカートを上げて、もっと足を開いて、などと指示を怠らなかったが、次第にそのこと忘れてしまっていた。理由は、ファインダーを覗くうちに、こんな不思議な子はいないなあ、という感動が僕の心を支配していったからである。

            ⌘



□タイトルを変更しました。

2012-12-03 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :

『メランコリックな帰り道』・・・撮影報告

2012.12.2 model*りん

            ☆

 りんという女には美しさと静けさがある。感情を打ち消すもう一つの感情を持っている。その落着きは清楚な外見と相まって彼女を現在よりかなり古い時代の女のように見せている。

 りんの部屋を訪ねるのは二度目だが、この朝この路地を歩いている時に湧き出たうぶな心は、少年時代冬の夕暮れ時に家の用事で商店街のはずれの同級生の女の子の家に向かう時の気分に似ていた。もしかしたら、それは季節がいずれも冬だった、というだけのことかもしれないし、何か重大な意味を含んでいるのかもしれない。

 りんの部屋に入った。部屋には二方向に窓があるが、あいにく陽射しの当たる時間は終わっていたから、仕方なくシャッター速度を1/30にセットした。

 りんは床に座り品の良いワインレッドのフレアスカートの裾を上げて約束どおり下着を見せた。しかし、淑女のパンチラで僕は癒される事はなく、むしろその逆であるように思えた。

 りんを撮影した帰り道はメランコリックな気分だった。何かが鬱積していた。この女への愛か憎悪か、そのいずれでもない何かのせいなのか、それさえわからない。

            ☆

            ☆



□この作品をご覧になりたい方は拍手をお願いします。



2012-12-02 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :
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プロフィール

ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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