『中3少女の夏』・・・撮影報告



2013.8.29 model*樹奈

 中3の夏は進路も決まらずやる気のない暗い夏でした。地元の高校へ進学しても、中学時代に育てたダメな自分を持ち越し増幅させるのが目に見えていましたから、思い切って隣町の高校へ進学することにしました。2学期の初め、校庭で担任に呼び止められ頂いた悲しい言葉を40年たった今もはっきり憶えています。

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 樹奈は中学3年生です。樹奈は無口で静かで、今時の女の子と少し違っています。会ってから20分ぐらいの間、僕の話しかけに対してほとんど「はい」としか返事をしていません。

「君、無口だね」
「あ、はい」
「中3だね、今はどう?」
「あ、いそがしいです」

 樹奈をファインダーに入れてみると草食動物のような眼をしていました。穏やかだけど意思がありました。空に春先にたびたび見かけるアニメの背景に描かれるような輪郭のぼやけた楕円形の雲がありました。その雲は、樹奈の心のように意思をぐっと内側に閉じ込めているような感じがしました。

「溜め込んだもの、いつかそれを出す時が来るよ」
「・・・」
「僕も今やっとだけど、そうしているよ」
「・・・」
「でも、40年かかった。わかる?」
「はい」
「君、将来やりたい事が決まっているの?」
「はい」


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2013-08-30 : 26th個展へ : コメント : 0 :

残暑お見舞い申し上げます

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今年の夏は暑かったですね。
まだまだ残暑はつづきそうですが、
お身体を大切に。




2013-08-24 : 未分類 : コメント : 0 :

『セル画の夏』・・・作品

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2013.8.19 model*優花

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 夏が僕を癒してくれることなどない。うらを返せば夏が好きで仕方ないということかもしれない。それは、恋をすれば癒しより苦しみの方が大きいこと感じることと遠回しに似ている。

 酷暑の小道を歩いていると、水の少なくなった小川へと落ちる土手に白い花の群生があった。「あっ、あの花は星の型をしている」と、はしゃぐでもない静かな口調で優花が感動を語った。この口調には、大切なものは内面にとどめていた方が良いとするような、乙女が宝物をそっと隠し持つような心が見え隠れしていた。

 ふと、優花の手を見ると、細部は省略され全体的に簡素化されていて、まるでアニメに出て来る主人公の少女の手と同じだった。海色のワンピースを着たスレンダーな優花を大木の下に立たせると、木漏れ日が小麦色に焼けた肌をちらちら揺らし、さも私は純粋ですと言わんばかりの眼をキラリと光らせた。そこへ南風が強めに吹き、手入れの良いしなやかな髪をサラリとなびかせたときの彼女の立ち姿は絵のようだった。別々の透明なシートに描かれた優花と夏を重ね合わせたような光景は、無骨な男の胸にさえジブリ的な感動を湧かせるのだった。

「今この瞬間、夏がとてもいいと思う」
「はい、わたしもそうです」

 僕はまさにこの瞬間、清々しい気持ちで磨りガラスに映ったセル画のような夏を撮った。

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□個展では別カットを展示する可能性があります。。





2013-08-23 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『夏の口実』・・・作品




2013.8.9 model*祥子


 祥子は小柄で無口で小動物系の愛らしい女の子だが、リスや子ウサギのように幼い子供が好むようないたい気なペットという感じではない。時折見せる眼には野生があって、内側に何らかの本性を秘めていることを物語っている。外見は普通の女の子かもしれないが特別な魅力がある。その魅力に気づいている者は誰ひとりといないらしく、本人さえもわかっていない。ただひとり彼女の難解な魅力に気づいた男、それは僕である。

 祥子と初めて会ったのは、昨年の五月に開催したグループ展の会場だった。その後、メールのやり取りをしたが、三度目に送ったメールを最後に不通となってしまった。二十年スカウトをしていれば、あらゆる手段を使って消え去るのが生の女だとわかっているから驚きはなかった。その祥子が七月に開催した個展で再び僕の前に現れたのだった。僕は彼女とメールを再開し、ついに撮影することになった。

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 酷く暑い。蝉の鳴き声がほぼすべての空間を埋め尽くし、わずかに残った隙間のところどころに不快という文字が陽炎のように揺れている。今日の僕は、祥子に対してある思惑があり、それをいつ伝えるのかが問題であったが、この不快な気候が多少なりともその告白のじゃまをしているのは間違いない。

 久しぶりに雑木林に来てみると、白雲木の樹が黒い実をたわわにつけていた。その下にゴザを敷いて薄いグレーのワンピースを着た祥子を座らせた。大きく開いた胸元から左肩を出すように言うと黙ってそれに従った。ファインダーを覗くと野性的な祥子がそこにいた。

「君に伝えたいことがある、お願いがあると言うべきなのだろうか」
「どういったことでしょう?」
「あの、君の・・・を見たい」
「・・・」

 猛暑の夏に祥子の魅力を知ってしまった。再び会わなければならないという思いが楽しくもあり僅かではあるが苦みもある。夏の間に何かしらつづきがあるのか、それとも秋にずれこむか、いっそこれっきりになるのか、いずれにしても撮影が再会の口実になることは確かだ。

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□次回個展では別カットを展示する予定です。。



2013-08-22 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『日本カメラ』に掲載されています。。


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日本カメラ9月号(8/20発売)「NUDE大全集」(108P〜109P)に魚返一真の記事と作品が掲載されています。よろしければご一読ください。ただし、掲載作品は5年前に撮影した『鉄道と彼女と僕』からの引用が多く、今年の個展『告白』の内容とは少し味が違っています。







2013-08-20 : コラム : コメント : 0 :

『写真は哲学か、それとも精神世界か』


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 個展が終わって2週間がたった。今日、会場で投函してもらったアンケート用紙を読ませていただいた。僕の写真が来場者の心に届いたと実感した。その中に「やはり精神世界でしょうか」と書いた人がいた。これを読んだ時、深く安堵した。写真を撮る日々の苦しみを理解してくれる人がいる、それがわかったからだ。
 写真には哲学が必要だ、と言う人がいる。僕もそうだろうと、おぼろげに肯定はしていたが、僕の写真には哲学という言葉が何となく馴染まなかった。精神世界、そうかも知れないと思う。今、言い当てられた歓びに浸っている。

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 終戦記念日。僕は朝から故郷での8月15日のことを振返っている。九州とはいえ山間部の小学校は夏休みが一週間程度短く、お盆が終わるともう夏も終わり、という物悲しさに心がどんどん沈んで行く。
 田舎の夜は漆黒だった。見上げた空には天の川。裸電球の明かりに誘われて昆虫たちといっしょに神社へ行くと、境内では神楽の舞。少年の僕は神楽が怖かった。その厳かな恐怖は夏の終わりに僕を待つ断崖絶壁の恐怖を意味していた。その時僕は、夏が終わるまでにすべてから逃げ出したいと思った。
 そして、僕は今もずっと逃げつづけている。結局のところ、何からも逃げられていない。

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女に語りかける
逃げた男は巧妙な嘘に酔う
少年になる
逃げた男を健気に見せるために
女を撮る
逃げつづけた男の終着駅

哲学というならそれもよし
それは、大人を拒む男の精神世界でしょうか




□こんな僕ですが、塾生を募集しています。・・・



                        2013.8.15 妄想写真家・魚返一真




2013-08-15 : コラム : コメント : 0 :

『魚返一真・写真塾』〜塾生募集


◎新塾生を募集します。

 第3回魚返一真写真塾グループ展『ALL GIRL.3』は7月28日に無事終了しました。さっそく8月4日に写真塾を再開し、来年開催する第4回グループ展に向け再スタートを切ったところです。

 来年のグループ展参加を視野に入れますと、お早めに入塾されることが望ましいです。もちろん、グループ展に不参加でも入塾できます。初心者大歓迎。

 塾では女性ポートレートをマンツーマンで撮影して、実践で技術を学んで頂くほか、せんえつながらマナーや肖像権に対する考え方など、写真家としての心構えも話させて頂いております。写真塾は皆さんが個展を開くための準備段階としての役割もあると考えています。


□まずメールでお尋ねください⇒こちら




2013-08-11 : 写真塾 : コメント : 0 :

『初恋の夏』・・・作品





2013.8.5 model*羽菜

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 羽菜と再会し郊外へやってきた。夏の陽射しが照りつける猛暑の道を歩いているとき、僕はまるで我慢会にいやいや参加させられているような気分だった。しかし、小道の両側に生えた雑草は茎がつんと立ってむしろ嬉しそうだったし、僕の横を歩く羽菜は白い日傘が似合って涼しげだった。日陰にさしかかったとき南風が僕の汗ばんだ頭髪の間を愛撫して行った。その瞬間、やっと夏も悪くないと思った。

 羽菜が着ているピンクの半袖ワンピースが夏の暑さを打ち消すように爽やかだった。そして緑の中でとても目立っていた。樹々や夏草、虫たちに向かって「わたしはここにいます」と知らせるための色なのかもしれない。

「ホオズキで遊んだことがある?」
「はい、口の中で膨らませ音を立てるんです」
 僕は羽菜の口元を凝視し、柔らかそうな唇を横しまな気持ちを悟られないように丁寧に褒めた。

 樹々の間に立ち、家の花瓶から拝借し大切に持ってきたホオズキ一個を、幼女のような愛くるしい掌に載せると、たちまち羽菜はむかし僕の夏を独り占めした少女と重なった。羽菜にスカートの裾を上げるように告げた瞬間に、少年時代の僕も初恋の少女に対して同じ要求をしたかった、ということが今さら明るみに出て僕を驚かせた。ファインダーの中を覗くと潔癖な女の子にだけ宿る上品なエロスが羽菜の白い肌の上に浮き出ていた。
 僕は静かにシャッターを押した。

「君に会えてよかった」
「たぶん、わたしも」

 僕たちの祭は終わった。そして今、羽菜の初恋のことを聞かなかったことを強く後悔している。


                ﹆

二人だけの宴が終わった
撮る人は夏の哀しみを携え
妖精はホオズキを掌に載せている
もう祭りのあとのさみしさに覆われている
つまり、今日羽菜の夏を撮りました





□26th個展では別カットを展示する可能性があります。。





2013-08-09 : 26th個展へ : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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