『コスモスは咲いていますか』



2009.10 model*明日菜

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 コスモスは咲いていますか。

 僕が子供の頃、もう50年も前のことですが、農家の家の回りに咲いていたコスモスは濃い黄色でした。その黄色いコスモスは、毎年秋になると東京郊外にある公園の駐車場の脇にたくさん咲きますから、今年も咲いているのを見ました。しかし、近年は桃色や薄桃色のコスモスが群生する場所があらゆる場所にできました。

 その後、桃色や薄桃色のコスモスはさっぱり見なくなりました。その代わりに赤い彼岸花があちらこちらで咲くようになりました。彼岸花は山里に重苦しく咲く運命を背負っているからこそ尊いはず。何だか少し残念な気持ちになります。つまり、コスモスも彼岸花も誰かが種を蒔いているということでしょうか。


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□コスモスや彼岸花の印象、それは僕のまわりでのことだけかもしれません。
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2013-10-30 : コラム : コメント : 0 :

『麻里子の棲むノスタルジア』・・・作品


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2013.10.22 model*麻里子

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 麻里子と会った瞬間に懐かしい気分になった。僕の青春時代のあちこちに確かに麻里子がいていつも美しく微笑んでいたように思う。麻里子は、誰の青春時代にもいた感じの良い子、古い青春映画のヒロインに例えるなら本間千代子か尾崎奈々みたいな。
 ある老齢な作曲家がニューヨークの街で奇麗なお嬢さんを見た時「悲しい」と言ったエピソードを思い出した。「あんなに美しいお嬢さんがいても、私はもう恋さえできないんだよ」と彼はつづけた。今、麻里子を前にした僕もそんな心境だった。

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 麻里子は家から真っ赤なリンゴを、僕はアイスピックを持ってきた。色白の麻里子は当然だが手も白い。僕はその手のひらにぬるぬるした赤い血のような液体をたらしアイスピックを握らせると、次の瞬間に麻里子は真っ赤なリンゴにアイスピックを刺した。僕は「美しい!」と声をあげたけれど、真意はそこにはなかった気がする。麻里子への暴力的な欲望を悟られないためのとっさの賞賛だったかもしれない。

 手を赤く汚した麻里子は、イヤリングを着けて欲しいと僕に言った。僕は麻里子のバッグから大きめの石をはめ込んだイヤリングを見つけ出し彼女の白い耳たぶに着けようと手を差し伸べた瞬間に手の甲が麻里子の頬に触れた。至近距離で見た麻里子の瞳の美しさと滑らかな皮膚の感触が僕の記憶に刻まれた。麻里子はいま僕の前に確かにいるが、ある瞬間に手の届かないところに行ってしまうだろう。彼女の持つ普遍的な美しさをそっとしておくほど世の中は緩くはないと思うからだ。


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2013-10-27 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『北の妖精』・・・撮影報告

2013.10.20 model*yuki

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 yukiは淡い色合いのフェアリーなテイストの服を好む十五才ぐらいの女の子である。肌は雪のように白くあわや身体の中までも見透かせるのではと思うほど透明な皮膚をしている。ベリーロングの黒髪をこけしカットにしているのは北の妖精であるyukiにとっては必然だろう。小さなゴールドクロスが着いたチョーカーで拘束された首筋はまだ幼気で、薄いピンク色の唇は世界一ピュアなものの一つに例えても差し支えない。さらに、はつらつとした身体つき、限りなく澄んだ黒く大きな瞳・・・。
 
 yukiはわざわざ北からやってきた。やはりyukiは全身真っ白なフェアリーだった。なのに今日は朝から雨が降っている。仕方なく盲腸線に乗ると二つ目の駅で僕たちを残してみんな降りてしまった。


 
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□この作品は後日公開します。
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2013-10-20 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『凛として』・・・作品



2013.10.16 model*ようこ

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 ようこの眼を見た時とても緊張したのは、中一ころ放課後に校舎の裏手で悪戯の作戦会議をしていた僕たちの背後から忍び寄り、「あんたたち何事かたくらんじょるね」と言った学級委員の女の子の凛とした眼と同じだったからだ。そして、そういう女の子は悪ガキ連中のマドンナになる資格があった。

 台風一過の秋の午後、僕とようこは温いオレンジジュースを霧吹きしたような色の陽射しを浴びながら郊外を歩いていた。道のあちこちにできた水たまりを避けながら歩くのが邪魔っけだった。それ以上に悩ましかったのは、僕の心の中にあるエロスへのアプローチが、ようこによってその芽を摘み取られていることだった。彼女にそんな気は毛頭ないのかもしれないが、凛とした眼差しを前にした時に、何よりも彼女に嫌われることを恐れる少年の習性というものが、いまさらの年齢である僕の心に湧いてきて、僕がこれから言おうとしていることの大部分を失ってしまったのだ。

 ようこに包帯を渡し、昔ケガをしたことのある右足の中指に巻くように言った。余った包帯のところどころに赤い液体で色をつけた。それは、血であり少女ようこへのドラキュラ的ニュアンスへのほんの導入のつもりだったが、不意に赤い液体はようこの細い脚に付着し白い肌の一部を赤く染めた。ようこはわざと自分の肌に赤い液体を着けたに違いない。ようこは何事にも用意周到にできる、例えば僕が今日の撮影直前にメールで伝えた要望にも完璧以上に応えていた。つまり、ようこには状況を見通せる賢さがある。こうしてようこは僕が望むエロスを許容した、と僕は解釈した。

 ファインダーを覗くと、強めに吹く風に立ち向かうようこの顔は凛として気品があった。撮影が終わると僕たちは握手をして別れた。願わくば、もう一度ようこを撮りたい。今度はもっと率直にエロスを伝えたいと思う。しかし、ようこの凛とした眼差しは、やはりそれを許さないだろう。


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2013-10-20 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『エプロン』

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2009.5.19 model*ミッチ

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 初夏だった。太陽は厚い雲に隠されて薄日さえなく、お陽様の下でジュースショップを開店する歓びを二人で分かち合うことはできなかった。ミッチは突然声を出して泣きだした。理由はお陽様が出ていないこと、それ以外に何があるだろう、と僕は思った。

「ごめんね、ミッチ、太陽がいないのは僕のせいじゃない」
「そんな理由じゃないよ」と相変わらずふさぎこんだままのミッチ。
「じゃあ、どうしたの」
「おじちゃん、本当にわからないの?」あきれ顔で見上げるミッチ。
「ああ、わからない」
「だってね、わたし、エプロンを忘れたの・・・」

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□この作品は未発表作です。
□続編を撮影することになりました。

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2013-10-17 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『風とリードの奏』




2013.10.13

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 爽やかな秋の気配が始まった郊外の公園の穏やかさは、都会のありとあらゆる苦しみを和らげて、考えうるすべての平和を助長し、この場所にいる誰もが限定的幸福に浸るに足りていた。そして、その温さがあまのじゃくな僕の心を逆なでしていた。

 大きなイチョウの樹の下に立つ僕の位置から丘へ向かって吹き登っていく風は、編み物をする母のように穏やかに公園を包みこみ、やがてその丘の頂点にある朽ちた切株の脇に立っている少女の髪をさっと梳かしていった。

 少女は何かを始める準備をしているようだった。僕が草むらを歩いて少女に近づいて行き顔の輪郭がわかるほどになった瞬間、少女がとても愛らしいことに気づいた。

「こんにちは。これから何をするの?」
「はい、サクソホンの練習をします」と言うと、縦長のケースからリードを取り出してプーと吹いた。

 少女が吹いたリードの牧歌的な音は爽やかな風にのり周囲の草や樹々、小川や鉄道の土手へと鳴り響いた。僕はある紳士が「お使いなさい」と貸してくれた古いローライコードのシャッターを静かに押した。そして、もう一度この少女に会いたいと思った。


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2013-10-13 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『下流で生まれた少女』

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 僕が生まれた小さな町は九州一の大河・筑後川の上流玖珠川のほとりにひっそりとあって、川はさらに上流へさかのぼれば九重連山の源流へとつづいている。僕が玖珠川の土手に立つとき、東には煙たつ硫黄山が行く手を阻み、西へ流れる川はやがて切り立った峡谷へと落ちて行く。少年の僕はこの閉塞した故郷を離れることは難しいと感じていた。

 しかし、僕はいずれ川を下るだろう。そして東京へ向かうだろう。そこで僕を待っている人がいるのではないか、そんなことを考えたことが一度ならずとあったのを憶えている。

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 ようこと会ったのは僕の個展の会場だった。ほんの短い時間だったし、僕の作品を好きだと言ってくれた言葉を拡大解釈しただけなのかもしれないけれど、僕は彼女とどこか馴染んだというか、近しいものを感じていた。
 そして2ヶ月たち、昨日になってようこが筑後川のほとりで育った女の子だと知った。僕が筑後川の上流である玖珠川の土手で抱いた妄想を下流で育ったようこをモデルに撮りたいという想いの根底には、少年時代に授かった生まれたてのエロスへのノスタルジーがある。


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2013-10-04 : 26th個展へ : コメント : 0 :

『エロスへの曳航』・・・1968年4月の思い出

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 僕はいつのまにか穴の虜になった。まるで股間にできたたちの悪い皮膚病のように四六時中その穴のことが気になって仕方がなかった。その穴とは、教室の床の木板にあった節が抜け落ちてできた指の爪ぐらいの大きさの穴だった。その穴の真下へは教室の外のコンクリートの基礎部分から床下へ入り、中腰の姿勢で右に左に折れると辿り着くことができた。

 穴から見た世界は、実際のその場所とはまったく違った。穴から見上げるという不自由さのせいからか、空間全体に悪の香が漂い魔界のようだった。いつも僕が過ごしている教室にはどうしても見えなかった。

 その穴は、教室の黒板を背にして左側にあって、ちょうど一番前の席の廊下側から二番目の机の真下にあった。そして、そこは女子バレー部のキャプテンの席だった。

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□1968年4月、僕は中学へ進学したばかりで心の中にエロスが確実に育った時期でした。つづきを知りたい方は拍手をお願いします。





2013-10-02 : 『妄想少年ものがたり』 : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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