『枯葉』


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2014.12.7 model*神林あゆみ

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 陽射しはあるものの冬はすでに部分的に到来している。例えば落葉した木立をやすやすとすり抜ける北風や、あんなに五月蝿かった虫たちが地上から消えてしまったことが冬の到来を予告している。僕の心も少しかじかんで、今は何を見ても冷たく感じてしまう。ふと浮かぶ曲は『枯葉』である。しかし、イヴ・モンタンのムーディーですすり泣く『枯葉』ではなく、ポートレートインジャズのA面の冒頭の『枯葉』でなければならない。あのスコット・ラファロの息苦しく孤独なベースラインが僕を殺伐とした冬へと誘っていくのだ。

 おそらく、あゆみは枯葉をもう何百回も唄ったに違いない。洒落た店で裕福な男たちの視線にさらされながら、ある時はシャンソン風に、そしてまたジャージーに、セクシーに身体をよじりながら唄い、あゆみが主役を演じる晩秋のエロチックなワンシーンを男たちに瞑想させるのだ。しかし、そんな華やかな場所に居合わせることのできない僕は、その疎外感と嫉妬の中でファインダーの中のあゆみをまさぐるしかない。
 ありきたりの撮影のあと、僕は肌や股間をさらすあゆみの全身を容赦なく冬のきざしが犯すのを目撃したのだった。


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2014-12-28 : 27th個展へ向けて : コメント : 0 :

『僕の中のマニアック』





2014.12.3 model*Gemma

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 誰しも他人には容易に受け入れてもらえない趣向というものが幾つかある。それは理解されないからといってやすやすと止めてしまえるような表面上の好みではなく、例えばその趣向を止めようと心に決めても禁酒禁煙よりはるかに難しく、もはや己の一部と化してしまった船底のフジツボのようなものである。
 僕の場合、趣向のひとつが鉄道である。詳しく言えば貨物操車場の入れ替え業務である。なぜそんなマニアックな趣向が僕の心の中に棲み着いたのかと言えば、少年時代に遊んだ貨物操車場ごっこが原因で、その遊びには永遠に終わりがなく、ついに小学校の授業中も心の中に妄想操車場が現れるのであった。僕は国鉄職員になり貨物列車のある車両の手すりに捕まって赤と緑の旗を降り蒸気機関車の運転士に数種類の合図を送っている。大事なところは急ブレーキによりあらかじめロックを解かれた連結器が外れ貨車はポイントを通過し所定の場所に仕分けされるところである。操車場をご存知の方ならその様子は容易に理解できるはずだが、その他の方にはわかりにくい妄想だと思う。
 そして、夢の中でそれら幾つかの趣向にエロスが絡みつくことがあった。誰にも説明のつかない息苦しい妄想であった。操車場の他には川釣りにも僕だけの趣向があった。そしてどちらにもエロスが棲み着いていたのだ。

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 すこぶる端正で無垢な娘と武蔵野を歩く。僕は小脇に折り畳み椅子を抱えている。これからこの娘に強いる儀式はまだ観ぬ映画ニンフォマニアックの断片の僕なりの想像の産物である。娘は草むらに折り畳み椅子を置いて座り、操車場で国鉄職員が使う赤い旗を頭上にかざし緑の旗の持ち手の部分を股間にあてて意味深なポーズをとっている。

 この作品が訴えるものは何もない。ただ、僕の中の趣向に絡み付いたエロスを撮って作品にし、たとえ僅かでも自分を慰めたいだけである。

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2014-12-14 : 27th個展へ向けて : コメント : 0 :

『棺に君を保存する時』




2014.12.3 model*Gemma

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 何種類もの色づいた枯葉で埋め尽くされた青々とした越年草の華やかな一画はまるで天然の棺のようで、その顔立ちのすこぶる端正な娘の少女のような無垢な身体がそこに横たわった。娘を俯瞰して眺めると冬の正午のやや黄ばんだ低い陽射しに照らされた棺の中の娘は厳かで、僕は天然の棺の中に娘を閉じ込めて保存している気分だった。

 そこへ若者がやって来たとしたら、娘を見つけると傍にひざまずき片手でお下げ髪の頭を地面に押し付けてそっとキスをするに違いない。さらに若者は娘が保身用に着用しているブルマを脱がせるだろう。その次の妄想を続けようとしたとき、僕の耳にマタイ受難曲の中の美しいアルトのアリアがバイオリンのカウンターメロディーとともに聴こえてきたのだった。


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2014-12-14 : 27th個展へ向けて : コメント : 0 :

『冬の華』





2014.11.20 model*リス+

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 どんな写真を撮るのか、おおよそ考えていても、だいたいの場合は少し違ったものになる。例えば、自分が望む方向に行くことを「良」とすれば、望まぬような意表をついてくるものは「悪」と仮定する。最近の僕は「良」と「悪」の間を行ったり来たり何となく翻弄されているが、それも一種の悦びなんだろうか。
 僕は長いあいだ悪に興味がなかった。ボードレールを読んでもどこか僕とは別の世界だと思っていた。もしかしたら、悪と寄り添っていたかも知れないけれど、これほど真正面から悪に出会ったことはなかった、というのが正しいかもしれない。しかし、本当のところはわからない。

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 正午すこし前のどんより曇った武蔵野はすでに冬の気配が漂い、いまにも雨が降り出しそうだった。少女らしさを失わないリスと優しいお姉様の真由美が僕の前に座っている。これから僕はふたりの絡みを撮るのだろう。これは美しきエロスです、などと言いながら僕はリスに胸を見せるように告げ、真由美に脚を開くように言う。そして再びリスに下着を脱ぐように要求する。
 しかし、そこには以前にはなかった感覚がある。僕の中に悪が棲み着こうとしているのだ。さて、撮影したものは今のところ愛ある写真の範疇に納まっているはずだが・・・


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□この作品は修正しています。個展では無修正または別カットを展示します。
□欧米で作品集が出版される場合はブログ上や個展で展示するものとは別のカットを収録します。




2014-12-07 : 27th個展へ向けて : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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