『思い出の娘』・・・撮影報告



2016.6.27 model*さくら

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 娘は遠くで花を摘んでいる。やがて戻ってきた彼女の手から摘んだ花束を受取って花の冠を作った。

「君、冠作ったことない?」
「ええ、ありません」
「僕は幼少の頃、シロツメグサやれんげ草やススキで冠を作るのが好きだったよ」と言うと娘は微笑ましそうに笑った。
「そこに立っていてくれればいいよ。ずっと見ていたいから」と僕は見ているだけでは満たされないものを感じながら言った。
「ええ、でも何か指示してくださらないと」と娘は僕に懇願するような眼で言った。
「では、そのワンピースのボタンを外してみてはいかがでしょう」
「はい、ではそうしてみます」

 僕の前に立った娘の姿は、こうして僕といることがずっとずっと昔のことであるかのように霞んでいた。この娘は現在とかけ離れた何かを持っていて、それが時として空間そのものを過去に変えてしまうのだろう。

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□この作品をご覧になりたい方は拍手をお願いします。
□この作品はカメラマン誌8月号(7/20発売)に掲載されます。



2016-06-29 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『オリビアの初夏』


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2016.5.5 model*Olivia

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 周囲は夏草が生い茂っている。虫だって湧いている。この場所に娘を連れて来れた事実は、彼女にとって特別な人間になれたような錯覚を僕に与えた。雑草の美しさは特別だ。地球上のすべてを緑で覆い尽くしてしまう。緑以外の色を持つ一輪の花さえ許さない。初夏の光、ひかり。草の一本、一葉、みんなばらばらに存在して、めいめい好きなように陽を浴びている。人のように同じような環境を持つ平等より、夏草のように全部がバラバラであることの平等がいい。

Oliviaよ!
遠慮することはない、あなたは美しくありなさい
いずれ美しいということが個性のひとつにすぎないことがわかる
Oliviaよ!
遠慮することはない、あなたは自由でありなさい
いずれ自由が重圧に感じるときがくる

すべては夢のあとにわかる
そんなときふと夏草のことを思い出してみて
そう、夏草って幸福なんだよ

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□もし個展で展示する場合は別カットを展示します。
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2016-06-29 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『罪な肢体』 ・・・撮影報告


2016.6.25*modelわかな

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 女は細く長い手足をしていた。瓜実顔の女の顔を見ていると自然に古(いにしえ)というものを想像してしまった。ふと美人幽霊画の掛け軸が僕の頭をよぎり、もしやこの女は幽霊ではと思った。はっと現実に戻れたのは、無風なのになぜか女の白いプリーツスカートが舞ったときエレガントな下着を着けていることがわかったからだ。「花を摘みなさい」と言って女に生け花用のハサミを渡すと、女はすっと僕のそばを離れ歩き去ってしまった。
 しばらくして女は野草の束を抱いて僕のいる薮の中に戻ってきた。そしてまた僕の前に静かに立った。女の肌はさっきよりもっと白くなって透けていた。「あなたには人とは思えないような美が備わっている」と女に言ったあと、僕の背筋に冷たいものが走った。

「どんな写真を撮りましょうか」
「おまかせいたします」

 それにしても何と美しい肢体だろう。美しいことを通り越していて、美的ではあるが、僕自身冷静に撮影できるのかと少し怖かった。

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2016-06-26 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『幸せの金魚鉢』



2016.6.20*reiko

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 女はマスクをしていた。それは一般に人々が常用している白いマスクではなく花柄のマスクだった。女は土手や河原に生えた野草と戯れているように見えたが、実は野草を摘んで金魚鉢に入れていたのだ。野草は金魚鉢というガラスの囲いの中で一息ついて幸福に見えた。

 女はブラウスを脱ぎブラを外し乳房に触れるように「幸せの金魚鉢」を抱いた。まるで幸福を独り占めするように。そして女はまた金魚鉢を覗き込んだ。

 どれほどの時間が経っただろうか、女は金魚鉢の中の野草にさようなら、と言って、土手の草むらの上に散骨するみたいに神妙に野草をばら蒔いてしまった。身内の死ほどに悲しみがあるかのごとく、そもそも摘んでしまったことを詫びるがごとくに。その時僕は女の心中に、小さな幸せはいらないわ、というような強がりな断片がどこかにあることを期待していた。
 
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2016-06-23 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『野草の供えもの』


2016.6.12*わかな

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 待合せ場所に現れたわかなは瓜実顔で肌は白く手足はとても細く長くてモジリアーニの絵の中の女みたいだった。わかなはもの静かだけど自分の考えをしっかり持っていて知的だった。僕たちはこれから何かを葬ることになっている。わかなは野原に生えた野草を自分で摘み、その束を葬りの儀式に供えるのだ。なぜ、こうなったかというと、わかなが儀式の似合う女だからだった。

「昔のことなの、私には葬りたいことがあるの」とわかなは静かに言った。
「それはどんなこと」と僕はわかなの眼を見ずに低いトーンで訊いてみた。
「私をとおりすぎた人たちのこと」と澄んだ声で答えた。
「わかった」と僕はいろいろ詮索したい気持ちを抑えこんだ。
 儀式が始まるとわかなは意味のわからない詩をよんだ。

この草花の腐ってゆくのを見る様な
私を棄てて腐ってゆくのを見る様な
空を旅してゆく鳥の・・・

 わかなの葬りたい過去というのは、この女の美しい身体がゆえに起きたことなのではないかと僕は思った。それほど、わかなの身体は美しい。

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2016-06-12 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『二つの個展開催決定』・・・お知らせ


28th魚返一真個展『つぐない/TSUGUNAI』(仮題)
2016.9.20(火)〜9/25(日)まで
場所〜アートコンプレックス・ギャラリー(ACT4)

6th魚返一真写真塾グループ展『ALL GIRL.6』の隣の会場で同時開催します。

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□29th魚返一真個展『妄想/MOSO』(仮題)
2017.3.3(金)〜3/20(祝・月)まで
場所〜神保町画廊

フランスで出版した”MOSO”を神保町画廊さんに取り扱って頂いたご縁で同画廊にて個展を開催して頂くことになりました。自らの手を離れて開催する初個展です。

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□"MOSO"の詳細は以下をご覧ください。
http://www.bekkoame.ne.jp/%7Ek-ogaeri/MOSO/MOSO.html

□被写体モデル募集中⇒⇒こちら


2016-06-11 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『漱石を頭上に』・・・撮影報告


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2016.5.20 risu

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少女を連れてまた薮の中。数日前に比べるとまた緑が濃くなった気がする。少女も二ヶ月前より愛らしくなったみたい。いったい何があったの。少女よ、セーラー服の上着を脱げますか。中間服のセーラーを脱いだら二つの白い健康的な乳房があらわに。わたし水泳部だったの。ああ、新緑の中で何という初々しい肌。少女よ、両手でそこにある文学全集を君の頭上にかざしてごらん。あ、これですか?そう、岩波の夏目漱石全集第四集、「それから」が入っているやつ。

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□この写真は個展で展示するカットではありません。
□もう1枚をFlickrにアップしています。(これも個展で展示するカットではありません)こちら⇒⇒Kazuma Ogaeri MOSO
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2016-06-11 : 28thに向けて : コメント : 0 :

『自分の為だけに生きること』・・・撮影報告


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2016.4.30 model*みな

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 娘が話す物語がはたして本当なのかはわからない。それが事実ではないにしても僕は娘の話をおもしろく聞いているし心がおどることさえある。もし、それがまったく根拠のない話だとしたら、人一倍疑り深い僕が素直に聞いていられただろうか。

 娘の身体はほぼ少女と言っても良いだろう。娘は清潔な育ちと高い教育を受けてブランド力の高い会社に勤めている。だからと言ってこの先キャリアウーマンみたいに一定の成果を得ることを目的としていないように見える。娘は自分の人生を自らの精神を癒すためだけに生きているのだ。当然、私生活において自分が望まないことは一切しないであろう。娘に近づく男たちは皆彼女の遊び道具でしかないだろう。これ以上この娘について語っても理解は得にくくむしろ誤解を招くだけだろう。ひと言つけ加えるなら、娘はいじらしく愛らしい。。

 娘と川に来ている。娘はこの場所にはまったく不釣り合いな清楚なワンピースを着ている。僕は茂みに娘を連れ込んだ。この茂みこそ僕がエロスを授かった故郷の川の畔へ誘う秘密の場所なのだ。ここで僕がしたことは誰もが考えうる悪戯である。つまり僕は凡人としての陳腐なプライドを持って写真を撮っている。

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□この作品は個展で展示するものとは限りません。
□もう1枚をFlickrにアップしています。こちら⇒⇒Kazuma Ogaeri MOSO
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2016-06-10 : 28thに向けて : コメント : 0 :

写真集『CINEMA GIRL/シネマガール』


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2001年に自費出版した『シネマガール』を飯沢耕太郎さんにお願いして恵比寿にある"写真集食堂めぐたま"に置いて頂きました。この写真集は街頭で声を掛けた女性をその場で撮影した作品がメインです。機材もハッセル+Plannar150mmが中心でコンタックスT2も使っています。機材など撮影データだけでなく撮影時のインプレッション付なのでその場の状況が良くわかりますし、勉強にもなります。(宣伝しすぎ??)

□僕にとってすごく大切な写真集です。もちろん傑作です。購入ご希望の方はこちらへどうぞ。。。こちら。

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"写真集食堂めぐたま"にはすでに『鉄道と彼女』『MOSO』の2冊があり『シネマガール』で三冊目となります。こちらは料理がとても美味しいです。ぶらっとお出かけになってください。お昼時を避けていらっしゃればゆっくりご覧になれます。
”写真集食堂めぐたま”⇒http://megutama.com/


2016-06-06 : 未分類 : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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