『羊でなくなる時』

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2017.4.26 model*莉菜

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 この娘に密かに備わった魅力は、この娘を探していた誰かにとって、この娘に恋しさを抱き始めた少年にとって、この娘をすでに忘れられなくなった男に対して、あたり前のようにその決断を迫る。冒険であるはずのその決断を雨上がりに出来た水たまりをひょいと飛び越えるぐらいの軽い選択だと錯覚させて、羊たちが持ち合わせていない勇気を出させる。娘の性格からして、恋に関して待ちの姿勢に違いないから、こっちの方から告白するしか手はない、と羊たちは思う。

 僕はこの娘に対して安らぎを感じている。それは何十回も通ったあの喫茶店で過ごした安らぎの時間を思い出す。そこは時が止まったままの喫茶店。その喫茶店には夥しい数の柱時計があるが、動いているのは四つだけで、残りの時計は全部止まっている。あたかも、多数決で時は止められるかのごとく。その喫茶店で珈琲を飲んでいる時、僕の目の前にじっと座っていてくれる愛しい女がいたとすれば、この娘はその女に近い。

 しかし、僕は娘に命令する。
「ブラウスのボタンを外しなさい。カーディガンを脱ぎなさい。その細く白い手首に手錠をかけよう。次は縄。わかるね・・・」
「はい」
「僕はもう羊ではないんだよ」
「・・・」



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2017-04-26 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『ジャンバー』

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2017.4.25 model*リス

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 久しぶりに会ったリスはTシャツとジーンズのショートパンツを身につけワルな感じのジャンバーを羽織っていた。去年の秋にリスと会った時は白いフレアスカートと青いセーター姿のお嬢だったから僕の驚きは相当なものだった。しかし、その数秒後には以前より可愛らしくなったことに気づいた。この子に何があったのだろうか。僕はもやもやを抱えたままリスを連れて電車に乗り川を目指した。

 撮影が始まると僕の中から暴力的な感情が湧いてくるのがわかった。女の服装によって自分に変わる余地がある。そんな若さが残っていたことにも驚いた。「リス、ジーンズ脱ぎなよ」と事もなげに言い放った。「うん」そのとき僕はリスの下半身から撮る事に決めていた。成り行きで撮影を進めて、乳房も撮り、最後は股間を鮮明に撮影した。僕がとっくに忘れてしまっていたストレートな写真を撮った。今の僕には難易度の高いそんな撮影がごく自然にできた。最初、リスの服装をみて僕は少し不本意だった。しかし、リスのジャンバーを着たいと強く思う本質が僕の中にストレートな感情を甦らせた。

 俺って、スゲェ写真を撮っちまったぜ!

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□この作品は個展で展示する作品ではありません。ブログの性質上抑制したものをアップしました。





2017-04-26 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『塾において』2017.4.23



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 今日の塾でのこと。僕は毎度ながら二人の新人参加者に身勝手な持論を語りました。塾が終わって皆でトイレへ行き三人並んで小便をしながら「今日僕が語ったことは全部嘘です」とトイレの外の春景色を眺めながら涼しい顔で言いました。すると年長の参加者は、「たとえ嘘だとしても勉強になることがいくつもあり、学ばせて頂きました」と真面目な口調で返して来たのだった。そして年少方の参加者の横顔をなにげなく見ると、軽くうなずいているような気がした。用を足して外を歩きながら年長の参加者が「昔の偉い人(孔子?)の弟子たちは師の嘘に気づくもその嘘が成り立つ論を考えたということです」と続けたのだった。

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□次回は4/30(日)に278回魚返一真写真塾を開催します。この気候の今こそ撮りだめして欲しいです。すでに良い作品ができているとしたら、もう一度同じものを撮ることを薦めします。




2017-04-23 : 写真塾 : コメント : 0 :

『フレンチ・サロン』

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2017.4.20 model*Olivia

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 たくさんの草花が僕たちを迎えてくれた。それらの植物に水をやっている女性が24年ぶりの再会となった玉恵ちゃん。あのころ彼女には多大なお世話になった。当時彼女のお部屋へエアサロンになっていてとてもお洒落だった。もちろん彼女は美人だったからサロンで彼女を撮ったのは言うまでもない。そればかりではない、玉恵ちゃんの友人をモデルとして次々に紹介してくれたのである。それもみんな飛び切り素敵な女の子ばかりだった。僕がスカウトした女の子をそのサロンで撮影させてもらったこともあった。何しろ、とても感謝している。

 あれから24年が経ったが、玉恵ちゃんは今も自宅でヘアサロンを開いているのだ。私鉄の駅から教えてもらった道順を歩くとすぐにヘアサロンが見えて来た。お店の前で植物に水をやっていた玉恵ちゃんがこちらの方へ振り向いた。
「わ〜、懐かしい」とふたりで同時に言った。
「この子、Oliviaです」

 中に入るとフランス風の洒落たお宅という感じ。どうやら玉恵ちゃんはフランスに居たらしい。まず美味しい珈琲を頂いた。そして懐かしい話をしばらくしてから撮影をした。大きな鏡のある素敵な空間だから、どこにカメラを向けてもファッション写真のような雰囲気になる。僕もヘルムート・ニュートンやリチャード・アヴェドン気取りよろしくサクサク撮り進めた。しかし、昔やっていた仕事ってこんなに安易だったっけ?今取り組んでいるエロチックな写真の方が嘘が通じない分難易度が高いな、と改めて思うのだった。

「玉恵ちゃん、いい女になったね〜」
「まったく巨匠はお上手なんだから。それにOliviaさん、とっても可愛らしい」
「Oliviaは玉恵ちゃんをどう思った?」
「本当に素敵な女性だと思いました」

 などとお互いに持ち上げながらさようなら。また行きたいな。珈琲美味しかったしな。家に帰ってフランソワ・ハーディの『さよならを教えて』を聴きながらこのブログを書いている。ちなみに今日使ったのは24年前に玉恵ちゃんを撮ったレンズで、すっと使い続けているプラナー50mm1.4だった。

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2017-04-20 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『ピクニック』



2017.4.19 model*エヴァ

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 エヴァはエキゾチックな美人で目立つから一緒に歩くのは少し恥ずかしいが、彼女と深い関係の男性なら誇らしいに違いない。つまり、誰がみてもかなり魅力的である。

 新緑がういういしく一年で最も美しいこの時期にエヴァを誘うと、彼女はワインや果物などを持って約束の場所に現れてさながらピクニックに行くみたいだった。今日の衣装は両肩と胸元を露にしたトロピカルな赤いワンピース。春の淡い緑色の若葉と完全にバッティングして刺激的だった。

 僕はエヴァの眩しい肢体を、この美しい自然の中で執拗に撮った。いい女である。しかしそれ以上の何かを僕は欲し初めていた。

「次の撮影ではハードルをあげよう」
「えっ?」
「本当のエヴァを撮るには甘いと思うんだ」
「どういうことですか?」
「君は美しい、だからと言って、美しいと唱えられただけの写真で良いのだろうか」
「わかりました」

 今、僕は次の撮影が楽しみでならない。

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2017-04-19 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『この季節だからこそ』


2017.4.17 model*栞和

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 栞和と微妙な季節を歩く。春だろうけれど初夏のような風と日射しがある。僕らの関係も季節同様に微妙で、どこまでも好きに撮らせてもらえるようでもあり、突然見えない壁が現れてその先は断られるかもしれない。今日は二度目の撮影なのだが、二人の間にはまだ少なからず緊張があって馴れ合いは感じられない。娘は一見まったく正直そのものである。しかし、娘のかけひきのない真面目さが所以にかえって心中を測れない。ノーサインで投げ込む投手の配球が読めないのと同じようなものだろうか。

 地面に咲くタンポポの脇に立ってスカートを上げるように言った。栞和はそれに従った。ピンク色の花を咲かせた灌木の脇にゴザを敷き、その上に座わらせて足を僅かに開いて太腿の奥を見せるように指示すると、栞和はそれにも従った。さらに雑草と添い寝してスカートを上げるように言うと、やはり従った。僕はどこまで大丈夫なんだろうという期待を持つことに疲れ始めていた。

 電車に乗った。横顔を見て栞和の心中を探ろうとしたが益々わからなくなった。終点まで行って川原を歩く。たった2週間で川辺まで辿り着けないほどに草の丈が高くなっていた。行けるところまで行き立ち止まると、栞和に胸を見せるように言った。すると栞和は素直に従った。次に下着を下げるように言うと、後ろを向いていて欲しいと言った。数十秒経って振り向くと、膝の上まで白い下着を下げていた。さらに、スカートをもっと上げてくれと注文すると、その通りにした。栞和の顔をまじまじと見た。美しい瞳と屈託のない笑顔。今この先の言葉を口にすべきなのか、やはり次の撮影機会を待つしかないと結論づけたのだった。

 これほどに正直で可愛らしい娘に対してエロチックな写真を撮れるなんて何と贅沢なことだろうと思うのだが、反面その悩ましさは半端なものではない。

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□この日撮った一連の作品をご覧になりたい方は拍手をお願いします。


2017-04-17 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『太腿の青白きに』


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2017.4.15 model*ひな

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 この娘の静かで少しぎこちない立ち振る舞いは容赦なく僕の心を刺激してくるのだった。僕はこの娘との出会いに運命的なものを感じざるを得なかった。娘に対して惹かれるものがあることは確かで、それは僕と娘が同じ何かを共有していることが一因だと想像している。

 娘と姫踊子草の群生地にやってきた。毎年この場所へやって来る。そして毎年群生地は少しずつ移動していて、今年は鉄道の築堤にやや近くなっていた。娘が着て来た青いギンガムチェックのミニのワンピースは僕がリクエストしたものでとても似合っていた。娘を姫踊子草の群生の中に寝転ばせるとワンピースの裾から華奢な太腿を青白く露出させた。僕は少し見とれたあと容赦ない気持ちを込めて両手首に手錠をかけた。確かにこの娘に対して愛のようなものが存在しているが、それを伝えたとしてもどうしようもないことは明白で、たとえ理解し合える瞬間があったとしても、それは誤解に違いない。

「スカートの裾をつかんでみて」
「・・・」娘は素直に従った。
 この娘は僕が今いちばん望んでいることを許してくれるだろうか、そんなことを考えながらフィルム一本撮り切った。

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□『香水電車』2017.4.15 model*ひな///も同日撮影しました。(文章は省く)
□この作品以外にもご覧になりたい方は拍手をお願いします。



2017-04-15 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『桜散る踏切』


2017.4.14 model*Olivia

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 満開の桜。美しいとは思うのですが、僕はやはり少年時代に家の二階の窓から北北西方向の山の上に見えた自衛隊の夥しい桜の樹を威圧的に感じたことを思い出すのです。僕の精神は毎年桜の季節に悩み、この町から逃げ出してローカル線を走るキハ07に乗って川の上流を目指すのです。その時の気持ちは朔太郎の『桜』に似ていると後年気づきました。

 桜が散り始めました。僕と娘は吹きだまりに溜った花びらを集めてレジ袋いっぱいに入れました。そう言えば去年も同じことをしました。そして、僕が大好きな踏切や川原に行って娘に花びらを散らすように言いました。ただそれだけです。僕は娘が桜の花びらを投げ散らす度にシャッターを押しました。袋に入れた花びらがなくなるまで何度も繰り返したのです。

 僕たちは誰もいない河川敷野球場の三塁側ベンチに並んで座りました。こうして僕は今年も桜の季節を何とか乗り切ることができました。

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2017-04-15 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

ImageNation Paris International Photo Expo 2017


今年も11月に開催される写真展"ImageNation Paris 2017"に招待される見通しです。
去年の魚返一真紹介サイトhttp://defactory.portfoliobox.me/kazuma-ogaeri

スクリーンショット(2017-04-12 8.59.04)
2017-04-12 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『胡桃電車』+『それは夢の中』2作品



<はじまり>

 予想もしなかった娘との再会がとても嬉しいのは言うまでもない。でも何だか息苦ささえ感じるのは、すでに娘に向かいはじめた特別な気持ちのせいなのか、それとも、いずれ執拗にエロスを求めてしまう自らを予見してのことなのか。いずれにしても、もう後戻りできないことだけは確かだ。

 娘、つまり栞和をひと言で表現するなら聡明な娘で、世間的な評価をすればこれほどの才媛は滅多にいない。しかし栞和にそれを鼻にかけるようなところは微塵もない。実際こんな娘に未だかつて会った事がない。小説やコミックの世界にかろうじて存在しているかもしれないのだが。
 日本的可愛らしさのある外見と、それ以上に質素な心を併せ持った娘とは、僕にとって理想でありずっと探し続けて来た存在だと言って過言でない。栞和への愛に限界があることに失望を感じるが、反対に文学的な意味合いにおいて希望がある。

 さあ、今日は栞和との数ヶ月に及ぶ旅(撮影)のはじめよう。

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『胡桃電車』栞和その1

2017.4.6 model*栞和

 栞和は白地に小さい花を散りばめた清楚なワンンピースを着ている。その衣装は僕のリクエストだった。僕は栞和に胡桃を十数個プレゼントし、そして電車に乗った。なぜ栞和が胡桃にこだわるのかは知らない。栞和は電車の座席にその胡桃をばら蒔いて、その中の数個を手のひらに載せた。僕は心臓が飛び出しそうなぐらいドキドキしながら栞和に合図する。その意味はスカートを上げて下着を見せなさい、という意味だ。そして、栞和はそのとおりにした。ファインダーの中の栞和は終止恥ずかしそうにしていたことが僕の心を打った。

「ありがとう、栞和!」
「こちらこそ、ありがとうございます」と言って、栞和は深く頭を下げて僕に向かって礼を言った。

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『それは夢の中』栞和その2

2017.4.6 model*栞和

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 フレンチスリーブのチェックのブラウスとフレアスカート姿の栞和は昭和の女子大生のコスチューム。僕たちは川原を歩いた。栞和は清純な笑顔を絶やさない。そんな彼女に僕は申し訳ない気持ちだった。何故なら、これから栞和に対して乳房を見せるように言わなければならないし、下着を下げてヘアを見せなさい、と言わなければならいのだから。僕がそれを栞和に伝えたとしたら、どうなるのか。誠実な娘だから、僕が言ったとおりに真面目な顔で応えるに違いないと思う反面、「わたし出来ません」と言って泣きながら僕の前から走り去るかもしれないとも思った。

 ついに僕はいつもの僕より真面目な口調で乳房を見せなさいと言った。栞和はそれに無言で応えた。次に下着を下げてヘアを見せなさいと続けると、やはり栞和はそれに無言で従ったのだった。強い南風が栞和の柔肌の乳房に吹き、処女のようなヘアを揺らした。それはまるで夢の中の出来事のようだった。

「ありがとう、栞和!また撮らせてくれる?」
「こちらこそ、また撮ってください」

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2017-04-07 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『Eva・エヴァに習えば』+『Evaは電車の中で爪を切る』


2017.4.5 modelEva

                   ﹆

 やや強めに風が吹いている。ただ以前と違うなと感じるのは風向きが南にかわったということ。あの娘、つまりエヴァがやって来ることと関係があるみたいに温かい風が強めに吹いてきた。エヴァのところめがけて南風が集まっているみたいだ。

 エヴァと出会ってからだいぶ経ったけど、僕はエヴァについて忘れられないことが幾つかある。頭の良さと美貌、そして画数の多い漢字をすらすら書けること。まだあった、かなり押しの強い風貌とは不釣り合いなほど良く躾けられた人柄、などである。つまり、男ならエヴァと歩きたいと思うし、女ならエヴァと昼下がりのカフェでお茶したいと思うはずだ。そしてエヴァは哀愁さえも持ち合わせている。エヴァに対するこの気持ちは何だろう。経験から恋の入口とかではないことは確かだ。何だかわからないけど、エヴァのことが気になるのだ。

 エヴァをつれて川へやってきた。南風に向かって立つエヴァを撮った。

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Evaその美しい胸元を
Evaその健康的な太腿を
さあ南に向けてくれないか
Eva君の哀愁に
Eva君の躾に
さあ手錠をさせてくれないか

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 ふと思い出せない漢字があったらエヴァを思い出す。もし辞書にもない漢字が出てきたらエヴァに習えばわかるはず。







□同時に『Evaは電車の中で爪を切る』も撮影しました。。
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2017-04-05 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『彷徨えば朔太郎』


2017.4.4 model*マリモ

 雪子と春の川原を歩いた。マリモも一緒だ。ロケハンを兼ねている。

 開花の遅れた桜を恨めしく思う。僕は世間で語られているように桜の花に特別な想いはない。しかし、散ったあとの絵も言えぬ新緑の季節に対して天国に例えてしまうほどの憧れを感じるし、その結果生きることの意味も明確になる。一年で最も大切な瞬間が来る前に桜の満開を通り過ぎなくてはならないということ。

「雪子ちゃん、僕はね、漱石の『こころ』についていろいろな考えがあってね。だけど、それはひとに語るためのものではなく自問自答するのが目的なんだ。お陰で、ある流行作家の『こころ』に関する一節に彼の本心が見え隠れしていることにも気づけるようになる。小説はたくさん読むより同じものを何度も読むといい」
「へ〜、、それで??」
「ずっと『こころ』のことを考えていたらやがて小説から詩へと向かう。それはごく自然にそうなるんだ」
「どんな詩?」
「ごく一般的に人気のある詩人のものかな・・・。それでねいろいろ詩の中を彷徨い歩く。最後に朔太郎のある詩にたどり着く」
「へえ〜」
「その後、一瞬だけどセザンヌのことが心に浮かぶんだよ」

 僕たちはいつもの川辺にたどり着いた。マリモは当然のように服を脱いでスク水姿になり白いスコートを履いた。僕はマリモにコンパクトカメラを貸し自撮りするように言った。ロングヘアの娘が水着の上にスコート履いて自撮りしているという、なんだかわからない光景を僕はひたすら撮った。



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2017-04-05 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『今日のわたしを写真にしてください』



2017.4.3 model*麻菜

 このところの花冷え。まだ桜が満開になれないでいる昼下がりに、ある国鉄の駅で麻菜と落ち合う。都電の小さな駅を右手に見ながら、江戸川の支流近くを通る広い道路をふたり並んで歩いた。

「ここへ来たのは四十年ぶりなんだ」
「そうなんですか!」

 これからそれなりに遠くにある彼女の家まで歩く。大通りを逸れて路地から路地へと歩く。やたらとY字路の多い古い通り。ジャージ姿の三人の女子中学生をコンパクトカメラでパチり。古い喫茶店の前を通り過ぎる時、ボクは懐かしさでいっぱいになった。あの頃と同じ風が麻菜の髪を揺らしながら通り過ぎていった。麻菜はボクの時代に確かに棲んでいた種類の娘だ。ああ、なんてことだ、ボクは四十年を失った。でも麻菜にはそんなことは伝わりっこない。アスファルトの道路の上に座り込んで傘の修理をしているお爺さんに、あのボクの四十年はどこにあるのでしょうか。と心の中で訊ねたのだった。ははは、じゃあ訊くが、ワシの七十年はどこへ行ったか知っとるかい?

 麻菜の家に着いた。小さな玄関を入り靴を脱いで彼女の部屋へ。ボクはとても疲れていた。持って来たチョコレートをたて続けに四粒口にいれてお茶をごくりと飲む。そしてベッドの上に麻菜を載せてあれこれ撮った。例えば麻菜の美しい胸の膨らみを撮りながら木の葉柄のカーテンを見ていたら、何だか寂しくなった。その寂しさはずっと昔からやって来た寂しさだった。

「ああ、ボクの四十年はどこにあるのだろう?」
「それはわからないけど、今日のわたしを写真にしてください。わたしを記録してください」
「わかった。ボクは麻菜の写真を撮りにきたんだから」
「・・・」


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2017-04-03 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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