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『リバーサイドの薔薇』

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2018.10.27 model*たま子

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 ついさっき晴れ渡った青い空が大地のすべてを美しく照らしている。そして色とりどりの薔薇の花が水面に漂っている。それらは娘の掌からこぼれ落ちたもので何だか儚い気持になる。僕が何百キロも離れた高原から持ち帰った薔薇の花びらと娘との間には何らかの関係があるみたいだ。

 いつものことだけど、娘とはほとんど言葉を交わすことはない。だからと言って気まずさはない。ただ互いにかかえているある苦しみだけが場の空気を埋めているのだ。

 事実、娘は美しい。僕が「美しい」と口にしても、軽い無視を表情のごく一部に見せるだけだ。ブラジャーからこぼれ出した娘の乳房はあまりにも眩しい。さらに下着を下げるように言うと、無言で従った。

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□作品は次回個展『妄想ガール・コレクション〜リバーサイド』にて公開予定。気に入った方は拍手を。
□この写真は展示作品ではありません。



2018-10-29 : 33th個展 : コメント : 0 :

『ヒペリカムな娘』


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2018.10.16 model*万里菜

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 電車の中で万里菜の左手に手錠をして、もう一方はドアの近くの金属の手すりに固定した。万里菜は嫌がるのではなく、その状態の自分を受入れたかに見えた。それは、僕たちの間には暗黙の了解があると信じていて、合い言葉は『ギリギリ妄想だけで、君と』だからなのか。カメラを向けると本当の万里菜はたぶんナイーブだけど、フレームの中では自らが演じるべきポーズと表情を瞬く間に完成させる才能の片鱗を見せた。

 万里菜は赤いベルベットのワンピースに緋色の靴を履いていた。これから荒れ果てた川に行くコスチュームではない。僕は花屋に立ち寄ろうと決めていた。そこで万里菜が赤い実をつけたヒペリカムを選んだのを見て、彼女が当たり障りのない答えを用意してくれる人ではないのだと思った。とにかく僕たちは赤い実をつけた不思議なヒペリカムを買ったのだが、それは今日をある意味で決定づけることになったと思う。つまり、今日は良くも悪くもヒペリカムな日で、決して逃れることはできないと。

 ぴかぴかの緋色の靴のまま万里菜は河川敷を歩いた。時には僕の前を枯れ草をかき分けて歩いた。川は数日前に比べてかなり水がひいていた。万里菜は川べりに立った。そして、片足を上げたポーズが妙に様になっていた。さらに緋色の靴と白いソックスを脱いで数歩だったけど川に入ったのである。僕はただ唖然としてシャッターを押し続けた。最後に同じ茎に白とピンクの花を咲かせている不思議なツル系の草の前でヒペリカムを持った万里菜を撮った。

 今日が終わろうとしている。僕はこの娘と別れるのが寂しかった。幻よ。醒めないで。僕の記憶の中で、万里菜はヒペリカムな娘として永遠に記録された。

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□作品は次回個展『妄想ガール・コレクション〜リバーサイド』にて公開予定。気に入った方は拍手を。
□この写真は展示作品ではありません。






2018-10-17 : 33th個展 : コメント : 0 :

『黒髪ロマン』

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2018.10.13 model*ひな

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 この世に存在するすべてのロリィタを嗜好する娘に言えるのだが「成長」、それはそれらの少女にとって望まざることなのだと、以前に撮った子から聞いたことがある。ひなに会った。かすかだったが大人の女性としての魅力をごく一部に漂わせていた。僕はそれをとても好ましく思い「少し大人の女性に成長したね」と褒めた。「そうですか?でも・・・」

 ひなの髪がとても美しかった。少女の髪そのものだった。そして、ひなが三つ編みを解くと、毛は真っ黒でその一本一本が絡み合うことなく見事にカールしていた。実際こんなに美しい髪を見たことがなかったから「美しい」と言ったあと絶句した。でも、今日の濃紺のクラシカルロリィタテイストのワンピースは髪を目立たなくしていると感じていた。だが待てよ、この紺色に抱かれた黒髪だからこそかすかな光り輝きがこちらに伝わっているのかもしれなかった。ああ、これこそ谷崎の言う陰翳礼賛の精神なのだと。。

 ひなは白い下着を下げて右足のくるぶしのあたりで留めた。スカートを開くと薄いヘアーに護られたとても小ぶりな花園があって、そこは限りなくロリィタだった。それは好ましかったけれど、その太腿の小女性が僕の心を打った。こんなに白く見えるのは、やはり濃紺とのコントラストのせいだった。

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□作品は次回個展『妄想ガール・コレクション〜リバーサイド』にて公開予定。気に入った方は拍手を。
□この写真は展示作品ではありません。





2018-10-14 : 33th個展 : コメント : 0 :

『陰翳礼賛 / いんえいらいさん』

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2018.10.09 model*詠子

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 僕のバックに1冊の文庫本が入っている。その本に書かれていることが今日の詠子に無関係ではないことに気づいてとても戸惑っていた。そもそも詠子はスカートを履いて来るはずだった。それは撮影場所が川で、詠子に川に入ってもらう約束だからだ。しかし、僕の前に現れた詠子は着物姿だった。

 僕がバックに入れて一ヶ月近く持ち歩いている本は、谷崎潤一郎の『陰翳礼賛/ いんえいらいさん』という随筆で友人から渡されたものである。そこに書かれている日本の古き時代の暗い明かりと美の関係が僕を刺激してやまないのである。美の中には当然だが着物が含まれている。今日の詠子を見て、瞬間的に日陰で暗めに撮ろうと考えたのは随筆の影響からだった。

 古めかしく艶やかな着物を着た詠子はこけし人形みたいだった。これを着て混んだ電車に乗って来てくれたことに感動すら憶えるのだった。だが、僕にすれば一緒に電車に乗るのが怖いのだった。今にも詠子が化けて僕を襲いかねないと感じたり、他人の視線が痛かったりで、僕の心は折れそうだった。

 荒れた河原を足袋に草履でこけし人形姿の詠子と歩いてやっと川べりへ辿り着いた。曇り空が陰翳を作っていた。そこで奇跡が起きた。詠子の太腿の美しさ、陰に立った詠子の美は、やや現代から逸脱して過去のことのようだったのだ。

「下着は着けてないよね?」
「はい」
「足を開いて見せてくれる?」
「はい」
「川に入れる?」
「はい」

 撮影が終わって、詠子は僕の様子を見て「お家にお帰りになられた方が良いのでは?」と言った。現代と過去の間を彷徨ったからだろうか、僕はとても疲れていた。


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□この作品は次回個展『妄想ガール・コレクション〜リバーサイド』にて公開予定です。
□この写真は展示作品ではありません。




2018-10-10 : 33th個展 : コメント : 0 :

『白い花のように』

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2018.10.8 model*麻衣子

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 メールに添付されていたいずれの写真にも麻衣子の魅力の欠片さえ写っていないことに驚いた。いや、ショックさえ感じていたのだ。そして麻衣子が実年齢より若く見えることが彼女の顔立ちが整っている証拠だった。

「君、写真より何倍も美しいんだね」
「そうでしょうか?」こんなやり取りを何度か繰り返した。そう、麻衣子は控えめな女性なのである。

 僕たちは荒れ果てた川辺にいた。僕は唖然としていたけれど、ノーメイクの麻衣子は穏やかな表情のままだった。僕は側に咲いていた白い花を鋏で切って麻衣子に渡した。僕は「ほんとうの君はこの花のように素敵なひとなんだよ」と言いたかったのだが、彼女に伝わるはずはなかった。せめてもと、リップクリームをひいてもらった。すると麻衣子の表情が見事に変化したのだった。ただそれだけのことで女の魅力が見る側からすれば劇的に変化することを本人は知らないのだ。

「麻衣子さん、清楚で素敵だね」
「そうでしょうか?」

 これからこの女は脱ぐのだと思うと、強い刺激が僕を襲ってきたのだった。麻衣子とのメールで撮影時に乳房を出し下着を下げ、あそこまで晒すことに同意しているのだった。僕は改めて本人に確認するのをためらった。気持が変わるのが怖かったからだ。ひとつだけ麻衣子と約束した。それは、撮影しているときは出来るだけ笑うことだった。僕は女の子の笑顔を撮ることをあまりしない。でも、麻衣子の笑顔は人を惹き付け癒す力があったのと、何より麻衣子の魅力の欠片さえ写っていない写真を撮ってはならないという写真家としてのプライドがあった。

 麻衣子を川の中に立たせた。そして小ぶりな乳房を見せるように言った。次に下着を水中まで下げ、ついに薄いアンダーヘアーを見せたのだった。そして、ファインダーの中の麻衣子は約束どおりずっと微笑んでいた。

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□この作品は次回個展『妄想ガール・コレクション〜リバーサイド』にて公開予定です。
□この写真は展示作品ではありません。



2018-10-09 : 33th個展 : コメント : 0 :

『虹色の湖』

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2018.10.6 model*Olivia

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 川は荒れていた。僕たちは落着き場所を探し彷徨っていた。杖をつきながら歩く老紳士とすれ違う。僕は敬意を込めて挨拶をしたのだった。それは、僕が美しい娘を連れ歩いていることへのかすかな詫びも含んでいた。

「柿をさしあげよう」とすれ違ったあと振返りながら言った。
「えっ?いりません」と僕は言ったのだが、紳士と一瞬眼が合ったとき気持が変わった。
「あっ、頂いて良いのなら」と言うと紳士は僕たちを柿の樹へと誘った。娘を見ると楽し気だったことで紳士は安堵したようだった。そして、紳士は枝付で柿をもいで僕たちに手渡した。紳士の故郷はどこだろうか。何故ここにいるのだろうか。幸せに会いたくて旅に出た?ふるさとの村にあった喜びを棄ててまでして。

 僕たちの心に共通に流れる歌があった。その歌詞は僕にとってあまりにも悲しい。故郷を棄てて都会へ出て来たことへの重すぎる後悔がそこにある。老紳士は帰るには遅すぎるのだろう。

 僕たちは柿を持って水かさが増した川辺へやって来た。ここで娘は裸足になり、持ってきた少女時代に着たシュミーズを川で洗った。僕は娘の足下の水の中に柿を浸けた。またあの歌が流れて来る。それは中村晃子の『虹色の湖』。もはや僕もかえるには遅すぎるのだった。

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□この作品は次回個展『妄想ガール・コレクション〜リバーサイド』にて公開予定です。
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2018-10-07 : 個展 : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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