『ファンタスティックな祈り』model*里枝・・・2011.10.25

 白い長袖のブラウスと足首まである紺色で透けた生地のロングスカートを着て歩く里枝を誰もが眼で追っているのがわかった。今この瞬間、里枝の魅力が凝縮されているなと思った。「羨ましがらなくても大丈夫、もちろんこの人は僕の彼女ではありません」と心の中ですれ違う人たちに言い訳しながら歩いた。

「長い髪が美しいですね」
「そうでしょうか」
「あのぉ、僕はですね・・・」
 いい女を前にして自分の人生を得意気に語る男が嫌いだ。そして僕も里枝に自分の人生を語っていた。たぶん、割と得意気に。
 里枝と公園を散歩した。

「魚返さんと私、誕生日が同じですね」
「ああ、そうだったね」
 映画なら、この偶然は二人が近づくきっかけになるはずだ。
「映画をつくりたいですね。夢だけど・・・」
「あら、魚返さんならきっと実現すると思います。本当にそう思います」
 僕は大風呂敷をちょっと後悔していた。

「あの切り株に立っていただけますか」
「ええ、裸足になります」
「あっ、何だろう?鳥の糞かな」と僕は切り株の上を指差す。
「そうですね。でも平気よ」
 うす茶色した若い切り株の年輪と里枝の足の裏が密着するのを見て、何となく胸がざわざわした。里枝が切り株の上に立つとスポットライトのように木漏れ日が射した。そして里枝は合掌し祈った。ごく自然に。

「ああ、素晴らしい!何て美しいんだ!」

 少年の頃に観たJUNのCMを思い出した。そのCMの最後に巨匠リチャード・アヴェドンが「ファンタスティック!ビューティフル!」と叫ぶ。僕はそのシーンを鮮明に憶えている。大げさだと言われるかも知れないけど、そのCMが僕を写真家にしたと言ってもいい。その中でアヴェドンが使っていたカメラはローライフレックスで、僕が構えているのと同じだった。切り株に立つ里枝を、あのCMの中のアヴェドンのように仰ぎ気味に狙った。僕はアヴェドンになったような気分だった。

「さようなら」
「さようなら」
 僕は何か物足りないものを感じながら里枝に手を振った。

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2011-10-25 : 昭和ガール : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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