昭和ガール『ララバイ』model*nana・・・2011.11.30

 nanaと多摩川の土手を並んで歩いた。午後三時の太陽の位置はもうケヤキのすぐ上まで来ていて夕方みたいだった。僕はnanaの顔を半逆光で見ていて、ルージュを濃いめに塗った唇はギラギラ光っていた。こんなに艶かしい唇を見たのは間違いなくあの時以来だった。あの時とは、僕が東京に出て来た1974年5月の土曜日の夜で、下落合のアパートで見たあの女の唇のことだ。

「例えば僕たち二人がカフェにいるとしよう。nanaならどうする?」
「そうね、まずロールケーキとナッツの載ったチョコレートケーキを一つずつ注文して、それを二人でシェアし合って食べるわ」
「そんなバカな。だって僕たちは他人で、しかも初対面だよ」
「わかっています。それでも私はそうするわ」

 nanaの口調は矢継ぎ早で、態度も目まぐるしい。しかし、その言動の中に相手を思いやる優しさがあった。
 僕はnanaを土手の上の草むらに座らせた。僕の位置からはやはり逆光で、真っ赤なルージュはきっちり太陽の光を僕の方に反射していた。nanaは肩がすっかり出てしまうほどルーズなベージュ色のセーターとチェックのセミロングスカート姿で、保守的な女性が恋人にクリスマスプレゼントをせがむ時の服装だった。nanaが座ると太腿の奥まで見えた。その足は意外なほど細くて白く、赤いルージュとコラボしていい女だと主張していた。

「nana、乳首のサイズを教えてくれないだろうか」
「どうして?」
「nanaの唇の艶かしさとの因果関係を知りたくて」
「案外うぶかも知れないわ」

 僕はカメラを構えた。nanaは緊張している様子もなくただ川を見つめていた。ファインダーを覗くと、最初にキラキラ光る唇とセーターから露出した肩が目に入った。次にスカートの中が見えた。真っ白い足。そしてその奥も。

「シャッターを押すよ」
「私はどうしたら良い?」
「nanaは三分だけ制止してごらん]
「わかったわ」
「心の中で歌を口ずさむのもいい」
「じゃあ、マドンナたちのララバイを歌うね」

 僕は胸騒ぎがした。

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□マドンナたちのララバイ→YouTube
2011-12-01 : 昭和ガール : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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