『バラのお話』2010年の初夏の出来事

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2010.5.19*吉祥寺にて


 『僕が出会ったいくつかの偶然ことを語った瞬間、多くの人はきっと嘘だと言うに違いない。悲しいけど』


 このところトゥーツ・シールマンズを聞くことが多い。彼はハーモニカと口笛とでジャズを奏でる。その演奏には真の癒しがあって、聞き始めると麻薬のように習慣化してしまうところがある。

 そのトゥーツ・シールマンズを先日あるそば屋で聞いた。ライブ版だった。僕が三十年以上前に買ったのは、たぶんトゥーツ・シールマンズとピアノのビル・エバンスのデュオアルバムだった。そのはずだった。家に帰ってレコードを探すと、そのアルバムはビル・エバンスのリーダー作だったのだ。僕はとても驚いた。あまりにもトゥーツ・シールマンズの存在が際立っていたから、デュオアルバムだと勘違いしてしまったらしい。

 案の定、そば屋以来、僕はトゥーツ・シールマンズを聞くことが日課となった。何度も聞いていたら、収録曲の『酒とバラの日々』が耳についてしまった。ああ、ヘンリー・マンシーニは素晴らしい。映画『ひまわり』の冒頭のシーンだけリピートして何度も観たことがあった。広大なひまわり畑の映像のバックに悲しく切ない音楽が流れる。その曲を作曲したのもヘンリー・マンシーニだ。

 『酒とバラの日々』を口ずさんでいたら、ある写真のことを思い出した。去年の初夏に撮ったバラの写真だった。探してみると、そのフィルムの中には何故か僕の影が写っているカットもあった。写真の中の僕は寂し気に見える。

 想い出というものは素晴らしい。その日の僕の気分が蘇ってくるから。想い出を記録した事実、つまり写真を撮ることは尊い。

          ☆

「マンションのベランダにバラが咲いていますね」
「あら、あんなに健やかに咲いて、いいわね」
「僕の母はバラを植えなかった」
「あら、私の母は真っ赤なバラを植えたわ。たくさん植えてバラのトンネルを作ったの」
「へえ、すごい!ところで、あなたはどこへ行くところですか」
「その先の小さなクッキー屋さんに行きます。あなたはどちらへ?」
「ええ、僕はどこにも行くところがありません。目的もなくただ歩きながら写真を撮っているのです」
「お幸せだこと・・・」
「そうでしょうか。クッキーを買う幸せにはかないません」

 この文章を読んだあなたは、この偶然を嘘だと思うでしょうね。僕はそれが悲しい。だからまたトゥーツ・シールマンズのハーモニカに心を癒してもらうとしよう。




□スナップ写真は楽しい。僕の塾でも一緒にスナップもやります。ご興味のある方は是非参加してみてください。
2011-12-07 : スナップ : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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