『僕と直さんとアズサの撮影・その1』

 この組み合わせで撮影するなんて悪い冗談に違いない。そう思わせる原因は、直さんだ。直さんは、機関銃のように撮り続けるまっすぐな人で、こんな勢いで撮る人に今までに会ったことがない。撮るカットの多さもさることながら、直さんは僕と真反対な撮り方をしているのだ。どうして?なんで?まさか?うそでしょう?と、僕の口はあんぐりしっぱなし。

 しかし、僕は奇妙なことに直さんに興味を持ち始めていた。興味というより不思議なものを見せられて、ある種の魔法にかかってしまったのかも知れない。

 直さんの撮影を見てどのシーンも僕ならこうするのになあ、と思っていた。しかし、あるシーンにおいて、僕は我慢できなくてとうとう本気でシャッターを押したのだった。それは、直さんが撮っている角度とはまったく違ったし、写真の意味も違っている気がした。

 このシーンのセッティングをしたのは直さんだった。アズサの着けていた黒いガーターの着け方や下着の履き方、スカートの乱れまで細かく指示をしていた。実は、この時僕が撮った写真は間違いなく傑作だった。アズサの恍惚な表情といい、スカートを上げる手のポーズ、足の角度、ガーターベルトの張り具合など申し分なかった。そのすべてを直さんがセッティングしたのだ。

 常々、自分の感性を否定するような撮り方をしようと心がけている。自分を信じているが、過信してはならない、素晴らしい瞬間は神から与えられるものだと考え、撮影中は何か別の要素が入り込む余地を持たせている。

 直さんと撮ることは、僕の撮影に別の要素が入り込み、世界を拡げているのではないかと感じた。

        ☆

「直さん、次はどうしますか」
「そうですね、今日と同じように、電車の中と河原で撮りたいですね。アズサさんの服も同じで良いです」
「まったく同じですか?」
「ええ、ただし次回はその先の撮影について三人で議論したいと考えています」
「議論?」
「はい。それから、アズサさんに黒いイブニングドレスを買いましたから」
「え?買っちゃったの!」
「はい、買いました。それを着て頂いて『ティファニーで朝食を』のイメージで撮影したいと考えてます」
「まさか?この河川敷で?」


□この日、僕が撮った作品『冬のアズサ』をご覧になりたい方は拍手をお願いします。


2011-12-28 : 昭和ガール : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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