『あなたを撮らせてください』

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1992.9.12*model*Kumiko

「あなたを撮らせてください」と目白通りを歩くKumikoに声をかけたのが始めてのスカウトだった。その時のKumikoは美しいロングヘアーだった。後日、撮影に現れたKumikoはばっさりと髪を切ってしまっていて、僕はとても残念だった。彼女のロングヘアーは南から来た少女のルーツを表しているような気がしていたからだ。Kumikoはその年に奄美大島から東京に出てきたばかりだった。

            ☆

 今朝のニュースで、福原愛が卓球を始めて二十周年だと、本人が語る姿を見た。あ~、そうなんだ、と関心していたのだが、僕もスカウトを始めて今年の九月で満二十年になる。つまり、一般女性をモデルにした作品を撮り始めてからも同じ時が経ったというわけだ。いったいどれぐらいの数の女性をスカウトし、撮影してきたのだろう、などと関心しながら感慨にふける。

 撮影はいつも短時間にベストを尽くしてきたつもりでも、そうできていないこともある。その日の撮影は僕の心に小さな刺となって今も刺さったままだ。しかし、振り返ると、そういった納得できない撮影に学ぶこともある。今は、安易な撮影をしてはいけないと、どこからか声が聞こえてくる。

「あなたを撮らせてください」

 この一言の重みを僕は知っている。そこから始まるドラマを僕はずっと伝え続けなくてはならないからだ。何年も経って、何回目かに彼女の写真を発見した瞬間に、単なる写真が確かな作品に変わって見えることがある。不思議なことだ。熟成されるのだ。今撮っている写真も、今はそれほど良く見えなくても、ずっと先になって熟成され輝き始める可能性がある。だからこそ、どのカットもおろそかにしてはいけない。それと、化学反応のない簡単に消去できるような手段はモデルになってくれた彼女たちへの小さな裏切りが含まれているのではないか。小心者の僕にはそう思えてならないのだ。


□写真塾再開しました。今年もよろしく。





2012-01-06 : スカウト : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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