昭和ガール『凧揚げと美しい女』・・・2012.1.10


1996『Who’s Love』より/model*sakura
 この写真は以下の文章とは無関係ですが、深いところでつながってます。

             ☆

 冬になると寒空の下で凧揚げをした。奴凧と凧ヒモを駄菓子屋で買い、家に戻って新聞紙を長く切って凧の下方に貼付け足にする。その足の長さはその日の風の強さによって変える。凧を持って堤防に行くとびゅーびゅー北風が吹いていて、手を離すと凧はあっというまに舞い上がり、巻いた凧糸を全部出し切ってしまう。凧糸の端っこを持って、河原の大きな石の陰に腰を降ろして風をよける。それでも容赦なく風は僕に吹きつけてくるが、そういう時は凧も勢い良く揚がるから、凧揚げを思い出すときは寒さも思い出す。

 やがて糸が切れて、凧はどこか遠くへ飛んで行ってしまう。雪景色の山々をバックにどんどん遠くへ飛んで行く凧を見て、僕の心は複雑だった。悲しいような、もったいないような、美しく爽快なようで、寒々しく、そして最後には虚しさだけが残る。

 今度は凧を手作りする。枯れた竹を裂いて骨組みを作り紙を貼り新聞紙を切って足にする。凧糸の代わりに家にたくさんあったミシン糸を使う。最初は凧の出来が悪くあまり揚がらないけれど、そのうちにコツを掴むと、駄菓子屋の奴凧ほどではないものの、それなりに揚がる。僕は北風の強く吹く日に堤防へ行き凧を揚げた。僕が作った凧はものすごい勢いで空に舞う。細いミシン糸は手元より先へ行くとすぐに見えなくなる。人差し指で糸に触れると指が切れそうなほどピンと張っている。手元から糸を出し続けている間は多少凧をコントロールできていたが、糸が完全に出きった瞬間にミシン糸はプツンと音をたてて切れて凧は遠くに飛んで行った。そして、また虚しさが残った。

 美しい女を撮る。お気に入りの古いカメラを使い、撮り方はあれこれ工夫しているうちに見つけた僕だけの撮り方だ。美しい女は見事に風景にマッチして感極まった瞬間にシャッターを押すと、プツンと音がして残像と虚しさが残る。まるで凧揚げと同じだ。

 そして今も、僕の手元には美しい女の写真がある。






2012-01-10 : 昭和ガール : コメント : 1 :
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オールガール(絶版?)に収められたフーズラブシリーズ、珠玉の一枚ですね。今見ても実に新鮮。美しいと思う。
2012-01-11 00:53 : みやこ URL : 編集
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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