『東京で一番キュート』Lttle Fantasy 2012・撮影編(2)
美樹を撮影してきた。
美樹はやはり明るくて活発な子だった。僕とも、つまり年齢の開きがあっても、普通に話すことができる頼もしい女の子だった。さらに、今さら付加えることもないが、とてもキュートだった。お目当ての下宿を探す。そして見つけた。まだ壊されずにあった。さっそく美樹を下宿屋の前に立たせた。
「わ~、レトロですね~」
「さあ、美樹ちゃんポーズして!」
「あ、はい」
僕はレトロな下宿屋の前でバレエのポーズをとった美樹を夢中で撮った。美樹は可愛くて胸がキュンとしたし、懐かしさも極まったのだが、何かが僕の血管を逆流しているような感じがしていたのだ。つまり、38年の時の経過は易々と受け止めることはできないということだった。僕はノスタルジアに対して少し甘く見ていたみたいだ。
美樹とその場でさよならした。僕はぼんやりして、ひとり路地を歩いていた。僕の眼の前を懐かしい店が次々に現れた。くろねこ、アルル、イフ・・・。むかし僕がツケで飲んだバーだ。やっと大通りにたどり着くと、あの頃デユアン・オールマンやジョニー・ウインターの中古レコードを買ったタイムの前に立っていた。そこで僕のノスタルジアは途絶えた。
美樹にメールした。
「あの、さっきポーズした時に頭の中に流れた曲は、くるみ割り人形みたいなものだよね?」
「いいえ、『無』でした。ごめんなさい」
☆
□この作品をご覧になりたい方は拍手をどうぞ。
美樹はやはり明るくて活発な子だった。僕とも、つまり年齢の開きがあっても、普通に話すことができる頼もしい女の子だった。さらに、今さら付加えることもないが、とてもキュートだった。お目当ての下宿を探す。そして見つけた。まだ壊されずにあった。さっそく美樹を下宿屋の前に立たせた。
「わ~、レトロですね~」
「さあ、美樹ちゃんポーズして!」
「あ、はい」
僕はレトロな下宿屋の前でバレエのポーズをとった美樹を夢中で撮った。美樹は可愛くて胸がキュンとしたし、懐かしさも極まったのだが、何かが僕の血管を逆流しているような感じがしていたのだ。つまり、38年の時の経過は易々と受け止めることはできないということだった。僕はノスタルジアに対して少し甘く見ていたみたいだ。
美樹とその場でさよならした。僕はぼんやりして、ひとり路地を歩いていた。僕の眼の前を懐かしい店が次々に現れた。くろねこ、アルル、イフ・・・。むかし僕がツケで飲んだバーだ。やっと大通りにたどり着くと、あの頃デユアン・オールマンやジョニー・ウインターの中古レコードを買ったタイムの前に立っていた。そこで僕のノスタルジアは途絶えた。
美樹にメールした。
「あの、さっきポーズした時に頭の中に流れた曲は、くるみ割り人形みたいなものだよね?」
「いいえ、『無』でした。ごめんなさい」
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