『ポール・バンクスのように』

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Paul Bankes 『Serenata』

 僕が好きなクラシックギター奏者は、ナルシソ・イエペスやジョン・ウイリアムスやアンドレス・セゴビアではなく、阿部保夫や㽵村清志でもない。もちろん、村治香織ではない。

          ☆

 少年はクラシックが大好きだった。彼の母親から電話でこう尋ねられたことがある。「あの、今新宿西口の地下に息子といます。路上でクラシックギターを弾いている外人がいて、彼のCDを息子が買いたがって仕方がないものですから、クラシックギターにお詳しいあなたに、このCDを買い与える価値があるものかどうか教えて頂きたくて・・・」「ああ、なるほど。やめた方がいいです。無駄を覚悟ならどうぞ」

 それから数週間後。僕は打ち合わせのために新宿南口の高島屋の中にあるカフェ(?)にいた。編集者が注文した粥を僕も食べた。さて、その帰り道。高島屋から南口へ向かう広い通路でクラシックギターの路上ライブをしている中年の白人男性を発見。僕は立ち止まり一曲聴いた。さらに数曲聴いて、彼の足下に無造作に置いてあった茶のジャケットのCDを手にとりお金をギターケースに入れてその場を立ち去った。(僕の記憶ではそうだった)ギタリストの名前はポール・バンクス(Paul Bankes)以来、僕の最もお気に入りのギタリストとなった。

 それから一ヶ月ほど経った頃、あの少年に会った。
「やあ、元気?」
「うん、元気」
「この前お母さんから電話もらったけど、結局CD買ってもらったの?」
「買ってもらえなかった」
「そう、それは悪いことをしたね。ごめんね」
「おじちゃんのお陰で・・・」
「ごめんごめん。ところで、その路上ギタリストの名前を憶えている?」
「うん。ポール何とかだよ」
「えっ!まさかポール・バンクス?」
「うん。たぶん、そうだよ。茶色のCDだった」
「う~・・・」

          ☆

 写真塾を開いている。おこがましくも写真を教えている。彼らを本物に育てようと思っている。本物というのは、路上で聴いたポール・バンクスのようなカメラマンだ。つまり、路上での偶然の出会いでありながら僕を魅了し、CDを買わせたポール・バンクスの演奏のように、観るものの心をつかむ写真の撮れるカメラマンになって欲しいのだ。その為に僕はいろいろな事を語っている。

          ☆

 漠然と写真を撮っているだけでいいのか?少しばかり撮れるからってそれがどうした?それは少年時代からずっと持ち続けている疑問だ。僕の塾に来ないか。僕と一緒に悩んでポール・バンクスになろうではないか。



■2013年の第三回グループ展を目指して入塾者募集中。




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2011.8写真塾にて

2012-03-19 : 写真塾 : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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