『トロイメライ・夢想』・・・作品




2012.8.15 model*文絵

 例えばシューマンのトロイメライを繰り返し聞きながら様々な出来事を振り返ることがある。

           ◆

 文絵との出会いは六月の渋谷。座居ビルの奥のスペースでのことだった。つまりそこは渋谷における迷路と言える場所。僕の前に立ちふさがるように時代背景不明の妖精が現れた。それが文絵だった。

 文絵は古風な容姿が故に今の世において一見埋もれた存在であるが、僕には玉虫のように眩しく希少に見えた。僕は、咄嗟に逃がさないようにすぐに夢想の世界に閉じ込めたほどだった。そして、虫を入口も出口もない箱に閉じ込めて、カサカサ動く虫の脚音に耳をそばだてるように、文絵を五感で観察した。小動物のように華奢な身体と子牛のような眼差し、小鳥のさえずりのような笑い声。文絵は動物や植物と何らかの方法でつながることができるに違いないとさえ思う。

 出会いから三ヶ月が経った終戦記念日の今日、文絵は長袖膝下丈の真っ赤なワンピース姿で現れた。オシロイバナが好きだと文絵は言うけれど、膝下丈の赤いワンピースに覆われた文絵は彼岸花のようだった。
 文絵を郊外の公園に連れて行き、小高い丘の上にある東屋のベンチに座らせると強めに風が吹き残暑を和らげてくれた。文絵は膝の上に蝶の図鑑を載せた。それは恐らく昭和初期か大正時代の古書で、言いようのないほど文絵にぴったりだった。
 僕は静かにシャッターを押した。

          ◆

 撮影の翌日。トロイメライを聞きながら夢想すると、ファインダーの中の文絵が甦った。この穏やかなメロディーは、夏の東屋で向き合った時に滲み出た文絵の本質にとても近いと思った。

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□九月から秋を集中撮影する予定です。作品のモデルになってくれる女性を募集しています。年齢は問いません。お申込はこちら・・・





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2012-08-19 : リトルファンタジー2012 : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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