『冬の百合』・・・作品




2013.1.12 model*郁美

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 ある厳かな記念日のために百合の花が届けられた。茎を無造作に切り落として安っぽい花瓶に野菊のように束にしてさした。部屋中に漂う香が僕の精神を何となく苛立たせていた。僕は百合の香が苦手だった。香の正体を確かめようと一輪を花瓶から抜いて机の上に置き顔を近づけてみるとどことなくグロテスクだった。花びらから順にバラバラにすると息苦しいほどに強く香った。そして花粉で汚れた指を見ながらなんだか虚しかった。

 葉が枯れ落ちたがらんどうの雑木林に来ている。郁美のもともと無垢な肌はさらに透明度を増し一年前に出会ったときより美しくなっていた。僕は誰に対するのかわからない方向性の定まらない嫉妬をした。家から持ち出した百合の花束を手渡すと郁美はそれを乳飲み子のように抱いた。花粉が郁美に着いてしまわないか心配だった。百合の香は郁美の美しい肌と良く調和し僕を遠ざけようとしているようだった。

「あさっては成人式だと言っていたね」
「はい、雪になるかもしれないそうです」

 カメラを向けた。やはり郁美の瞳は澄んだ茶色をしていた。その瞳はやがて潤んで両眼のふちから涙が流れ出した。本当に泣いている、と思った。これから先ずっと百合の匂いを嗅ぐとき郁美の涙を思い出すのだろう。

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2013-01-18 : ファンタジー2013 : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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