『潮騒とWAVEが聞こえる日に』

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 僕は近年数多くの映画を観ることができた。そのことに感謝している。それほど熱狂的ではないものの一人の映画ファンとして映画館に行き、映画の演出に酔うことが好きであった。

 昨日、『アントニオ・カルロス・ジョビン』という映画を観た。アントニオ・カルロス・ジョビン、つまりトム・ジョビンは『イパネマの娘』の作曲者であり言わずと知れたボサノバの巨匠である。
 映画は彼のライブ映像や彼の楽曲をカヴァーした様々なジャンルの著名な音楽家たちの演奏シーンのみで構成されている。その単純で無演出とも言える思想はトム・ジョビンの音楽を愛する者たちへの誠実な演出であった。この映画のどの瞬間を聴き観ても、そこにあるのはトム・ジョビンの世界だけだった。

 ふいに、三島由紀夫の小説を思った。その文章がどこを読もうと三島であることと、誰が唄おうとジョビンの曲はジョビンでしかないということには、表現手段を超越した整合性がある。すると僕の中で三島の『潮騒』とジョビンのアルバム『WAVE』が奇妙な調和をした瞬間があった。

 僕がジョビンのアルバム『WAVE』の一曲目のWAVEをただ安穏と聴いて来てすでに40年が経った。今この映画を観たあとWAVEを聴いてみると、それまでとは違う深い印象を持った。遠い海、遠い空、死んだ人たち、遠い恋人、遠い青春がそこにあった。それは亡きジョビンの魂のせいだろうか。

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 僕は、自分が撮った写真がいかに稚拙であろうと、どの1枚を観ても僕であり魚返一真でしかない、そんな写真を撮り続けたいと思う。しかし、それは容易いことではない。二十年間女を撮り続けた今、その難しさがわかる。


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□『どっち?NO.19』のカードは明日発送します。

2013-03-02 : コラム : コメント : 4 :
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No title
先生の写真は、どのいち枚を選んでも魚返ワールドです。
2013-03-02 15:49 : たかましや URL : 編集
感謝
ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。これからも自分の世界のみを追求する自分でありたいと思っています。応援をお願いします。
2013-03-02 15:53 : 魚返一真 URL : 編集
No title
応援!応援!
2013-03-03 14:58 : たかしやま URL : 編集
No title
先生の写真はすぐわかる。他の写真家の作品と並んでいる中で浮き上がって見えるから、よくわかる。
2013-03-03 15:20 : たかしやま URL : 編集
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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