『地球儀とセーラー服の物語』・・・作品


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2013.6.6 model*ジェマ

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 今日の鎌倉は梅雨の中休みで海の匂いが溶け込んだ湿った風が南から吹いている。浜に出ると海の家の立付けが一斉に始まっていた。僕は1977年梅雨の伊豆七島・式根島のことを思い出していた。僕と去年死んだノブはその年の6月に島へ渡り小さな自動車整備工場の敷地にディスコとビアガーデンを作り始めた。7月後半、ついに完成したころ東京からたくさんの女の子が島へ遊びにやってきた。僕たちは女の子たちと遊んだ。しかし、いくら遊んでも何か満たされなかったばかりか、そばに女の子がいるだけで傷つくことさえあった。その頃の僕は、ただ清純な女の子と風のように爽やかなキスをしたいだけだった。

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 女の子は夏のセーラー服を品良く着こなしている。そのセーラー服は、灰色の襟に紺色の二本線が入り、シルバーグレーのリボンを胸元の布の通しにくぐらせている。スカートは車24ヒダで紺色だった。セーラーにありがちな、紺色の襟に白い三本線の定番ではなく、質素で厳かな感じがした。このセーラー服が似合う子はそうはいない。しかし、この女の子が着ると自然に美しく、まるで彼女のために特別にデザインされたプレタポルテのようだった。そして、美しい女子高生は地球儀を手にしていた。

 地球儀は傷ついていた。地図の部分が剥がれ落ちもはや日本さえも存在していない。だけど、地球儀は今この浜辺に立っている。そう、地球儀は僕である。

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 僕と女の子は砂浜にゴザを敷いて並んで座った。二人とも同じ言葉が堂々巡りしていた。海を見ながら流れる僕と彼女の思惑の違うその時間がとても幸福だった。もし、彼女ともっと心を通わせることができたなら、そして僕がコンプレックスを持たない17才の少年だとしたら、海を背に彼女に風のように爽やかにキスをするのだが・・・。


 波がゴザの前まで寄せて来たとき僕たちは立ち上がり握手をして、海に、そしてお互いに、さよならを告げた。

 

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□7月開催の個展では別カットを展示する可能性があります。
25th個展DM裏-写真面



2013-06-15 : ファンタジー2013 : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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