『初恋の夏』・・・作品





2013.8.5 model*羽菜

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 羽菜と再会し郊外へやってきた。夏の陽射しが照りつける猛暑の道を歩いているとき、僕はまるで我慢会にいやいや参加させられているような気分だった。しかし、小道の両側に生えた雑草は茎がつんと立ってむしろ嬉しそうだったし、僕の横を歩く羽菜は白い日傘が似合って涼しげだった。日陰にさしかかったとき南風が僕の汗ばんだ頭髪の間を愛撫して行った。その瞬間、やっと夏も悪くないと思った。

 羽菜が着ているピンクの半袖ワンピースが夏の暑さを打ち消すように爽やかだった。そして緑の中でとても目立っていた。樹々や夏草、虫たちに向かって「わたしはここにいます」と知らせるための色なのかもしれない。

「ホオズキで遊んだことがある?」
「はい、口の中で膨らませ音を立てるんです」
 僕は羽菜の口元を凝視し、柔らかそうな唇を横しまな気持ちを悟られないように丁寧に褒めた。

 樹々の間に立ち、家の花瓶から拝借し大切に持ってきたホオズキ一個を、幼女のような愛くるしい掌に載せると、たちまち羽菜はむかし僕の夏を独り占めした少女と重なった。羽菜にスカートの裾を上げるように告げた瞬間に、少年時代の僕も初恋の少女に対して同じ要求をしたかった、ということが今さら明るみに出て僕を驚かせた。ファインダーの中を覗くと潔癖な女の子にだけ宿る上品なエロスが羽菜の白い肌の上に浮き出ていた。
 僕は静かにシャッターを押した。

「君に会えてよかった」
「たぶん、わたしも」

 僕たちの祭は終わった。そして今、羽菜の初恋のことを聞かなかったことを強く後悔している。


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二人だけの宴が終わった
撮る人は夏の哀しみを携え
妖精はホオズキを掌に載せている
もう祭りのあとのさみしさに覆われている
つまり、今日羽菜の夏を撮りました





□26th個展では別カットを展示する可能性があります。。





2013-08-09 : 26th個展へ : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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