『夏の口実』・・・作品




2013.8.9 model*祥子


 祥子は小柄で無口で小動物系の愛らしい女の子だが、リスや子ウサギのように幼い子供が好むようないたい気なペットという感じではない。時折見せる眼には野生があって、内側に何らかの本性を秘めていることを物語っている。外見は普通の女の子かもしれないが特別な魅力がある。その魅力に気づいている者は誰ひとりといないらしく、本人さえもわかっていない。ただひとり彼女の難解な魅力に気づいた男、それは僕である。

 祥子と初めて会ったのは、昨年の五月に開催したグループ展の会場だった。その後、メールのやり取りをしたが、三度目に送ったメールを最後に不通となってしまった。二十年スカウトをしていれば、あらゆる手段を使って消え去るのが生の女だとわかっているから驚きはなかった。その祥子が七月に開催した個展で再び僕の前に現れたのだった。僕は彼女とメールを再開し、ついに撮影することになった。

               ⁂

 酷く暑い。蝉の鳴き声がほぼすべての空間を埋め尽くし、わずかに残った隙間のところどころに不快という文字が陽炎のように揺れている。今日の僕は、祥子に対してある思惑があり、それをいつ伝えるのかが問題であったが、この不快な気候が多少なりともその告白のじゃまをしているのは間違いない。

 久しぶりに雑木林に来てみると、白雲木の樹が黒い実をたわわにつけていた。その下にゴザを敷いて薄いグレーのワンピースを着た祥子を座らせた。大きく開いた胸元から左肩を出すように言うと黙ってそれに従った。ファインダーを覗くと野性的な祥子がそこにいた。

「君に伝えたいことがある、お願いがあると言うべきなのだろうか」
「どういったことでしょう?」
「あの、君の・・・を見たい」
「・・・」

 猛暑の夏に祥子の魅力を知ってしまった。再び会わなければならないという思いが楽しくもあり僅かではあるが苦みもある。夏の間に何かしらつづきがあるのか、それとも秋にずれこむか、いっそこれっきりになるのか、いずれにしても撮影が再会の口実になることは確かだ。

               ⁂



□次回個展では別カットを展示する予定です。。



2013-08-22 : 26th個展へ : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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