『凛として』・・・作品



2013.10.16 model*ようこ

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 ようこの眼を見た時とても緊張したのは、中一ころ放課後に校舎の裏手で悪戯の作戦会議をしていた僕たちの背後から忍び寄り、「あんたたち何事かたくらんじょるね」と言った学級委員の女の子の凛とした眼と同じだったからだ。そして、そういう女の子は悪ガキ連中のマドンナになる資格があった。

 台風一過の秋の午後、僕とようこは温いオレンジジュースを霧吹きしたような色の陽射しを浴びながら郊外を歩いていた。道のあちこちにできた水たまりを避けながら歩くのが邪魔っけだった。それ以上に悩ましかったのは、僕の心の中にあるエロスへのアプローチが、ようこによってその芽を摘み取られていることだった。彼女にそんな気は毛頭ないのかもしれないが、凛とした眼差しを前にした時に、何よりも彼女に嫌われることを恐れる少年の習性というものが、いまさらの年齢である僕の心に湧いてきて、僕がこれから言おうとしていることの大部分を失ってしまったのだ。

 ようこに包帯を渡し、昔ケガをしたことのある右足の中指に巻くように言った。余った包帯のところどころに赤い液体で色をつけた。それは、血であり少女ようこへのドラキュラ的ニュアンスへのほんの導入のつもりだったが、不意に赤い液体はようこの細い脚に付着し白い肌の一部を赤く染めた。ようこはわざと自分の肌に赤い液体を着けたに違いない。ようこは何事にも用意周到にできる、例えば僕が今日の撮影直前にメールで伝えた要望にも完璧以上に応えていた。つまり、ようこには状況を見通せる賢さがある。こうしてようこは僕が望むエロスを許容した、と僕は解釈した。

 ファインダーを覗くと、強めに吹く風に立ち向かうようこの顔は凛として気品があった。撮影が終わると僕たちは握手をして別れた。願わくば、もう一度ようこを撮りたい。今度はもっと率直にエロスを伝えたいと思う。しかし、ようこの凛とした眼差しは、やはりそれを許さないだろう。


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2013-10-20 : 26th個展へ : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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