『ロマンチストのための初夏』


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2014.4.23 model*eri

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 新緑の季節である。たった今この時こそが最も輝いている瞬間だった。木の葉の生育はまだ頼りなく木漏れ日はやや大きめで、木陰に座った娘の顔は陽射しに照らされている。しかし、夏のように強すぎずやわらかく程よい。時折病み上がりの身体には若すぎる風が、あなたの青春を思い出してごらんなさい、と思わせぶりに通り過ぎる。僕は僕の14才を懐古しながら草原を駆ける風を見送った。娘が座る地面一面にタンポポが咲いている。つまり、眼の前に広がっているのは絵に描いたような初夏なのだった。もちろん、僕が考え得る範囲の、であったが。。。

 さて娘だが、みずみずしく白い肌はまだ幼く、時代を無視したような眉毛と髪の手入れが、彼女をはからずも年齢不詳にしていた。始めて会った時、僕は娘の年齢を18才と推測したのだが、はたして幾つだろうか。
 娘は大好きなフラゴナールの『ブランコ』という絵画の解説をした。その絵にまつわる許されざる物語に含まれるエロスを可笑しそうに語った。僕はそれを聴きながら娘の瞳の聡明な輝きにうっとりしていた。娘が言ったもう一つの言葉が頭をよぎる。「男と女って一生かけても分かりあえないんだなとつくづく感じるんです」そんな哲学的な思考をする娘が好む曲は、ラヴェルの「亡き王女の・・・」であるから、やはり彼女が乙女であることは間違いないようだ。上手く言えないのがもどかしいが、この娘がロマンチストが故に垣間見せるある種の気難しさが彼女を魅力的しているのではないかと思う。

「お尋ねします」
「どうぞ・・・」
「結局、会いたいと思う人に会えるのかしら?」
「僕は君に会えたよ」
「・・・」

 娘の名前はeri。彼女にしかない特別な魅力を持った女の子である。ファインダーを覗くとeriは初夏と同じように聡明だった。「愛らしい」と言ってシャッターを押した。そして、いつものようにスカートをひるがえすような強い風が吹くのを待った・・・







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□eriは、2014.4.16 13:50頃スカウトした女の子です。このブログの記事『eriと春風』参照。この日と同じ服で来てもらった。



2014-05-03 : 26th個展へ : コメント : 2 :
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非公開コメント

No title
何か時代を超えてきたような・・・・
懐かしいにおいがします。

こんな感じの方いたら撮りたくなります。
2014-05-04 15:10 : いちき URL : 編集
普遍性
最近は、こういう女性を見かけなくなりました。
2014-05-06 13:49 : 魚返一真 URL : 編集
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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