『老人と僕の午後』


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 猛暑の午後、僕は帽子をかぶって上水脇のじゃり路を歩いていた。数メートルおきにやってくるケヤキが作る陰を楽しみに、そして眩いばかりの陽射しを恋人あつらえて、石ころに足首をくねらせながらゆっくり歩いていた。僕は身も焦げてしまいそうな暑さから逃げられない状況に置かれたことがなんとなく嬉しかった。

 僕と同じような帽子をかぶった老人が二十メートルほど向うから歩いて来る。グレーのズボンに白い開襟シャツを着ている。だんだん近づいて数メートルのところまで近づいて、互いに一つのケヤキの陰に納まったところで、ふたりは眼を交わした。僕は何となく会釈をした。年上の先輩という尊敬の気持ちからだった。すると、その老人は立ち止まり身体を直角におり深々とお辞儀をしたのだった。あわてて僕は「こんにちは」と言った。そして、ふたりはすれ違い、そして遠ざかった。
 少し歩いて老人の方を振返ったとき、僕の眼から涙が溢れた。そんな夏のたわいもない一瞬が僕の心を切なくしたのだった。




2014-08-06 : 詩と写真と : コメント : 1 :
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No title
どうして涙が流れたのか?先生にしか分からない事ですね。
誰かに訴える為に泣くのでもなく、自己満足の為に泣くのでもない。
そういう泣き方が出来る58歳に私もなれればいいなと思いました。
暑中お見舞い申し上げます。
2014-08-06 19:05 : eu URL : 編集
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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