『オマージュ』



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 あるジャズアルバムが定期的に僕の人生に登場する。時間が経って聴くとメロディや演奏は同じはずなのにその都度違って聴こえ僕を感動させる。このアルバムはビル・エバンスの『ワルツ・フォー・デビイ』、言わずとしれたジャズ史に残るピアノ・トリオの名盤で35年以上前に買ったレコードもまだ手元にある。このアルバムのベースは伝説のベーシストのスコット・ラファロだが、最近『スコット・ラファロその生涯と音楽』を読んでからというもの何度もこのアルバムを聴き返している。主に聴いているのはビル・エバンスのピアノではなくラファロのベースとモチアンのドラムで、これまでになく深く感動している。ちなみに今回、『ワルツ・フォー・デビイ』を聴く最初のきっかけとなったのは吉祥寺のジャズ喫茶Megに行った時にいきなりこの曲がかかったからだった。

 他にも時が経ちくり返すことで感動が増すものがある。小説の三島由紀夫の金閣寺もそのひとつだ。初めて読んだのは18才だったが読むたびに違う印象を持ち新しい発見がある。(これは三島の作品全般的に言える)

 さて、写真においても同じことがあった。最近あらためて感銘を受けている写真家がいる。古いファンなら名前を聞くだけで、「ああ、柔らかい感じ。少女趣味な・・・」となるに違いない。そう、デビッド・ハミルトンである。最初に彼の作品を観たのは、たぶんもう40年以上前のことだった。しかしその後もずっと僕の中で何となく拒否反応があったと思う。それは、あのような妖精のようなモデルはそうは撮れないだろうということと、僕自身が女の子の写真に興味がなかったからではないだろうか。ちなみに、初めて女の子を撮ったのは35才のときだった。

 昨年のことだ。あるきっかけがあって複数モデルの作品『君のともだち』を撮り始めた。その後、またあるきっかけでデビッド・ハミルトンの写真集をじっくり観る機会があった。僕は深く強い衝撃にみまわれ、その後の作品の中に少しずつデビッド・ハミルトンが入り込んで僕を静かに浸食している。

 考えてみれば、スコット・ラファロ、ビル・エバンス、三島由紀夫はすでに亡くなっている。しかし、デビッド・ハミルトンは今も健在であるから、僕のデビッド・ハミルトンへのオマージュが彼の存命中に完成し届くことを願う日々である。


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2014-10-26 : コラム : コメント : 2 :
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No title
「ワルツ・フォー・デビイ」を聴きながらブログを拝見していたら偶然、この記事を目にしました。三島由紀夫の「金閣寺」は、苦手な小説で、冒頭の暫猫の問答のところで、いつも先へ進めなくなり、もう40年もたちます。家には、大学生の頃、彼女から借金の肩代わりに預かったデビッド・ハミルトンの写真集が今もあり、時々、取りだして眺めますが、2人の少女が自転車に乗った写真が秀逸です。よい記事を拝見しました。
2014-11-26 04:23 : エトワール URL : 編集
エトワールさんへ
あなたと私は同じ星の下に生まれていますね。金閣寺を本当に読めたのは去年でした。デビッド・ハミルトンを長年放置したのは間違いでした。これからおおいにはまって楽しませて頂こうと思っています。エトワールさん、また遊びに来てください。待っています。
2014-11-26 22:23 : 魚返一真 URL : 編集
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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