『Birdcage』





2015.3.3 model*mayumi

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 この空間は少年時代のある瞬間に心のおく底に棲みついたわだかまりを視覚的に表現することのできる才能を持った者による芸術に他ならない。この空間は人を安らかにする反面、ここに滞在すれば時間の長短にかかわらず何者かの魂の一部が皮膚の下にまで浸透し少なくとも一晩は憑かれたように精神を病む。三度訪れ二度はそうなった。言わば魔法を宿した部屋なのかもしれない。

 浴衣の女を部屋の角に置いた椅子に座らせた。意図的にくすませたような色合いの壁のあちこちに八センチ大の虫のようなものが無造作に描かれている。正しくは虫ではなくダニである。しかしダニの研究家でもないかぎりすぐにダニだとわかる者は誰もいない。

 部屋になにげなく放置してある真ちゅう製の壊れた鳥カゴを女に抱かせた。カゴには一羽のひな鳥の剥製が入っている。その鳥をよく見ると双頭のひな鳥である。気味が悪いがその神秘さから不思議な気持ちが勝ってしまう。絶妙。つまり女と双頭のひな鳥が似合うなんて初めて知った。さて、女の後方の壁に額入の絵が飾ってある。近づいて見ると割れた卵が描かれていて、その卵の殻には穴が開き、そこからどろりと濃い黄色い液体が流れ出ている。むかし、飼っていた鶏が生んだ有精卵が孵ることなく、結局親鳥がくちばしで殻に穴を開けた時の記憶が甦った。その時もやはり黄色い液体が流れ出たと思う。

 女が浴衣の前をはだけると日本的な愛らしさを体内から滲ませた。何と美しい横顔だろうか。ああ、この女の小さな唇とこぶりな乳房に二つの乳首、そして双頭の雛。あとは何もいらない、それだけで充分ではないか、と満たされた気持ちが血管を流れていく。

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□この作品修正しています。
□27th個展にて無修正版展示。







2015-03-04 : 27th個展へ向けて : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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