『スカウトは人生』



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 スカウトする意味、あるいは一種の習慣(性癖、生業)、について僕はときどき語ってきたし、隠喩を駆使して文章に書いたこともあった。それらは、スカウトはどうしても必要だという初心を定期的に検証しておかなければならなかったからである。

 僕にしてはとても珍しく四日続けて毎日同じ時間に一時間ずつスカウトした。もちろんモデルを、である。初日は、まず恥ずかしさを何とかしなければならず、無我夢中で終わった。二日目は、何故スカウトなんてやってるんだという考えが頭をもたげて終わり、三日目には疲れ果て降圧剤のお世話になって終わった。四日目、とうとう亜矢子と出会った。

 少年時代に憧れたのは川魚漁師だった。継ぎ目のない手製の短い釣り竿と、竿につながれた切れやすい細めのスジ糸の先にしたためた手製の毛針だけが彼の武器である。毎日同じ時間に川の浅瀬を渡り歩き、つぎつぎに天然のハヤを誰の許可を得ることなく天の恵みとばかりに釣り上げる。それらのハヤは串に刺され炭火で数週間ほど繰り返し炙られ、やがて乾き切るとそれを竹製のカゴに入れて小さな町を売り歩く。彼にとって釣りこそが人生だ。僕は川魚漁師の潔い生き様に人の生き方の理想を見た。資本をかけず五感にたより、自らの手作業で売り物にまで仕上げる。僕は川魚漁師がやってくると母に串刺しの川魚をねだった。火鉢で炙り返し醤油を垂らして口へ運ぶとき、僕もいつかは川魚漁師になると心に誓った。

 僕はスカウトする。僕は川魚漁師になってスカウトする。そして、とうとう亜矢子に出会った。

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□スカウトが必要な理由は幾つもあるがその説明は複雑で難解である。しかし、僕の中には絶対的な美を見分けるため、人間の嘘(主に女の)を見破る少年の眼を持ちつづけるために必要不可欠なものであることは確かである。川魚漁師は常に人生の真実を自然から学びながら初心でいなければならなかった・・・<BEATLESのMagical Mystery TourとBeachのBoys Pet Soundsを聴きながら。2016.3.20>





2016-03-20 : コラム : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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