『亜麻色の髪の少女』・・・撮影報告


スクリーンショットmarimoMのコピー


2016.10.12 model*マリモ

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 終着駅の改札口を出ると雪子が待っていた。彼女と会うのは十六年ぶりだったがすぐ雪子だとわかった。そして雪子も白髪になった僕を見て笑顔を見せた。

「やあ、久しぶり。元気だった?しかし懐かしいね」
「ええ、何とかやっています。魚返さんもお元気そうですね」
「いやいや年相応いろいろあります」
「あのぉ、この子なんです」

 先日久しぶりに連絡してきた雪子のメールには娘を撮って欲しいと書いてあった。僕は数日考えてから撮影を承諾すると返事をした。少し迷った理由は何か問題を抱え込むことになりはしないか、という危惧があったからだ。娘を撮って欲しいという雪子の気持ちは誤解されかねないのでこの場に書くことはしない。

「お嬢さん、お名前は?」
「マリモです」

 マリモはバレエのレッスンに行く途中であるかのうような丸まげ髪をしていた。雪子からは特に娘の髪を撮って欲しいと言われていたのでちょっと拍子抜けだったが、良く見るとマリモの髪はやや茶色っぽくとても細かった。それは赤ちゃんの髪のように生まれてから一度も切ったことがないかのようだった。

 僕はふたりを連れて河川敷を歩いた。かなり年下の女に子供を産ませた初老の男の気持ちとはこういうことなのか、と思ったりした。(途中省く)撮影場所に着いた。水鳥以外の誰にも見られないと確信できる水際だった。僕は雪子に「ここでどう?」と言って持って来たゴザを敷いた。雪子はマリモの靴を脱がしてその上に立たせブラウスとミニスカートを脱がすと、服の下にスクール水着を着ていた。さらに雪子は僕の方に視線を送ったあと、これをご覧くださいとばかりに、マリモの髪をほどいた。マリモの長い髪はお尻よりずっと下まで届きしなやかにカールし野性的だった。

「美しい!」僕は夢中でシャッターを押した。
「マリモちゃんの後ろ姿を撮ってその写真を僕がキープしても良いだろうか」と雪子に言った。
「ええ、もちろん」と雪子は笑顔でつづけた。

 僕はマリモの後ろ姿を撮りながら不思議な魅力に取り憑かれた。それは僕の精神に入り込み棲み着いてしまう魔性のようだった。そして撮影が終わり駅での別れ際に「もう一度マリモを撮らせて欲しい」と言ったのだった。

 家に戻ってマリモに合った曲を探した。まず最初に、ドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』を聴き、つぎにヴィレッジ・シンガーズの『亜麻色の髪の乙女』を聴いた。そして、ふと頭をよぎったアメリカの『金色の髪の少女』を流してみるとこの曲が一番合っていた。四十年前に何度も演奏した思い出が僕の心に甦った。次にマリモを撮るとしたら体操着の後ろ姿かな、と思ったのだった。


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□アップした画像は個展で発表する作品ではありません。







2016-10-15 : 29th個展へ向けて : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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