『祭り囃子が聞こえる』


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2016.10.19 model*祥子

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 この娘の控えめな態度と物言いは失われた昭和に僕をひき戻してくれる。娘に褒め言葉は通じない。ひたすら否定するだけである。最初の頃僕は苛立つこともあったけど次第に娘の行き過ぎた謙虚さを嬉しく思うようになった。草むらの中を歩いて大きな木があるところまでやってきた。途中すすきを摘んだ束を細い草で結んだ。本当は緊縛に使った紫の紐ですすきを束ねるつもりだったがその紐は娘の手首を縛るためにとっておいた。

 この場所が村はずれのような錯覚をした。遠くから祭り囃子が聴こえる。僕の田舎ではもうすぐ収穫のお祭り。先祖から脈々と受け継いだ伝統としきたりを踏まえた祭りがやって来る。吉村昭の小説『水の葬列』を読んだ時、その中に書かれた村の掟にまつわる部分は僕の先祖のことでなないかと思った。その小説は、ある欧州人がKazumaの写真に何か通じると教えてくれたのだが、何故欧州人にそれが理解できるのか未だに不思議でならない。ともあれ、娘は伝統としきたりを重んじるように、自らの控えめな態度と物言いを失わないことで日本人の謙虚という伝統を継承しているのである。

「わたし、期待にそえなくてごめんなさい」と娘はカメラを向けるとかたくなになってしまったことを謝るのだった。
「もはや、あなたが期待にそえないことが作品なんです」と言って僕は娘の両手首を紫色の紐で縛った。

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□この写真は個展での展示作品ではありません。。




2016-10-19 : 29th個展へ向けて : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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