『山に住む少女へ』


2016.12.10 久住連山にて

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 熊笹の中へ分け入った。地面はまだ凍っていて笹の葉の上には霜が降りている。朝陽が当たり始めたところは霜が融けて水滴が光っている。道はどこまでも登っているかのようだ。息が切れる。ついにぜーぜー言い始める。少し立ち止まり休憩する。これまでの人生の思い出が数秒のうちに通り過ぎるのを感じた。何と儚いことか。背負ったリュックにはローライフレックスTと雨ちゃんにプレゼントされたトライX、それから冬のセーラー服の上着が入っている。どれくらいの時間歩いただろうか。ついに山頂に着いた。リュックから制服を出し背の低い樹に掛けた。あれ?どこかで観た光景。オリビアが浜辺で夏のセーラー服を撮った写真を思い出した。頭上に自衛隊のヘリが阿蘇山の方向へ飛んでいく。セーラ服を手に持ってヘリに向かって降るとサーチライトが点滅した。その意味はわからない。僕はローライフレックスTを出して雨ちゃんに感謝しながらトライXを詰めた。これから撮る写真の意味はほとんどない。意味がないことに清々しさを感じる。山頂にまでカメラとセーラー服を運んだことに勝る意味などないのだろう。人は面倒なことに熱中し、それ自体に意味を感じるものなんだ。この山に住む少女よ、僕の前に現れてくれ、そして願わくばこのローライで撮らせてくれ。

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2016-12-13 : 29th個展へ向けて : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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