『彷徨えば朔太郎』


2017.4.4 model*マリモ

 雪子と春の川原を歩いた。マリモも一緒だ。ロケハンを兼ねている。

 開花の遅れた桜を恨めしく思う。僕は世間で語られているように桜の花に特別な想いはない。しかし、散ったあとの絵も言えぬ新緑の季節に対して天国に例えてしまうほどの憧れを感じるし、その結果生きることの意味も明確になる。一年で最も大切な瞬間が来る前に桜の満開を通り過ぎなくてはならないということ。

「雪子ちゃん、僕はね、漱石の『こころ』についていろいろな考えがあってね。だけど、それはひとに語るためのものではなく自問自答するのが目的なんだ。お陰で、ある流行作家の『こころ』に関する一節に彼の本心が見え隠れしていることにも気づけるようになる。小説はたくさん読むより同じものを何度も読むといい」
「へ〜、、それで??」
「ずっと『こころ』のことを考えていたらやがて小説から詩へと向かう。それはごく自然にそうなるんだ」
「どんな詩?」
「ごく一般的に人気のある詩人のものかな・・・。それでねいろいろ詩の中を彷徨い歩く。最後に朔太郎のある詩にたどり着く」
「へえ〜」
「その後、一瞬だけどセザンヌのことが心に浮かぶんだよ」

 僕たちはいつもの川辺にたどり着いた。マリモは当然のように服を脱いでスク水姿になり白いスコートを履いた。僕はマリモにコンパクトカメラを貸し自撮りするように言った。ロングヘアの娘が水着の上にスコート履いて自撮りしているという、なんだかわからない光景を僕はひたすら撮った。



□この作品をご覧になりたい方は拍手をお願いします。




2017-04-05 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

プロフィール

ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
このブログのすべての写真や文章などコンテンツの無断コピー、無断転用を禁じます。

月別アーカイブ

ブログ内検索

FC2カウンター