『羊でなくなる時』

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2017.4.26 model*莉菜

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 この娘に密かに備わった魅力は、この娘を探していた誰かにとって、この娘に恋しさを抱き始めた少年にとって、この娘をすでに忘れられなくなった男に対して、あたり前のようにその決断を迫る。冒険であるはずのその決断を雨上がりに出来た水たまりをひょいと飛び越えるぐらいの軽い選択だと錯覚させて、羊たちが持ち合わせていない勇気を出させる。娘の性格からして、恋に関して待ちの姿勢に違いないから、こっちの方から告白するしか手はない、と羊たちは思う。

 僕はこの娘に対して安らぎを感じている。それは何十回も通ったあの喫茶店で過ごした安らぎの時間を思い出す。そこは時が止まったままの喫茶店。その喫茶店には夥しい数の柱時計があるが、動いているのは四つだけで、残りの時計は全部止まっている。あたかも、多数決で時は止められるかのごとく。その喫茶店で珈琲を飲んでいる時、僕の目の前にじっと座っていてくれる愛しい女がいたとすれば、この娘はその女に近い。

 しかし、僕は娘に命令する。
「ブラウスのボタンを外しなさい。カーディガンを脱ぎなさい。その細く白い手首に手錠をかけよう。次は縄。わかるね・・・」
「はい」
「僕はもう羊ではないんだよ」
「・・・」



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2017-04-26 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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