『美しい娘の釣り模様』



2017.6.16 model*Olivia

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 あの頃、僕の心の中は鉄道と釣りと女の子のことが入り乱れて幾つもの虹がかかったみたいだった。あの頃とは僕の人生でいちばん空気が濃かった少年時代のことだ。三つの中で唯一僕を癒したのは釣りだった。釣りと言っても、僕はどうしても魚を釣りたいという気はなかったから、道具や餌どれもいい加減だった。ただ、心のおもむくままに川へ向い釣り糸を垂れた。青空を眺め雑草を見ては、もう夏が近いのだ、と神妙な気持ちになった。でも、特に夏が好きというのでもなかったし、かといって春を好んだとも言えない。つまり僕が求めたのは、一人っきりになることだった。

 美しい娘と川へやってきた。そう、釣りをするために。だからと言って道具や餌に凝ったりはしていない。つまり魚を釣ることを唯一の目的にしていない。そう、少年時代と同じで「一人っきりになるため」、、あれ?僕はとても違和感があった。娘と一緒にいるからだ。

 美しい娘はシンプルな水着を着て下半身は細いヒダ入った白いスコートを履いていていた。手足はとても細いが健康的で適度に日焼けし髪は馬の尾みたいに長く栗色。顔は少しオリビア・ハッセーに似ていて、もし彼女をミニチュアにしたら、裕福で見栄っ張りな親戚が海外旅行の土産にくれそうな国籍不明のエキゾチックな人形みたいだと思った。娘に釣り竿を渡すと、赤いサンダルを履いた足で水に入り竿を振った。

 青い空の下で眼を醒ますと、そろそろ夏のきざしが見えてきていた。日暮れ時には蛍が舞うのだろうか。眼の前に展開されている、美しい娘の釣り模様を、不調のローライフレックスTでワンロール撮り切った時、写真を撮る幸せというものはシャッターを切る瞬間瞬間に潜むものあって結果ではないのだと思った。

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2017-06-17 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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