『ロイヤルブルー』撮影報告



2017.7.2 model*ゆり乃

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 待ち合わせ場所に現れたゆり乃の服装が僕の眼を釘付けにした。彼女が着ていたのは青いワンピース。襟や袖にアイボリーホワイトの縁どりがされていて、襟にゴールドの丸いボタンが縫い付けてあった。僕はゆり乃以外の誰も着こなせないな、という感じだった。

 雑木林に、今年の冬に拾った籐椅子を運んでゆり乃を座らせた。ゆり乃は村上春樹の文庫本を持っている。その姿は完璧なハルキストに見えたが、ゆり乃という女の子は意外に難解な面を内包しているから、ある種のフェイクかもしれないとも思う。ゆり乃には、育ちの良さ、耳障りの良い学歴、品のいい仕草や物言い、白い肌と細い肉体、などがごく自然に備わっている。ここまで揃えば完璧なお嬢様を演じきることは容易い。さらに、品の良いTVキャスターだってできるし女優だって当然なれるだろう。あとは、誰にも負けない厚かましささえあれば。

「君、積極的なひと?」
「それが、案外ひっこみじあん、なんです」
「えっ!そうなの」それを聞いて僕は少し安堵した。晴れがましい世界に羽ばたくまでまだ猶予がありそうだからだ。僕にも何度か写真を撮る機会をくれるかもしれない。

「ところで、そのワンピース、似合うね」
「ありがとうございます」
「お母様が選んでくれたの?」
「いいえ、自分で買いました」
「良い色だね〜」
「ロイヤルブルーです」
 いくら彼女が消極的な子でも世間が放っておくだろうか?

 ゆり乃が両足を籐椅子に上げると危うく太腿の奥が見えそうになった。アンバランスな体勢のゆり乃の掌にプチトマトをいっぱいに載せると、ワンピースのロイヤルブルーとトマトの赤が鮮やかに混じりあった。僕はローライフレックスのファンダーを覗き下着が写らない角度を探してシャッターを押した。

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2017-07-03 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :
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ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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