『季節はずれの卒業』

2019.9.14 model*Olivia
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僕は高校の卒業式に出なかった。サボったのである。その日は家にいて山々を眺めていた。遠くに九重連山が見え、そこは僕の憧れの地だった。それなのに数週間後、僕はブルートレイン特急富士に乗って東京に向かっていた。その経験のせいか、それとも元々の性格なのか、僕の人生にはケジメというものがあまりない。良い方に解釈すれば、何事にも継続性があると言えるのだが。卒業式の日の午後、クラスメイトが僕の家に卒業証書を届けてくれた。そして家族は僕がとった行動に対して何も言わなかった。僕にとって卒業式は未了感の象徴になった。
今朝、証書の入った筒を持って家を出た。娘に筒を持たせると彼女は卒業式を終えた直後のように見えたと同時に、高校の卒業式に出なかった自分がそこにいた。そして僕はあの未了感に襲われた。
「わたし、あなたに卒業証書を届けにきました」
と娘が言っているような気がした。ひとつの救いがあるとすれば卒業式には季節はずれだったこと。なんてバカな人間だろうと思うことがある。つまり僕にとって卒業式のシノニム(同義語)は孤独なのだから。
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□この作品は来年の個展『妄想浪漫』のために撮ったものです。
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