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「青林檎の告白」・・・2009.5.26

青林檎を紙袋から出すと青くて甘い匂いが周囲に漂った。moeは樹の根っこに座って青林檎を左手に持ち、右手に持った果物ナイフで丁寧に皮を剥きはじめた。皮を長くつなげて剥いて欲しかったけど、なぜか「切れてもいいよ」と僕は言った。僕がすでにmoeに対して何らかの弱みを抱え込んでしまっている証拠だ。初夏は僕を少年時代へと誘う。僕は草木の青い匂いに完璧に覆われた町で育った。そして僕も青い性を内側に蓄えて、それを持て余していた。当時の青い性のエピソードは青春そのものであり、それは大人になった僕にとって性癖のルーツを知る上でとても大切なものとなったが、当時の僕にはやり場のない息苦しいものだった。実は、moeに会ってから、僕の中の青い性が息を吹き返していたんだと思う。moeの容姿にはまだ幼さが残っているから、moeを中学時代の上級生に置き換えるには好都合だった。moeは頭が良くて真面目な子。青い性が彼女を放っておくはずはないのだ。moeが青林檎の皮を半分剥いたところで僕はフイルム1本撮り終えた。そして急に喉の奥に違和感を感じた。それも少年時代のつらい思い出のひとつだ。
「この青林檎、どうする?」「頂いてもよろしいのでしょうか?」「もちろんいいよ」「では今日これから学校へ行って頂きます」
moeとの会話が軽い。例えば僕が写真についてかなり偏屈な理屈をこねても、moeはちゃんと頭の中で整理して次の会話へ進むことができる。まるで林檎の処遇と変わらない。その賢さと謙虚さこそがmoeの魅力であり、彼女の持つエロスだと言って良いだろう。
少年時代、僕は誰にも告白をしなかった。その頃の何人かのお気に入りの女の子への告白を、数十年経った今、moeにしてみようかと思ったのだが・・・。
2009-05-26 : フルーツスカウト2009 : コメント : 0 :
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Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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