『昭和ガール・失恋の味』りん・・・2011.10.10

 誰にも失恋の経験があるだろう。例えば、告白をともなわない失恋というものもある。初恋もそうだ。相思相愛だったとしても、お互いの気持ちを確かめ合うことは簡単ではなくて、失恋に似た感情が残されてしまう。少なくとも、昭和40年代はそんな時代だった。男女の通わない感情のもどかしさのようなものが今は懐かしい。

 りんの容姿には昭和がある。顔だけでなく、体全体に古風な血が流れている。僕はそのことを一目見て気づいて、それからずっと胸の中につっかえたものがあった。りんの中にある昭和は、僕の昔の恋と何らかの関係があるような感じがして、りんを見た時に、失恋したときの気分がかすかに蘇ってくるのがわかった。
 りんと公園を歩いた。恋の話をした。

「僕はあなたを本当に美しいと思う」
「そうかしら、そうでもないと思うけど」
「恋人は?」
「ええ」

 りんは丸襟のブラウスに灰色のカーディガン、そしてエンジ色のフレアスカートを着ていて、その姿が清楚で美しかった。

「原節子を知っていますか?」
「あ、はい」
「君、似ているね」
「あ、ありがとうございます」
「顔とかより、その有り様が檀ふみや原節子のよう」
「誤解を恐れずに言えば、つまり自分が美しいということではなく私にはそういうところがあるのかもしれません」
「つまり、男っぽいところがある?」
「ええ」

 僕は美しいりんを芝生の上に座らせて、スカートを上げるように言った。さらにブラウスのボタンを外し、胸元を開くように言った。僕はその美しさをカメラに納めたのだが、何だか寂しい気分だった。それは僕が少年時代に感じた、告白をともなわない失恋の味だった。
 吉祥寺までりんを送って別れた。その時に浮かんだのがシモンズの『ふりむかないで』という曲だった。

Unknown-1.jpegYouTube→『ふりむかないで』

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2011-10-11 : 昭和ガール : コメント : 0 :
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1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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