『マチルダのように』


2017.7.6 model*桃

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 僕はマチルダという女の子の名前すら心当たりがなかった。しかし、その筋の人たちにとってはある種共通のひびきがあるに違いない。今日の撮影は僕にとって大切なもので、この写真に辿り着くまで準備に一ヶ月もの時間がかかった。

 桃は透けたノースリーブの黒いブラウスと同じく黒いギンガムチェックのミニスカートを着て、黒い帯の着いた麦ワラ帽子をかぶり、何かの目的のためにトータルなファッションであることを伺わせていた。桃を拾った籐椅子に座らせて太さ8mmの透明チューブを桃の身体に巻き付けた。チューブの中はところどころ赤い液体が滞っている。左手首には血に染まった包帯を巻き、右手にはアイスピックを持っている。そしてパンティーは履いていない。

 桃の斜め左後方から西日が射している。まず胸を見せるように言った。桃はアイスピックを乳首へ向けた。そのまま!と言って僕は二眼レフのシャッターを押した。桃は平然として次の言葉を待った。スカートを上げなさい。そしてそこへ血の付いた管を入れなさい。僕は再び二眼レフのシャッターを押した。依然として桃の表情に変化はない。これって、マチルダと関係があるのだろうか?僕は最後の言葉を伝えた。このうちのどれかひとつをあそこに入れなさい。と言ってあるものを数種類桃に渡すと桃は平然とそれに従った。桃の表情が一瞬変化した時、僕は最後の1枚を撮った。

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2017-07-07 : 29th個展へ向けて : コメント : 0 :

『ロイヤルブルー』撮影報告



2017.7.2 model*ゆり乃

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 待ち合わせ場所に現れたゆり乃の服装が僕の眼を釘付けにした。彼女が着ていたのは青いワンピース。襟や袖にアイボリーホワイトの縁どりがされていて、襟にゴールドの丸いボタンが縫い付けてあった。僕はゆり乃以外の誰も着こなせないな、という感じだった。

 雑木林に、今年の冬に拾った籐椅子を運んでゆり乃を座らせた。ゆり乃は村上春樹の文庫本を持っている。その姿は完璧なハルキストに見えたが、ゆり乃という女の子は意外に難解な面を内包しているから、ある種のフェイクかもしれないとも思う。ゆり乃には、育ちの良さ、耳障りの良い学歴、品のいい仕草や物言い、白い肌と細い肉体、などがごく自然に備わっている。ここまで揃えば完璧なお嬢様を演じきることは容易い。さらに、品の良いTVキャスターだってできるし女優だって当然なれるだろう。あとは、誰にも負けない厚かましささえあれば。

「君、積極的なひと?」
「それが、案外ひっこみじあん、なんです」
「えっ!そうなの」それを聞いて僕は少し安堵した。晴れがましい世界に羽ばたくまでまだ猶予がありそうだからだ。僕にも何度か写真を撮る機会をくれるかもしれない。

「ところで、そのワンピース、似合うね」
「ありがとうございます」
「お母様が選んでくれたの?」
「いいえ、自分で買いました」
「良い色だね〜」
「ロイヤルブルーです」
 いくら彼女が消極的な子でも世間が放っておくだろうか?

 ゆり乃が両足を籐椅子に上げると危うく太腿の奥が見えそうになった。アンバランスな体勢のゆり乃の掌にプチトマトをいっぱいに載せると、ワンピースのロイヤルブルーとトマトの赤が鮮やかに混じりあった。僕はローライフレックスのファンダーを覗き下着が写らない角度を探してシャッターを押した。

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2017-07-03 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『レモンイエロー』撮影報告

2017.7.2 model*麻菜

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 コンビニへ入ると麻菜は何とはなしにレモンを手に取っていた。僕はそのレモンは何かの暗示だと思い、麻菜の手からかすめ取ってレジへ歩いた。

 武蔵野の林に分け入って拾った籐椅子に麻菜を座らせ、さっき買ったレモンを彼女の掌に載せた。やはりレモンを買った僕は正しかった。緑の中でレモンイエローが映えていた。少しふくよかになった麻菜の身体を見て何かに思いを巡らす。そして中世ヨーロッパの誰かの画集で見た女の肖像画に辿りついた。麻菜がカーディガンを肘まで下げると肩から二の腕にかけてと二つの乳房が中世の肖像画のように見事に露出した。そう言えば、梶井基次郎の『檸檬』の中で丸善の棚から引っ張り出したのは画集だったなと思った。

 僕は麻菜に神々しさを感じていた。僕は梅雨時の蒸し暑さで全身から汗が流しながらカメラを覗いた。籐椅子に座った麻菜は涼しげにレモンと戯れている。ふくよかな女を目の当りするとこんなにも幸福感に満たされるものなのか。

「君って美しいね!」
「でも少し太めかなって・・・」
「中世だったら、まだ足りないよ」
「・・・」

 僕は帰宅するとすぐに梶井基次郎の短編集を探し出し貪るよう『檸檬』に読み、中世の肖像画を探してみると、そこに描かれていた女の艶が麻菜のふくよかな身体と似て見えたのだった。

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□この作品はグループ展『ALL GIRL.7』において発表する予定です。




2017-07-02 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

グループ展『ALL GIRL .7』情報

スクリーンショット(2017-07-01 11.09.36)
2016.1.10塾にて撮影。多摩川。コンタックスT2

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開催まで約二ヶ月半になりました。参加者の皆さんはそろそろ展示作品を絞って、展示方法についても考え始めている時期ですね。早めに準備を進めてください。

ルデコはご承知のようにリニュアルしました。壁面へ直接ピンでディスプレイ可能なことはこれまで同様ですが可動展示パネルにも展示できることが新しいです。※可動パネルも直接ピンなどでとめることが可能なようです。(7/8追加記述)

今回は魚返一真個展と同時開催ではありませんが、グループ展でも魚返作品を壁面とファイルにおいて本気で展示したいと考えています。また、去る3月に神保町画廊での個展中に開催し好評だったスナップ写真塾をルデコの周辺で開催する可能性もあります。

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□第七回グループ展『ALL GIRL .7』
2017.9/19tue → 9/24
11時→19時。(最終日→17時)
渋谷ギャラリー・ルデコ3F

○参加者の展示は塾で撮影した写真が全体の半分というのが基本的な決まりです。また、旧作の展示を含めても良いです。(女性カメラマンは除外)


2017.7.1.13時現在(一部変更の可能性あり)

2017-07-01 : グループ展 : コメント : 0 :

『禁断のバード・ウォッチング』



2017.6.29 model*Olivia

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 どうやら僕たちがいる場所は鳥たちの楽園のようなのだった。大木の幹の裏側に二人で息をひそめていると、バードウォッチャーが抜き足差し足と周辺を探しまわっている。僕たちは何も悪いことをしていないけれど、彼らに見つからないようにこうして潜んでいると、次第に禁断なムードに包まれてきた。しかし、それは僕の作品にはかえって都合が良かった。もしこの場所に流れる音楽があるとすれば、トリスタンとイゾルデの前奏曲がぴったりだと感じたのは、曇り空を遮る色濃くなった樹々の葉を撫でて通る湿った風が僕の気分を暗くしていたからだ。この時僕の頭をよぎったのは、ラース・フォントリアの映画『メランコリア』なのは明白だった。というのは、ここへ来る前に娘と同じ監督の『ニンフォマニアック』の話をしたところだったから。

 娘に国鉄時代に貨物操車場で使った緑と赤の手旗を渡し、娘の左後方にある樹の枝におもちゃの釣り竿を立てかけた。僕の心の中では、その意味付けは正しいけれど、この娘には理解できないだろう。

「この作品のタイトルは何だかわかる?」
「いいえ、わかりません」
「『禁断のバード・ウォッチング』っていうんだ」
「わからないけど、そんな感じかも・・・」
「お願いがある。君が着ている服を可能な限り脱いでほしい。もちろん、すべて拒否することも可能だよ」
「???」

 バードウォッチャーが立ち去ると、僕たちの周りにたくさんの小鳥が舞い降りてきた。どうやら、鳥たちは真面目なバードウォッチャーより自慰的な写真を撮ろうとしている僕たちを友だちに選んだみたいだ。

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2017-06-29 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『Welcome back』と『Apple Hill』・・・撮影報告



『Welcome back』

2017.6.25 model*莉菜

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 誰にも、ふと会いたいと思う人がいるはずだ。ある曲を聴くとなんとなくその子のことを思い出してしまうし、今も変わらないでいてくれるかな、みたいにその女の子のことを考えてしまう。中央線に乗っていると青春時代に戻るし、ホームにいるとあの子に会えるのではないかという気がする。ある男性にとって中央線はそういう場所で、まさしく僕もそのひとりなのだ。

 莉菜と吉祥寺の2番ホームで落ち合って、すぐにやってきた各駅の上り電車に一駅乗った。ここは西荻窪、青春の街である。今から四十年前に莉菜のような女の子がこの街を歩いていただろう。ホームに立たせて写真を撮った。莉菜が好きだというリンゴを渡してまた撮った。莉菜って何て可愛らしいヤツ!その時、風がお帰りなさい、と吹いてきた。ああ、またあの子とあの古い喫茶店に行きたいな。

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『Apple Hill』

2017.6.25 model*莉菜

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 莉菜と雑木林を歩いた。彼女といると心が和む。その理由はわからないが素敵な時間がやってきたことは確かだった。これから撮る写真は、ずっと莉菜に撮りたいと伝えていたものだった。いざ撮らせることを承諾した今でも莉菜は迷っているに違いなかった。

 莉菜はリンゴがひとつ入った袋を下げている。彼女が大好きなリンゴの使い方はただひとつだけど、まだ莉菜はそれをわかっていないみたいだ。

「座ってごらん。リンゴを股間に置いてごらん」
「あ、はい」莉菜は従った。
「今度はスカートを上げてリンゴで下着を隠してごらん」莉菜がそれを受入れた横顔を見ると強さが顔を覗かせて今までの彼女から少し脱皮したような感じがした。それとも本当の莉菜が表れただけなのか、僕にはわからない。とにかく良い気分。ありがとう!可愛らしい莉菜と季節はずれのリンゴ。

「Apple Hillって曲知ってる?いや知っているはずはないね」と莉菜に言いながら、僕は静かにジョン・セバスチャンに感謝した。この曲を作ってくれてありがとう、と。。。

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□『Welcome back』と『Apple Hill』とも大好きなジョン・セバスチャンの曲です。このレコードを聴いていたあの時代に感謝したい。
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2017-06-25 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『ALL GIRL.7』

スクリーンショット(2017-06-21 12.00.58)
2016.1.10、写真塾にて撮影



第七回魚返一真写真塾グループ展『ALL GIRL.7』
2017.9.19TUE〜9/24SUN 渋谷ギャラリー・ルデコ(3F)

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梅雨を撮りたい。なぜって?樹の下に雨宿りしていると雨の雫が落ちて来て女の子の髪が濡れるのをみていたいから。そんな状況で女の子の側にいることに価値があるじゃないか。

雨になりたい。どうして?濡れている女の子を見てるだけなんて、もちろんカメラで撮ってもダメだ。雨粒になって女の子の皮膚を這うんだ。女の子を見ているだけじゃ満足できない。触れなくちゃ。

結局どうしたいのか?わからないなら珈琲を飲みながら考える。好きな曲を繰り返し聴くといい。どんな曲を聴きたい?う〜、迷うなあ。聴きたい曲いっぱいある。選べない。。

ポストカードでもデザインしたら?九月に開催するグループ展のだね?それに合った曲を選べばいいよ。タイトルは『ALL GIRL.7』だから。平凡だけどキャロルキングの『You’ve Got A Friend』とかじゃない?いいね〜。

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□思いつきでデザインしました。カメラマンのクレジットは変更がありますし、写真も別のものに代えるかもしれませんが、とりあえずこんな感じのポストカードです。。。



2017-06-21 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『処女のためのレクイエム』



2017.6.19 model*美乃里

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 今日は桜桃忌だ。太宰治を読むべきかとも思ったのだが、美乃里を撮ることになっているから諦めた。美乃里は幾つになっただろうか。もう5年も撮っているけれど、とにかく処女なのである。(本人がきっぱり言っている)ならば、とばかりに処女を葬るがごとくモーツァルトのレクイエムを聴きながら撮影に備えている。

 再度言うが、この女は処女である。がしかし、裸になることをいとわない。カメラを向けると、例えば官能小説のページをめくるように少しずつ肌を露出すると、その白い皮膚の美しいことこの上ない。この女は決して男の言いなりになったりはしない。つまり、女は処女なのである。

「これを挿れなさい。君ならできるでしょう」と言って女にバナナを渡した。
「はい。できますわ。処女の身ですが・・・」女は僕の要求を拒まなかった。
「ほほう、、おもしろい」
「とくとご覧あそべ」という表情のあと、皮を剥くことなくバナナをあそこへ挿入した。挿れたものが男性器ではないのなら、確かにまだこの女は美しい処女なのである。


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2017-06-19 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『美しい娘の釣り模様』



2017.6.16 model*Olivia

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 あの頃、僕の心の中は鉄道と釣りと女の子のことが入り乱れて幾つもの虹がかかったみたいだった。あの頃とは僕の人生でいちばん空気が濃かった少年時代のことだ。三つの中で唯一僕を癒したのは釣りだった。釣りと言っても、僕はどうしても魚を釣りたいという気はなかったから、道具や餌どれもいい加減だった。ただ、心のおもむくままに川へ向い釣り糸を垂れた。青空を眺め雑草を見ては、もう夏が近いのだ、と神妙な気持ちになった。でも、特に夏が好きというのでもなかったし、かといって春を好んだとも言えない。つまり僕が求めたのは、一人っきりになることだった。

 美しい娘と川へやってきた。そう、釣りをするために。だからと言って道具や餌に凝ったりはしていない。つまり魚を釣ることを唯一の目的にしていない。そう、少年時代と同じで「一人っきりになるため」、、あれ?僕はとても違和感があった。娘と一緒にいるからだ。

 美しい娘はシンプルな水着を着て下半身は細いヒダ入った白いスコートを履いていていた。手足はとても細いが健康的で適度に日焼けし髪は馬の尾みたいに長く栗色。顔は少しオリビア・ハッセーに似ていて、もし彼女をミニチュアにしたら、裕福で見栄っ張りな親戚が海外旅行の土産にくれそうな国籍不明のエキゾチックな人形みたいだと思った。娘に釣り竿を渡すと、赤いサンダルを履いた足で水に入り竿を振った。

 青い空の下で眼を醒ますと、そろそろ夏のきざしが見えてきていた。日暮れ時には蛍が舞うのだろうか。眼の前に展開されている、美しい娘の釣り模様を、不調のローライフレックスTでワンロール撮り切った時、写真を撮る幸せというものはシャッターを切る瞬間瞬間に潜むものあって結果ではないのだと思った。

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2017-06-17 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :

『鉄道ファンだからほのぼの』



2017.6.11 model*たま子

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 僕は1番線のベンチに座って彼女が下り電車でこの駅にやって来るのを待っていた。彼女から15分ほど遅れるという連絡が僕の心にぽっかり空白をくれた。遠い昔のことを思い出した。僕が高校三年生でどこへ進学するか考えていた時期のことだった。僕はこの街にある大学へ進学しようと考えていた。結局、そうはならなかったけれど、もしかしたらこの駅に毎日通って来たかもしれないと思っただけで何となく夢心地だった。ぼんやり線路を眺めていると妙なことに気づいた。あれ?この私鉄のレール幅ってこんなに狭かっただろうか?1067mmしかない!僕はすっかり勘違いしていた。つまり、1372mmのレール幅だと思い込んでいたのだ。眼を凝らしてもやはり1067mmしかない。

 そんな驚きの発見に感心していたら、彼女が各駅停車からホームの方へ降りてくるのが見えた。
「遅くなってすいません」
「いやいや、僕は鉄道ファンだからホームにはずっといられるんだ。それに・・・」そこまで言ったところで、驚きの発見について話そうとした自分をなだめた。

 ホームで、また少し美しくなった彼女を撮ったあと、連れだって改札を出た。少し歩いて踏切の前で立ち止まり彼女を撮った。少し蒸し暑かったけれど、ほのぼのして、鉄道ファンとしてはとてもいい気持ちだった。

「僕はバスで南の方へ向かうつもりなんだ」
「そうですか、私はそこらで買い物でもします」
「ではここでお別れ。さようなら」
「さようなら。またお会いしましょう」

 もう僕は家にいて、細野晴臣の『Hosono House』を聴きながらこの文章を書いている。鉄道ファンとしてとても幸せ。。。


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2017-06-11 : 30th個展へ向けて : コメント : 0 :
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プロフィール

ogaeri

Author:ogaeri
1992年より一般の女性をモデルに作品を撮り始める。2008年「鉄道と彼女」を発表した。
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